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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第8話 サクラダダンジョンギルド


 俺たちを乗せた乗合馬車はディアナから3日目の昼過ぎにサクラダに到着した。その間、例のダンジョンワーカーチームらしき4人と同じ馬車だった。


 サクラダの駅舎で最後に馬車を降りたら、その場に4人が立っていてその中の一人、彼らのリーダーらしき男の人が俺たちに向かって話しかけてきた。

「お前たち、ダンジョンワーカーになるためここに来たのか?」

「「はい」」

「そうか。とにかくケガしないことが一番だ。危ないと思うところにはいかない事。臆病なくらいがちょうどいい。それでも続けていればちゃんと強くなれる」

「お言葉、ありがとうございます」「ありがとう」

「ダンジョンギルドはこの道をまっすぐ進んで左手にある大きな建物だ。じゃあな」


 4人はギルドの方向とは逆の方向に歩いていった。俺たちは歩き去る彼らに一礼してそれから教えられた方向に歩いていった。


 すぐにそれらしい建物が見えてきた。けっこう立派な建物で、武器を装備してリュックを背負った連中が出入りしていた。


「あれだな」

「そうみたいね」


 さっそく二人で開け放たれていた大きな扉から建物の中に入った。

 予想通り扉の先は玄関ホールになっていたが、俺の予想より何倍も広く、天井もすごく高かった。

 

 ホールの中ではダンジョンワーカーたちが数人ずつのグループになってたむろしていた。

 新人っぽいグループもいれば、ベテラン風のグループもいる。

 ホールの正面には大きな石像が並んでいて、その真ん中に黒い渦が巻いていた。その渦に人が入っていき、別の人がそこから出てくる。話に聞いていた通りのダンジョンの出入り口だ。


 ホールの右側にはカウンターがあり、奥側のカウンターではダンジョンからの成果を受け取っていた。手前側のカウンターではダンジョンワーカーと係の人が話をしている。おそらくそこで手続きすればダンジョンワーカーに成れるのだろう。

 基本的には俺が思い描いたギルドとそれほどかけ離れてはいなかった。少し安心した。



「そういえばエリカさん、ダンジョンワーカーになるにはちゃんと手続きがいるんだよな」

「当たり前じゃない。ダンジョンには誰でも入れるけど、ギルド会員になっていないとダンジョンで手に入れたものをここで買い取ってくれないわよ」

「手続きにはお金がかかるんだよな?」

「当たり前でしょ。世の中にただのサービスなんてないの」


 しごくごもっとも。たしかに、これだけの建物と職員を維持するためにはそれなりの金が必要だろうし。

 推定精神年齢アラカンではなくジャストカンの俺が15やそこらの小娘に教えてもらったぜー。

 


 ホールの左手は食堂兼酒場になっていた。ちょうど昼食時なので8割がたの席が埋まっていた。昼間から飲んでいる連中もそれなりの数で、歓声などが沸き起こっている。しかし、どこか違和感があるのだが、具体的に何がどうということは分からなかった。


「手続きを済ませてしまおう」


 レディーファーストという言葉がこの世界にあるのか知らないが俺は黙ってエリカの後についていった。

 二つあるうちの空いていた受付カウンターの前にエリカが立ったところでカウンターの向こうの係りの女性がエリカに向かって来意をたずねた。

「どういったご用でしょう?」

「ダンジョンギルドの会員登録手続きがしたいんだけど」

「了解しました。登録料は小銀貨1枚です」

 エリカが小銀貨をカウンターに置き、係の人が受け取った。

「手続しますので、お名まえと生年月日を教えてください」

「名まえはエリカ・ハウゼン。生まれたのは345年6月30日」

 エリカの誕生日は俺と1日違いだった。


「お名まえのつづりはこれでよろしいですか?」

 そう言って係の女性が紙切れをエリカに見せた。

「はい。大丈夫です」

「ギルドの会員証を兼ねたタグを作りますので少々お待ちください」

 係の人が名まえと生年月日が書かれた紙切れを持って奥に行ってタグ係?の人に渡して戻ってきた。

「次の方どうぞ」


 エリカが横にずれたところで俺が前に進み出た。

「俺も登録お願いします」と、言って小銀貨を1枚カウンターの上に置き、続けて、名まえと生年月日を教えた。

「名まえはエドモンド・ライネッケ、生年月日は345年7月1日です」

「つづりはこれで間違いありませんか?」

 書類に書かれた俺の名まえを確かめて「間違いありません」

「少々お待ちください」

 さっきと同じように係の女性が俺の名まえと生年月日が書かれた紙切れを持って奥に行きすぐに戻ってきた。

「わたしの名まえはショーン・エルマンと申します。タグができ上るまでお二人に当ギルドの説明をさせていただきます」

 係の女性がそう言って説明を始めた。


「……。以上が当ギルドの規則です。

 次は当ギルドの施設についてご説明します。

 まずは図書室が当ギルド2階にあります。サクラダダンジョンの1階層から5階層までの地図や、ダンジョン内のモンスターなどの図鑑も揃っています。貸し出しはしていませんがギルド会員の方なら閲覧は自由ですのでご利用ください。

 新人の方については登録から1年間、当ギルドの3階、4階にあります宿泊施設の利用が可能になります。

 部屋は広くはありませんが個室で、夕食、朝食がギルド食堂で提供されます。宿泊料は10日単位で銀貨1枚になります」

 こういったサービスはありがたい。

「さっそくですが、今その宿泊施設の申し込み出来ますか?」

「はい」

「今宿泊料を払えばいいですか?」

「はい」

 俺はすぐに食いついたのだが、エリカはいいみたいだ。

 俺は銀貨1枚を取り出して係の人に渡した。

「3階の15号室になります。カギを失くされますと銀貨3枚いただきますので大事にしてください」

 そう言ってエルマンさんが木札の付いた大きなカギを渡してくれた。

 木札には部屋番号が書かれていた。

「はい」

 これで10日間の宿の心配はなくなった。

「延長する時はまたここに来ればいいんですね?」

「はい」

「分かりました」


 そうこうしていたら、タグがエルマンさんのもとに届けられた。

「エリカ・ハウゼンさん、どうぞ」

「はい」

「エドモンド・ライネッケさん、どうぞ」

 受け取ったタグは銅板でその上にダンジョンギルドの紋章らしき交差する剣と俺の名まえ、それに俺の生年月日が刻印されていた。

 そしてタグの隅にひもを通すような孔が空いていた。

「革ひもなどを孔に通して首から下げておいてください」

「手続きはこれだけでいいんですか?」

「これで手続きは終了です。お二人のご活躍を期待しています」

「武器なんかを買いたいんですがどこに行けばいいですか?」

「それでしたら、このギルドの裏手が広場になっていまして、その先に武器工房や防具工房が並んでいます。どの工房でも個人への販売もしていますのでその辺りで良いものをお探しください」

「ありがとうございます」


 後ろに人も並んだのですぐに俺たちはカウンターからホールの中ほどに移動した。

「エド、それじゃあこれでお別れね」

「エリカさんはどこに泊るの?」

「この街にうちの商会の支店があるからそこに厄介になるの」

「そうなんだ。それじゃあ」

「じゃあね」


 エリカと別れるのは残念だが人との出会いと別れは人生につきものなのだ。また新たな出会いがあるに違いない。何せここはダンジョン都市サクラダなんだから。




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