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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第37話 白銀の双剣2


 昼休憩で坑道の壁に沿って二人して腰を下ろし、干し肉などを食べ、水袋から温い水を飲んだ。

「エリカ。剣に彫られた文字を読める人がいるかもしれないから、ギルドに帰ったらエルマンさんに聞いてみよう」

「うん、そうね」

「読めなくても、剣の力のことは分かったから十分だけどな」

「うん。そんなに長い文字じゃないからおそらく剣の名まえだと思うんだよね」

「たしかにな。読めなければエリカが名まえを付けてやればいいじゃないか」

「うん、そうする」


 昼休憩を終えた俺たちは帰り支度をして、1階層の渦に向かって帰っていった。


 渦から出てギルドに戻った俺とエリカは買い取りカウンターで獲物を買い取ってもらった後、受付のエルマンさんのところに行った。


「エルマンさん。ちょっと教えていただきたいことがあるんですが?」

「なんでしょう?」

「えーとですねー。ダンジョンの中で剣を見つけたんですよ」

「ほー。それはおめでとうございます。オークションにかけたいというお話ですか?」

「いえ、その剣は自分たちで使うつもりなんです。それで、その剣の根元、柄の近くに文字が刻まれていたんですが、全く読めない文字だったもので。誰かそういった特殊な文字を解読できる人を紹介していただけませんか?」

「それでしたら、当ギルドの鑑定士をご紹介しますので2階にご案内します」

 カウンターからホールに出てきたエルマンさんに続いて2階に上がり、テーブルが1つ置かれた部屋の中に通された。

「この部屋でしばらくお待ちください。鑑定士のゼーリマンさんを呼んできます」

「鑑定料は?」

「鑑定料はいただきません。登録時説明していませんでしたがギルドのサービスです」


 しばらくしてエルマンさんが白髪かつ白髭の老人を連れて戻ってきた。

「ギルドの鑑定士のゼーリマンさんです」

「エドモンド・ライネッケです」「エリカ・ハウゼンです」

「「ゼーリマンさん、よろしくお願いします」」

 エルマンさんはゼーリマンさんを紹介したところで部屋を出ていった。


「お二人とも、楽にしてください。それで文字の刻まれた剣というのはどれですかな?」

 エリカが、剣帯から2本の剣を外してテーブルの上に置いた。


「どちらの剣も剣身の根元に文字が彫られています」

「どれどれ」


 ゼーリマンさんがまず長剣を鞘から出して、刻まれた文字をじっと眺めた。

「ほう。白銀製の長剣ですか。素晴らしい。

 ダンジョンで見つかるアイテムには文字が刻まれていることがたまにあるんじゃよ。

 たいていは古代文字なので、ある程度読めるんじゃ」

 古代文字ってのがあったのか。


「こちらに書かれているのは『ヘルテ』。意味は無慈悲、冷酷ですな。敵を無慈悲にうち滅ぼすという意味合いでこの剣の銘としたのでしょう」

 さすがは鑑定士さま。この鑑定結果が俺やエリカには真実なのかウソなのか分からないのがミソではあるが、信じて悪いわけではない。しかしカッチョイイ!


 ゼーリマンさんが長剣ヘルテを鞘に納めて今度は短剣を鞘から引き抜いた。

「こちらも見事な白銀の剣ですな。素晴らしい。

 ……。なるほど。

 こちらに書かれているのは『エルバーメン』。文字の意味は慈悲ですな。

 おそらく、瀕死で苦しむ敵に死の慈悲を与えるという意味なのでしょう」

 言い終わったゼーリマンさんは短剣エルバーメンを鞘に納めテーブルの上に置いた。

 白銀の長剣ヘルテ、白銀の短剣エルバーメン。それを操る白銀の双剣使いエリカ、カッコよすぎるぞ。


「「鑑定ありがとうございます」」

「いえいえ、良いものを見せていただきました。長生きするものですな。フォッフォッフォッフォ」

 ゼーリマンさんは笑いながら部屋を出ていった。

 オークションに出せばどれくらいで売れそうか、聞いてみたかったが無粋なので止めておいた。


 部屋の中には俺とエリカだけ残った。

「すごそうな剣だったな。エリカ、期待してるぜ」

「うん。任せて」


 そこで思い出したのだが、俺の左手の指輪を鑑定してもらえばよかった。ただ、俺の指輪には文字が刻まれているわけではないし、ゼーリマンさんだってファンタジー小説のように魔法やスキルで鑑定しているわけじゃなく知識で鑑定しているはずなので無理だったろう。


 俺たちも部屋を出て、1階に下りてエルマンさんに軽く礼を言ってから3階に上がって各自の部屋の前で別れた。


 着替えて少し休憩したら夕食の時間だ。



 その日、エリカと1階の雄鶏亭で夕食を摂りながら。


「ところで、白銀って何か知ってる?」

「聞いたことはあるんだけど、わたしも良くは知らない。

 でも今日モンスターの骨を断ち切ったけどほとんど手ごたえなかったし、刃こぼれはもちろん血のりも付いてなかった」

「じゃあ、俺のレメンゲンと似たようなもので、色の違いだけかもな」

「そうかもしれないわね」


 俺もエリカも工房で買った剣は予備になってしまったが、結果論だし、予備があって困るものではない。


「エリカは今までの2本の剣はどうする? いちおう予備としてダンジョンの中に持っていく?」

「そうねー。予備はあった方がいいのは確かだけど、一度に2本使えなくなるわけじゃないから持っていかなくてもいかな」

 確かに。エリカは2本持ちだしな。


「そういえば、エドはレメンゲンだけで予備の剣を持ってダンジョンに入っていないじゃない」

「レメンゲンが欠けることすら想像つかないんだよ」

「そうね。見た目、すごく頑丈そうだものね。それにもし何かあったら、わたしの一本を貸してあげるわ」

「うん。しかし、俺たちってすごく運がいいよな。1階層とか3階層なんかでアイテムを見つけるなんて普通ないことじゃないのか?」

「それは、エドがちゃんと地図を作って実際の坑道と見比べてたからよ」

「ベテランはともかく、新人なら普通そういったことするんじゃないか?」

「確かに。少なくとも初めて歩く坑道なら地図は用意して見ながら進むものね」

「やっぱり、俺たち運がよかったってことだな」

「そうね」

「また何か見つかるかもしれないって思って明日からのやる気が出るよな」

「それはそうね。わたし今日は遅くまで寝られないかもしれない」

「明日寝不足のようだったら、出発を遅らせていいぞ」

「そこまでしなくて大丈夫よ」

「無理する必要なんかないんだからな」

「うん。ありがとう」


 食事を終えて3階に戻った俺たちは部屋の前で別れた。


 部屋に戻って下着にズボンだけはいて、タオルと桶を持って下りていき、井戸に回って体を濡れタオルで拭いてさっぱりした。

 不思議なもので、この世界に生まれ変わって産湯は分からないが一度も温かいお湯のお風呂に入ったことがない。そのおかげだと思うが、こうして簡単に体を濡れタオルで拭くだけでもさっぱりする。人間、慣れだな。慣れ。


 今日はビックイベントがあったが1日が早い早い。これって老化現象なのだろうか? 俺って精神年齢還暦だし。60年ってけっこう長いものな。



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