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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第76話 買い物3


 6階層を踏破しての反省会。いつものように俺たちは雄鶏亭おんどりていの4人席に3人で座って飲み食いしていた。



「エド、7階層のモンスターって調べてる?」

「まだ調べていないんだけど、少し前にベテランの人たちから聞いたところほとんど今までと変わらないけど、スライムが大きくなって素早いんだって」

「そういえばこのところスライムに出くわさないわよね。スライム用の瓶とひしゃくを用意したものの全然使っていなし」

「そうだったな。

 こんど7階層に行けば会えるんじゃないか?

 だけど、俺たちが見つける前にケイちゃんが弓矢でたおしちゃうだろうから実物は見られないかもしれない」

「それはあり得るわね」

「わたしはまだスライムを見たことないんですがどんな感じなんですか?」

「ひとことでいうとゼリーの塊みたいなんだけど、そいつ、結構大きい上に動くんだよ。

 赤っぽいのと青っぽいのの2種類いて、どちらも表面の皮を突き破ればそれぞれの色の液に成るんだ。その液をひしゃくですくって専用の瓶に入れて買い取りカウンターに持っていけばそれなりの値段で買い取ってもらえる。

 それでスライムの怖いところは、赤スライムは酸の粘液を吐きかけてくるし、青スライムは体を溶かす粘液を吐きかけてくるんだ。

 吐き出す粘液の射程は体の10倍くらい。大きさが50センチなら5メートルくらいだから、ケイちゃんの弓矢からすれば完全にカモだな。赤スライムを切り付けると金属は傷むから矢尻は傷むかもしれないけどすぐに回収して水筒の水で洗えばそんなに傷まないんじゃないかな」

「なるほど。だいたいわかりました」


「そういえば、ケイちゃんの矢で思い出したけど、まだケイちゃんご希望の絶対折れない矢を見つけてないだろ。今度何かを見つけたらきっと絶対折れない矢だと思うんだ」

「うん。わたしもそう思う」

「そんなことあるんでしょうか?」

「いままでそうだったんだから、明日もその通りというのは通常ありえないんだけど、俺たちには強い味方が付いているから」

「大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫、大丈夫。大丈夫じゃなくても今さらだから気にしない、気にしない。

 あと、何か必要な物ってあったかな?」

「そうねー。やっぱりあれじゃないかな。病気と傷に効く水薬」

「そういえばそうだな。もしもの時にあれば安心だものな」

「そんなものもダンジョンで手に入るんですか?」

「10階層辺りで手に入るって話で、それなりの数見つかってるんだって」

「そうなんですね」

「ある程度数が集まるようなら、身内に分けてもいいしな」

「エドはお父さんに借金を返しに一度実家に帰るって言ってたじゃない。そのときのお土産にちょうどいいんじゃない? ご両親きっと喜ぶわよ」

「確かに。じゃあ頑張って10階層で稼げるようにならないとな」

「そうだね」「頑張りましょう」


 ……。



 翌日8時。


 調理台用のテーブルを購入するため3人で家具屋を探そうとギルドを出た。

 大通りに出てしばらく歩いていたところで、ケイちゃんが道行く人を止めて家具屋のことを聞いたらすぐに場所がわかってしまった。

 ケイちゃんは家具屋がどこにあるか知っていそうな人を見分ける術を持っていたのか、はたまた、サクラダの住人ならだれでも知っている情報なのか?

