表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
47/336

第47話 新生サクラダの星2、短弓


 2匹の大ウサギをケイちゃんが仕留め、移動を再開してからさらに30分。

 俺はまた、地図に記載されていない側道への入り口を見つけてしまった。

「そこの側道、俺が描き写したこの地図に載っていない。エリカ、念のためエリカの地図を見せてくれるかい?」

「これは期待大だわ」

 エリカはそう言って自分のリュックから地図を取り出して俺に渡してくれた。

 エリカの地図にも目の前の側道の入り口は載っていなかった。


「この地図にも載ってなかった」

「これも予想通り!」

「エリカはそんなこと言ってたものな」

「まー見てなさい。この奥にケイちゃんのためにあつらえたような弓がきっとあるから」


 側道に入っていったら10分ほどで行き止まりなった。突き当りの壁は何かの結晶で覆われているように見える。


「行き止まりでしたね」と、何も知らないケイちゃんが口にした。

「ケイちゃん、行き止まりに見えるけど、壁を崩すとその向こうに空洞があってそこでお宝が待ってるのよ」

「エリカ、まだそうと決まったわけじゃないから」

「でも、ここまでは今までと一緒じゃない。だったら、ここから先も一緒じゃないとおかしいでしょ?」


 今までと同じだから、これから先も一緒だという根拠はなにもないと思うのだが、エリカが『でしょ?』っと、言ったことで一気に可能性が高まった。んわけないか。


 正面の壁を覆っている結晶は立方体で形は愚者の黄金、黄鉄鉱の結晶と同じだったが、今回の結晶は灰色に見える。俺は夜目は利くのだが、夜目では色の判別は難しいので正確な色は分からない。でも、よく見ると結晶はくすんだ銀色に見える。これは鉛の鉱石、方鉛鉱に違いない。ここまでくると、エリカの言う通りこの先に空洞があってもいいと思える。


 エリカを見ると、勝った! って感じが顔だけでなく体全体から漂い出ている。


 俺はリュックを路面に置き剣帯を外して、壁の真ん中あたりの少しくぼんだ個所を手袋をした手で掘り始めた。

 これまでと同じように方鉛鉱の鉱石で出来た壁は俺の前脚によって簡単に崩れていく。


 ここ掘れ! ワンワン。を続けていたら予想通り向こう側に抜ける孔ができてしまった。


「向こうに抜けた」

「でしょ。あとは孔を広げて向こう側に行って短弓をとってくるだけだわ」

 エリカは勝ち誇ってそんなことを言い始めた。

 振り返ってケイちゃんの顔を見ると、ケイちゃんは口を半分開けていた。その表情が何を意味するのかなんとなく分かるような分からないような。


 俺は、ここ掘れ! ワンワン。を続けて、貫通個所を人ひとり通れるくらいまで拡幅した。


「これくらいでいいだろう」


 拡幅終了前から向こう側にこれまでとそっくりの石室が見えていたのだが、エリカの鼻息が荒くなりそうだったので、それについては何も口にしなかった。


「向こう側に行ってみる」


 俺はそう言って孔を潜ってその先の坑道に出た。すぐ後をエリカが続き、最後にケイちゃんが孔から這い出てきた。


「わたしが言った通りコレあったでしょ?」

「まだ中を見ていないけど、少なくとも何かはあるんだろうな」

「ケイちゃん用の短弓に決まってるけど早く見に行ってみましょ」

 ケイちゃんは言葉もないようだ。そういえば今日はケイちゃんのダンジョン初日だった。初日からイベントが盛りだくさんだものなー。


 前回同様扉の付いていない入り口から石室?に入っていくと、石室の内側はやっぱり黒い石でできていて、エリカの予想通り前回同様正面に置かれた台の上につるが張られたままの短弓が置かれていた。弦が張られたままということは弦を張ったままでも弓も弦も傷まないということなのだろう。ダンジョン産のアイテムだからそういったサービス機能があっても何ら不思議ではない。短弓の色はおそらく黄色に近いと思うが暗がりなのではっきりと黄色とは言い切れない。



「ケイちゃん、その弓を持ってみてくれ」

「いいんですか?」

「それはそうじゃない。ケイちゃん以外弓なんて扱えないんだから」

「それじゃあ」


 ケイちゃんが弓を左手で持ち上げ、右手でつるを少し引いた。

「この弓、かなり弓力きゅうりょくが強いです。今のわたしにちょうどいいかも。矢をつがえて引いてみます」

 ケイちゃんは矢筒から矢を取り出し、手にした弓につがえて構え、ゆっくり引いて、それからゆっくり緩めた。

「今のわたしにピッタリな弓力きゅうりょくでした」

「でしょ?」

 エリカの言った通り、ケイちゃんのためにあつらえたような短弓が手に入ってしまった。


 俺は台の上に何か書いていないかと思ってよく見たが何も文字らしきものはおろか模様もなかった。

「ケイちゃん、その弓に何か文字のようなものは書いてないか?」

 ケイちゃんが手にした弓を上から下まで見た。

「わたしには読めませんが文字のような模様がここに」

 そう言ってケイちゃんが弓を俺に手渡してくれた。


 弓力きゅうりょくが強いということだったから何となく重い物かと思って受け取ったのだが見た目以上に軽い。弓の素材はよく分からないが、木ではなさそうだ。


 ケイちゃんの言ったところにははっきりと文字が彫り込まれていた。その文字は見た目はエリカの双剣に刻まれていた文字に似ている。


「エリカの双剣に刻まれていた文字に似ているように見えるけど。ギルドに戻ったら鑑定士のゼーリマンさんに見てもらおう」

 そう言って俺はケイちゃんに弓を返した。

「エド、やっぱりそこに刻まれているのはその弓の名まえだよね」

「俺もそう思うけど。ケイちゃんはどう思う?」

「わたしは、こんなことがあるなんて。って、驚いているだけで、それ以上は何も」


「まだ昼には早いと思うけど昼休憩してからギルドに戻ろうか」

「そうね」

「はい」


 俺たちは壁の穴を抜けて荷物を置いた場所に戻りそこで昼休憩に入った。

 坑道の壁際に沿って腰を下ろして各自リュックから取り出した食べ物を適当に食べ始めた。俺の食べ物と水袋はエリカのリュックに入っているのでエリカから渡してもらっている。

 ケイちゃんの初日の食べ物は干し肉と乾パンのようだった。


「ケイちゃんの新しい弓がどんなものだか試してみた方がいいから、ちょっとだけ寄り道して帰らない?」

「分かった。1時間くらい進んでから引き返そう」

「うん」

「はい」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