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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第83話 10階層、カエル


 8階層から帰還して反省会をした翌日。


 午前中はいつものように物品の補充をした。今回はケイちゃんの矢を10本ずつ2つの矢筒に入れて合計20本追加し、40本体制にした。

 明日は10階層に行くのだが、従来通りの物品だけで特別に用意するものはなかった。


 その日の午後は階層の側道に入って収納キューブに残っていたモンスターをリュックに詰め替えてギルドに戻り、買い取りカウンターで買い取ってもらった。


 昨日の今日で大量のモンスターを卸すわけで、当初はかなり驚かれいぶかしがられたが、今では何も言われることもなく、すんなり買い取ってもらっている。はっきり言ってかなり不自然だが、俺たちにとってはありがたい。何かの力、神ではなく悪魔の見えざる手を疑う気持ちがないわけではない。

 最近は俺を中心にして世界が回っている。と、思うようにしている。



 そしてその翌日。


 俺たち3人は準備を整えて渦をくぐり10階層に向かった。


「いよいよね!」

「何が?」

「わたしたち『サクラダの星』が輝くのが」

「階段前のカエルをたおせたらな」

「たおせるに決まってるじゃない」

「そのつもりで行きましょう」

「ケイちゃん分かってるー!」

 確かに。何とかなるだろう。ではなく、何とかする。って気概は大事だ。

「なら俺が何とかしてみせる!」

「そうでなくっちゃ」


 途中1度小休止を取り、渦から4時間ほどかけて9階層に到着した。


 10階層への下り階段に続く本坑道を知っているわけでもないし、俺たちの前にそれラシイダンジョンワーカーもいなかったので、常道通り、階段下の正面に空いていた坑道の入り口に向かって歩いて行った。

 9階層では探索するつもりはない上、10階層へ続く坑道さえ見つけられればいいので今回は地図を描いていない。


 運を天に任せたって程ではないが30分ほど歩いたら、坑道が広がって行きその先に下り階段が見えてきた。


「よし」

「さすがはエド」

「ほんとですね」

「階段を下りたら小休止して、それから11階層への階段を探そう」

「了解」「はい」


 60段ほどの階段を下りたらいつものように坑道の入り口が何個も空いた空洞が広がっていた。


 空洞の隅に移動してそこで小休止。

 リュックを下ろしてヘルメットと手袋を外し、水筒から各自のマグカップに水を注いでやり自分のマグカップにも水を注いだ。

「ありがと」「ありがとうございます」


 マグカップを片手に。

「階段の正面に坑道が開いているから、おそらくそれが11階層への下り階段に続いている坑道だろう」

「うん」「そうですね」

「カエルが視界に入ったら、様子を見よう」

「「了解」」

「各自のリュックは収納キューブに入れておいた方がいいだろうな」

「そうだね」

「それでわたしの予備の矢筒は?」

「ケイちゃんが位置取りしたら収納キューブから直接ケイちゃんの足元に出しておく」

「了解しました。それでいきなり射てもいいんですか」

「俺とエリカでカエルに接近していくから、カエルが俺たちに反応したら射始めてくれ」

「はい」

「エリカ。ケイちゃんが射始めたら俺たちは突撃だ」

「了解」


 簡単な作戦を立てた後、水を飲み終えたマグカップは各自自分のリュック戻した。


 そのあとケイちゃんが自分のリュックから予備の矢筒3個を取り出してくれたのでそれを先に収納キューブにしまい、それから全部のリュックをしまった。ランタンもリュックごとしまっている。


 ヘルメットを被り直し、手袋をして準備は整った。

「それじゃあ行こう」

「「はい」」


 階段に続くと思われる坑道を歩くこと30分。坑道が少しずつ広がり、天井も高くなってきた。そして、その先に黒い大きな塊が見えてきた。


「あれがカエルだな。でっかいというより巨大だな」

「そうね。思っていた以上よね」

「ケイちゃん、どのあたりから矢を射れそう?」

「そうですね。ここからでも十分届きますが、剣も矢も通さないという話ですからできるだけ近寄りたいところです」

 巨大ガエルとの距離は今のところ70メートルほど。

「思い切って30メートルまで近づくか?」

「わたしは大丈夫だけど、ケイちゃん平気?」

「大丈夫です」

「それじゃあ、近づいて行こう。途中でカエルが反応したらケイちゃんはそこで矢を射始めてくれ。俺とエリカはそこから突撃だ」

「「了解」」


 俺たちは体を屈めて坑道の壁際を音を立てないよう慎重に巨大ガエルに近づいていった。


 はっきり見えてきた巨大ガエルは、剣も矢も通さないと言われるだけあって、そこらのカエルののっぺりした皮膚ではなく、表面がサイの皮のようなもので覆われていた。いわば生体装甲ガエルだった。


