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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第39話 5階層


 3階層に下りはじめて10日が過ぎた。1日の稼ぎは一人当たり銀貨2枚と小銀貨1枚から銀貨3枚と小銀貨1枚といったところだ。この間、食料などの物資補給のため1日休みを入れているが、銀貨25枚ほど稼いでいた。

 モンスターとの戦いは楽勝モードになっているが、やはり俺の運搬能力がネックになっている。

 とはいっても、この10日で不思議と重さにも慣れて、俺のリュックがパンパンに膨らんでもそれほど苦にならなくなっていた。何でも慣れで解決してしまうんだが。それはそれで悪いことではないだろう。


 余裕も出てきた俺は4階層の地図も図書館で描き写し、4階層のモンスターについても調べ終わっている。ついでに10階層までの情報もある程度仕入れておいた。


 今はエリカと雄鶏亭おんどりていの4人席に二人で座って朝食の定食を食べているところだ。


「エリカ、3階層にも慣れたから今日は4階層に進まないか?」

「4階層に進んだところで稼ぎは3階層とそんなに変わらないんじゃない? 往復で1時間は余分にかかるわけだし」

「でもエリカ、俺たちはトップをねらうんじゃなかったか?」

「それをすっかり忘れてた。ごめん」

「トップはまだまだ先の話だけど、ちょっと調べたところ5階層からキノコが坑道に生えてるんだって。けっこう高く売れるらしい」

「キノコなら軽いからいいわよね」

「そう簡単にキノコが見つかるかどうか分からないけど、見つかればかなり儲かると思うんだ。随分先になると思うけど10階層からは坑道の壁にジェムっていう宝石の原石が生えてるそうだし」

「そんなものが生えるの?」

「うん。一度採ってもそのうち生えてくるんだって。同じところに生える場合もあれば別のところに生えてくることもあるそうで、いくら採ってもなくなることはないそうなんだよ」

「ということは、できるだけ早く10階層まで行かないといけないって事よね」

「そうなんだよ」

「急にやる気が出てきた。今日は最初から5階層に下りましょうよ」

「いきなり5階層で大丈夫かな?」

「3階層のモンスターじゃ相手にならなくなっているし、4階層もそんなに変わらないんじゃない? わたしたちなら5階層でも十分やっていけると思うよ」

 俺は基本的に慎重路線なのだが、確かにエリカの言うことももっともだと思う。


「よし。5階層の地図はまだ描き写していないけれど、エリカの地図を頼りに様子見で行ってみるか」

「そうしよ」


 朝食を終えた俺たちは、3階の自室に戻って支度して、いつも通り部屋の外で待ち合わせて1階に下りていきダンジョンの渦をくぐった。


 そこから2時間。ようやく俺たちは5階層、4階層からの下り階段下の空洞に到着した。


「結構早く5階層に到着したわね」

「そうかー?」

「エドは違うの?」

「どの階層も同じくらいの距離歩いた感じだったから、3階層の時の倍時間がかかってるって単純に考えているだけだけどなー」


 4階層と5階層の地図はあらかじめエリカから渡されていたのでここからは5階層の地図を見ながら歩くことになる。


「それじゃあ気を引き締めて行こうか」

「うん」


 俺たちの前を歩いていた4人組は6階層への下り階段に続く本坑道に入っていったが、俺たちはそれとは違う本坑道に入っていった。


 しばらく進んだところで。

「この階層の坑道の方が3階層の坑道より広くないか?」

「うん。ちょっと広いみたいね。それよりキノコが生えてるんなら坑道の壁際でしょうから、壁際をちゃんと見ながら進みましょうよ。

 それで、そのキノコってどんな感じのキノコだかわかる?」

「2種類あって、柄の先に傘が付いているところは2種類とも地上のキノコと同じで一つは赤っぽいキノコ、名まえは赤鬼タケ。もう一つは青っぽいキノコで青鬼タケ。それくらいしか分からない」

「まあ、買い取りのおじさんが判断してくれるはずだから、キノコを見つけたら何でもいいから摘んでいけばいいんじゃない?」

「それもそうだな」


 モンスターの接近に気を配り、坑道の壁際を見ながら、俺の場合はそれプラス地図と坑道を照らし合わせて進んでいった。


 30分ほど進んだところで、右の壁際の路面にキノコが1本だけ生えていた。この1本を見る限りでは群生するタイプのキノコではないようだ。残念。

 エリカがそのキノコを石づきから摘み取った。

「ランタン点けてないから色の見分けは難しいけれど、赤鬼タケみたいね」

「そうだな」

「これ1本でいくらくらいするかな?」

「たしか赤鬼ダケが銀貨1枚くらいで、青鬼ダケは銀貨2枚って感じじゃなかったかな。古そうな本に書いてあった買い取り価格だから今どうなのかは分からないけどね」

「でも、赤より青が高いことは変わってないでしょ?」

「そうだろうな」

「じゃあ、次は青が見つかることを祈りながら進みましょ」

 そう言ってエリカは一度リュックを下ろして赤鬼タケを中にしまってから、先に立って歩き出した。

「エリカ、先に立っていくのはいいけど、あまり速く進まないでくれよ」

「ゴメン。気がいちゃった。地面に落ちてるものを拾って歩くって何だかワクワクしない?」

 そう言って振り返って俺の顔を見るエリカの目がドルマークになっているわけではなかったが、エリカの気持ちは分からないでもない。

 これが10階層で、ジェムが手に入ったら今度こそエリカの両眼はドルマークになるかもな。


 俺の先を歩くエリカのプリプリしたお尻の動きにまで気を配って歩いているのだが、まさにマルチタスク。俺の脳は少なくとも4コアのCPU並みだ。などとこの世界の人間では全く理解できないようなことを考えてタスク数を増やしてしまった。


 それから先もモンスターに出くわすこともなく、2本目のキノコを摘むことができた。今度はエリカの望み通り青鬼ダケだった。まあ、赤鬼ダケと青鬼ダケの生えている比率はどの程度か分からないけれど、そんなに差はないなら赤が出るか青が出るかは確率的には2分の1だしな。

 

「フフフ」


 青鬼ダケを摘んだ時のエリカの含み笑いがちょっと怖かった。


 それからもモンスターに遭うこともなく1時間ほどで赤鬼ダケと青鬼ダケをそれぞれ1本手に入れることができた。


「こんなことならもっと早く5階層に来てればよかった」

 などとエリカは言い始めた。俺もそう思ったので大きくうなずいた。


「しかし、モンスターに出会わないなー」

「そうねー。でもモンスターに出会ったらたおしてエドが背負うことになるでしょ。そうしたら大きさ次第かもしれないけどすぐに帰らないといけなくなるじゃない。それだとつまらないからちょうどよかった」

「でもあと2時間くらいしたら昼休憩して、ギルドに帰らないと」

「それはそうだけど」



 それから2時間ほど経って俺とエリカはいつものように坑道の壁に寄りかかるように座り昼休憩していた。

 この2時間、モンスターに出くわすこともなく赤鬼ダケ2本と青鬼ダケ2本を手に入れた。結局午前中、赤鬼ダケ4本と青鬼ダケ4本手に入れたことになる。



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