 とにかく、家具屋の場所が分かったので行ってみることにした。



 商店街は大通りから西側に一本奥まった通りだが、家具屋は大通りから東側に一本奥に入った通りにあった。


 いろいろな家具が並べられているものとばかり思っていたのだが、並べられた商品の数は少ない上に、売り物ではなく見本だった。

 店の人に聞いたところ、全て注文生産ということだった。

「すぐに欲しいんだけど何とかならないかなー」

「わたしが聞いてみます」


 ケイちゃんが店の人にひとことふたこと話しかけたところ、見本のテーブルを持っていってもいいということになった。

 見本で展示してた関係で結構安く買えた。

 俺とエリカで前後になってそのテーブルを店から運び出した。

「道に出ちゃったけれど、人通りもないみたいだから収納しちゃおう」

 いったん道の上に置いたテーブルを収納キューブの中に収納してやった。

 これで一気に俺たちの(ダンジョン)QOL(クオリティオブライフ)が上昇する。


「テーブルを運んでギルドまで持ち帰るのかと思ったけれどよかったわ」

「俺もその覚悟はしてたんだけど、この時間人が少なくてよかった。

 しかし、ケイちゃんがひとこと言っただけで良く売ってくれたよな」

「簡単にお願いしただけなんですが、快く承諾してくれました」

 こういったのも才能なんだろう。そして才能=能力である以上、レメンゲンの力で強化されている可能性が十二分にある。

「とにかく助かった。

 さてと、これからどうするかな。

 そういえばエリカは実家に手紙はもう書いた?」

「書いたわよ。書いた手紙は汚れ物をお店に持って行った時一緒に渡しているわ」

「俺はまだだから、そろそろ書いたほうがいいよな。

 ケイちゃんは実家に手紙を書かない?」

「そのうち書こうと思います」


「俺は雑貨屋に寄って封筒と手紙用の紙とペンとインクを買ってこよう」

「それならわたしも付いていくわ。何か野営で役に立ちそうなものがあるかもしれないから」

「いつ書くか分かりませんが、わたしも買いに行きます」


 大通りに出て雑貨屋に向かって雑談しながら歩いていたら、さっきからつかず離れず俺たちのあとをついてくる気配がする。つけているのは多分二人だ。


 俺たちの歩いているのは馬車が行き来する大通りの片側で人も大勢行き来している。

 前回絡まれかけた時は大通りから一筋奥まった商店街の先だったが、こんな人通りの多いところで仕掛けてくるかな?


 俺はよく知らないが、街中で剣を抜くのは禁止されているような気もするし。ただ、俺たちみたいなダンジョンワーカーが平気で帯剣しているところをみると、そこまで厳格ではないような?

「エリカ、街中で剣を抜いてはならないとか、そんな規則ってあったっけ?」

「そんなのないんじゃない。ケイちゃん聞いたことある?」

「そんな規則はないんじゃないんですか。わたしの実家は開拓村でしたから、いつも短剣くらいは腰から下げておくか近くに置くかしてましたから」

「そうだよね。

 それはそうと、エド、それって後ろからわたしたちを付けてる連中のこと?」

 やはりエリカも気づいていたか。


「二人くらい俺たちのあとをつけてきてるだろ?」

「うん。今のわたしたちはあの時のわたしたちじゃないから、裏道に誘い込んでやっちゃう?」

「いや、殺しちゃまずいだろ?」

「殺すんじゃなくて、捕まえて話を聞くのよ」

「それはそうか。今は3人揃っているからいいけど、一人の時に仕掛けられたらいやだものな。なんで俺たちをつけるのか話を聞いてキッチリした方がいいだろう。

 ケイちゃんはどう思う?」

「話を聞くのはいいと思います」

「じゃあ、そこの角を曲がってみるか」

「了解」「はい」


 すぐ先の角を曲がって裏道というほどではないが人通りの少ない道に入っていった。しばらく進んでいたらすぐに俺たちのあとをつけていた二人組が角を曲がってこっちに向かってきた。


 俺たちは少し速足になり、大通りから二筋離れたほとんど人通りのない通りに出た。


 俺たちをつけていた連中からしてもシメシメかもしれないが、俺たちにとってもシメシメだ。


 俺たちはいったん立ち止まって振り返り、あとをつけてきた二人組に俺とエリカが前になり向かっていった。

 俺たちのあとをつけていた二人組はどちらも30前後のおっさんで、一人は口ヒゲを生やしていて、もう一人は片目にアイパッチをしていた。どちらも腰に短剣を下げている。見た目だけはそれなりだ。


「お前たち俺たちに何か用があるのか?」

 俺は、凄みを出そうと低めの声を出したつもりだったが、声変わりはしているものの15歳ではそんなカッコいい声は出なかった。ちょっとだけ寂しい。声が裏返らなかっただけでも良しとしよう。



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