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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
77/336

第77話 撃退


 家具屋から雑貨屋に行こうと大通りを歩いていたら二人組につけられていることに気づいた。

 俺たちはその二人組を人通りの少ない通りに誘い込み、現在対峙しているところである。


「お前たち俺たちに何か用があるのか?」


「小僧がいっぱしの口を利く」

 口ひげ男が笑いながら腰に下げた短剣の柄に手をかけた。

「痛い目に遭いたくなければ、おまえが腰に下げている剣を寄こしな。ちょうど二人いる連れの女も痛い目に遭うことになるぞ。痛いかどうかは知らんがな」

 アイパッチ男はそう言ってニヤリと笑い短剣の柄に手をかけた。


「ここでやり合いたいんだな?」

「ああ? おまえ、俺たちが怖くないのか? ダンジョンワーカーは人なんか殺したことないだろ? おまえみたいな新人が殺せるのはせいぜいウサギかネズミだろ?

 俺たちは、プロ。その道のプロなんだぜ。素人相手にやり合うも何も一瞬で片がついちまうぜ」


 その道のプロは自分たちのことを公表しないんじゃないか? 俺が生前読んでたコミックの知識だけど。

 しかし、こいつらが自分で言うほど手練れだと無傷で制圧は無理そうだがどうする?

「こいつら、平気で人を殺してるみたいだから、遠慮せずにやっちゃいましょ!」

 新人殺しは目の前で人を殺していたし、俺たちを殺しに向かってきたわけだが、こいつらが実際人を殺しているところは見てないんだよなー。

 甘いんだろうけど、できるだけのことはしてみるか?


「俺がこの二人を相手する。エリカはケイちゃんを守ってくれ」

「一人で大丈夫なの?」

「多分大丈夫」


 間合いはこっちの方が広いし、たぶん連中の剣はそれほど上等じゃない。

 それに俺がここで殺されることをレメンゲンが認めるわけがない。


 俺はレメンゲンを引き抜いて一歩前に出た。

 それを見て二人も短剣を引き抜いた。

「なるほど、見事な剣だが、それに見合うだけの腕がなければ何の意味もないぞ」

 口ひげ男が一歩踏み込んで短剣を突き出してきたが、ミエミエのフェイントだ。

 俺が釣られて踏み出したら二段突きでもしたかったのだろうが、残念だったな。

 今の動きで口ひげ男の技量はだいたい掴めた。

 アイパッチ男も口ひげ男とつるんでいるようじゃ50歩100歩とみて間違いないだろう。

 これなら楽勝だ。間違って斬り殺すこともない。


 俺はアイパッチ男をけん制するようそちら側にレメンゲンを斜め中段に構え、口ひげ男に向かって右足を半歩踏み出し、そのまま流れるように左足で一歩踏み込みレメンゲンを突き出した。

 完全に間合いに捕らえられた口ひげ男はあわてて俺の剣が伸びてくるのを短剣で受けようとやや上に短剣を向けたところで俺はレメンゲンを突きから払いに変えてその短剣目がけて振り切った。

 口ひげ男の短剣はいい音を立てて中ほどから切断されて飛んで行った。


 俺はそのままアイパッチ男に向き直ってアイパッチ男が構えていた短剣もレメンゲンで横薙ぎしてやったら思った通りアイパッチ男の短剣も中ほどで折れ飛んで行ってしまった。

 一瞬の出来事で固まった男たちに向かって「動くな!」と俺が大声で言ったのと同時に飛んで行った2本の剣先が道に落ちていい音を続けて立てた。

「動くなよ。動けば斬る。

 それと教えておくが俺は人をこの手で斬ったことはあるからな。斬ったと言ってもヘルメットごと頭蓋を叩き割ったから切ってはいないがな」

 いちおうすごんでおいた。


「折れた剣は道のわき投げ捨てて両手を上に上げろ」

 二人が剣を投げ捨て手を上げたたところで、さらに武装解除を進める。

「エリカ、こいつらが他に武器を持っていないか調べてくれるか?」

「分かったわ」


 

 エリカが口ひげ男の体を丹念に調べて、ナイフを回収し、そのあとアイパッチ男も調べて同じくナイフを回収した。


 幸いなことにここまで部外者の通行人が俺たちのいる通りには現れていない。謎の力が働いているかもしれないので、利用させてもらうとしよう。


「何で俺の剣を狙ったんだ?」

 二人とも口をつぐんでいる。俺が若造だから拷問できないとでも思っているのだろうか?

「話したくないなら話したくなるようにしてやろうか? 殺しはしないがもう剣を握れないよう両手の親指を落としてやろう。剣だけじゃなく何も握れなくなるだろうがな。残りの人生そんなに長くないかもしれないが、マトモにメシも食えなくなるしジョッキも握れなくなるわけだ。それでも手首じゃないだけありがたく思えよ」

「先にどっちの指を切り落とす? 口ひげ男? アイパッチ男?」

 エリカが調子に乗って煽ってきた。

「こいつらに決めさせよう。

 先に正直に話した男は許してやる。早い者勝ちだ。

 プロなら口を割らず潔く親指なしの生活すると思うが、親指がなくなったらそもそも荒事には使い物にならないんだからもうプロじゃなくなるだろ? そのまえにこの程度の腕前でプロって言ってたんだから差はないか」

 俺も煽ってやった。

『ぐぬぬぬ……』が聞きたかったのだが、それの代わりにアイパッチ男が話し始めた。

「わかった。俺たちだって仕事ができない体にされたんじゃ割が合わない。

 ある男にお前の剣を奪ってくるよう依頼された」

「そいつは誰だ?」

「名まえは知らない。ただ、その男には二人腕利きに見える護衛が付いていた」

 ここまで聞けば答えは明らかだが、追加で聞いておくか。

「その男の眉間には大きな盛り上がり黒子ほくろがなかったか?」

「あった」


あの貴族の息子(あいつ)で決まりね」

「そうみたいだな」

「それでこの二人どうする?」

「まだ聞くことがある」

「そういえばそうね」


「それで、俺の剣を奪ったらどこで受け渡す手はずになっていたんだ?」

「あの男が泊っている宿に届けることになっている」

「宿の名まえは?」

「つぐみ亭」

「報酬はいくらの約束だったんだ?」

「金貨10枚だ」

「今日のことはその男に報告するなよ」

「もちろんだ」

「それじゃあ行け!」


 二人はくるりと回右して駆けて行った。


「エド、逃がしちゃっていいの? 官憲に引き渡さなくてよかったかな?」

「あんな連中連れ歩くのも面倒だろ? あいつらが他で悪さをしようが俺たちには関係ないし」

「エドってそういうところあるよね」

「そうですね」

「何か問題あるかな?」

「いや、全然ない。むしろ頼もしい」

「そうですね」


「それで、そのつぐみ亭に押し掛ける?」

「押しかけていっても知らぬ存ぜぬだろうから意味ないだろ?」

「それならさっきの逃がしたのマズかったんじゃない?」

「とはいえ、あんな連中の言うことなど知らぬ存ぜぬで突っぱねられたら一緒じゃないか?」

「そういえば相手は貴族だしね」

「まっ、そう言うこと。

 俺たちが、貴族なんか吹き飛ばせるくらい偉くならないと難しいだろう」

「そうか。そうよね」

「がんばりましょう」


 なんであれ、あの男のことは忘れないぞ。俺に敵認定させたことを悔やませてやる。なんてな。


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