『確かに固そうだ』

『そうね』

『でも、あれならもう少し近づけば矢を通せそうです』

 ケイちゃんの矢はモンスターの頭蓋を簡単に貫通するわけだから確かに何とかできそうだ。


 俺たちが大体50メートルくらいまで巨大ガエルに接近したらいきなりカエルはこれまた巨大な両眼を開けた。

 その目はあっちこっちを見ているので俺たちの気配は察知しているのだろうが、まだ俺たちを視認してはいないようだ。

 少し気になるところは、これまでの下り階段のある空洞と違いこの先の空洞は天井はかなり高い。巨大ガエルが高く飛びあがるためのような気がする。


 そこからにじり寄るように10メートルほど前進したところで巨大ガエルの目が俺たちを捉えた。

「見つかった。ここから行こう」

「「はい」」

 ケイちゃんはつがえていた矢を放った。俺はキューブから預かっていた3つの矢筒をケイちゃんの足元に出してレメンゲンを引き抜きながら、俺と同じように双剣を引き抜きながら走り出したエリカとともに巨大ガエルに突撃した。


 巨大ガエルがどういった攻撃をしてくるのか分からないのが怖い。と、思いながら駆けていたら、いきなり巨大ガエルが唾を吐きだした。巨大ガエルが吐き出したツバは大きな塊になって俺の方に飛んでくる。

 しぶきになっていないのでスライムの吐く粘液のようなものなのだろう。ということはタダの液ではなく当たればヤバいに違いない。

 巨大ガエルの粘液もスライム同様ゆっくり飛んでくるので簡単にかわせる。ヒョイと避けて突撃を続けていたら俺のほほのすぐそばを矢羽根が通過していった。ケイちゃんの射線のことをすっかり忘れていた。危ないところだった。


 距離はあと10メートル。見れば巨大ガエルの顔には3本の矢が深々と突っ立っていた。矢は通らないとの事前情報だったが、さすがはウサツとケイちゃんのコンビネーション。しかしダメージはさほどではないようだ。


 巨大ガエルが口を開けたと思ったら、エリカに向かって舌が伸びてきた。俺の目から見ても巨大ガエルの舌は結構早い。

 それでもスピードのエリカは巨大ガエルの舌を余裕でかわし、双剣を振るって巨大ガエルの舌の先を切り落としてしまった。

 巨大ガエルはすぐに舌を引っ込めた。悲鳴は上げなかったが相当痛かったんじゃないか。

 これでベロ出しチョンマ攻撃はなくなっただろう。


 さらにケイちゃんの矢が巨大ガエルに突き刺さった。今度は巨大ガエルの目だ。片目になってしまえば巨大ガエルといってもカエルはカエル。カエルなら首を横方向には動かせないはずなので体の向きを変えない限りそっち側は見えない。

 残った目を潰せば楽勝だ。もう数回ケイちゃんが矢を射れば当たりそうだ。

 その前に俺の手で片を付けてやるつもりだがな。


 巨大ガエルはまた俺に向かって粘液を吐き出してきた。距離が近かったせいできわどかったが何とかかわした俺は、ケイちゃんの射線を遮らないように横に回り込んだ。そっち側はまだ目が健在な側なので、巨大ガエルに俺の動きは見えている。


 だがもう遅い。そう思ってレメンゲンを振り上げたらいきなり巨大ガエルがジャンプした。

 高く跳び上がるのかと思ったのだが俺の真上5メートルくらい跳び上がって落っこちてきた。

 何とか後ろに下がって巨大ガエルのボディープレス攻撃をかわした俺は、動きの止まった巨大ガエルの目に向かってレメンゲンを付きだし、そして振り切った。両眼を潰した以上楽勝だ。結局大きいだけで大したことないモンスターだったようだ。



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