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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
284/336

第284話 神聖教会総本山破壊作戦3、第2の御子


 ズーリを抜けた先はわずかばかりの雑草とところどころに生えた短い丈の灌木が色の褪せた緑であとは褐色の荒野だった。その荒野の真ん中に道が一本だけ西南西に延びていた。


「本当に何もないところね」と、いつもの調子のエリカに対して。

「これだけ土地があるんだから何かの役に立たないのかな?」と、返す副官のドーラ。

「水がないと無理じゃないか」そのドーラの疑問に兄が答える。


 俺の前世の近現代で必要なのは潤沢な水とエネルギー。エネルギーは他所から持って来られるが水は別だ。近現代に限らず水は全ての文明にとって必要不可欠の物。

 この荒野は沙漠であって、砂漠ではないので、ある程度の降雨はあるのだろうが、耕作や畜産は無理なんだろうな。いずれ灌漑して肥沃な大地に生まれ変わるかもしれないが、俺が生きている時間内にはちょっと無理だろう。


「この先に国があることが信じられません」

「ここじゃあ水も簡単には手に入らないんだろうけど、カルネリアは少なくとも水場があるから国になったんじゃないか?」

「まあ、そうじゃないと生きていけないものね」


 そんな荒野を走る道だが、人が通っていないわけではない。道の真ん中を二、三人で固まって歩いている。巡礼者なのだろう。荷馬車の類もたまに見かける。

 ウーマを見つけると、彼らは何か言っているのかもしれないが、ウーマの中にいる俺から見て慌ててながらも無言で道を空ける。


 四六時中ウーマのスリットから外を眺めているわけではないので実際のところは分からないが、街道沿いにはそれなりの数の水場とかオアシスのような場所があるのだろう。そうじゃないと20日も街道を歩けないものな。


 そう思って外を眺めていたら街道脇にオアシスっぽい場所があり、小集落が形成されていた。

 水さえあればどこでも生きていけるってことだな。

 

 何事もなく沙漠の真ん中を走る街道を進んでいき午後5時ごろ日が西の地平に沈んだ。

 もうみんな風呂に入って上がっている。


 空は日没からしばらくは明るかったが、そのうち星が瞬き始めた。まだ満天の星々というわけではないがそのうち満天の星々になるだろう。

 俺が前世で見知った星座はどこにもないし、もちろん荒野を進んでもスバルも見えない。この世界が天の川銀河内なのか、全く別の銀河なのか、そもそも違う宇宙なのかもわからないが、天の川らしきものが見えるのでどこかの銀河の一員ではありそうだ。


 夕食を終えて、リンガレングと並んで前方スリットから外の様子を眺めていたら耕作地はたけが見え始めた。カルネリアに到着したらしい。ところどころにシルエットとなった集落も見える。


 道には境界を示すようなものは何もなく、そのままウーマは街道を進んでいった。数キロ先に街の明かりのようなものが見えてきた。


 聖地ハジャルの位置は正確には分からないのだが、今ウーマが進んでいる街道をまっすぐ進めばハジャルに到達できるはず。

 ケイちゃんによると、ハジャルは小高い丘の上に築かれた城塞という話だったから、近づいて行けばすぐにわかるだろう。


 そこから何個目かの街を過ぎ、時刻は午後10時。人通りはないが結構大きな街の中をウーマは横断した。


 ヨーネフリッツ国内でも、ライネッケ領でも夜間遅くなっても街中だと人が絶えることはないがこの国では夜間外出禁止令でも出ているのか、誰も通りを歩いていない。


 あと数時間でハジャルのハズ。俺以外みんな自室で眠りについているはずだ。

 見張りをリンガレングに任せて俺も仮眠をとろうと自分の寝室に向かった。


 俺はズボンと胴着を脱いで下着になってベッドにもぐりこんだ。

 目を閉じてしばらくしたところで、わずかな加速度を感じた。これはウーマが停止した時の加速度だ。


 ベッドから起き出した俺は素早くズボンはいて胴着を身に着け、リンガレングのいる居間まで急いだ。

 そこにはすでにペラがいた。

「ペラ、どうした?」

「ウーマの前方を人が塞いでいます。それでウーマは停止したようです」

「リンガレング。異常があったらすぐに知らせないとだめだろ」

「申し訳ありません。すぐにいなくなるものと考え就寝中のマスターに報告を怠りました」

「そうか。これからは些細なことでも起こしてくれて構わないからな」

「了解しました」


「ウーマの前を塞いでいる者ですが、青い鎧を着ています」

「兵隊ということか?」

「いえ、御子ではないかと思います」

「おー。とうとう出てきたか。リンガレングでたおしてしまうか?」

「そうですね」


 スリットからのぞくと、色はハッキリしないがおそらく青っぽい鎧を着て似たような色のヘルメットをかぶった男が盾と剣を持って立っていて、その剣でウーマの首の付け根あたりに切りつけている。


 おいおい。


 スリットからでは、男の斬撃でウーマの首に傷がついているのかは分からない。しかし、赤い御子が持っていた大剣でペラの腕が落とされたわけだから、この青い御子の持つ剣もそれ相応の剣の可能性が高い。

 ドリスからの情報でズーリに赤、白、黒の御子がいたということで、ここで青が出てきた。

 4神と同じ色だが、何か関連があるのか?

 神聖教会は多神教ではなく石を拝んでいると聞いているのでたまたま色がそれっぽいが4神とは無関係と考えていいだろう。


 ウーマの頭に意味がある感じは全くしないのだが、首が落とされたらちょっとマズそうなので、早めに対処したほうが良さそうだ。


 そうこうしていたら、エリカたちが起きてきた。3人ともちゃんと普段着を着込んでいる。ドーラはどうでもいいがちょっと残念。


 ウーマの前で剣を振るっている御子は俺たちのことを知ってて攻撃しているのか、知らずにただモンスターがやってきたと思って攻撃しているのか?

 いずれにせよたおすと決めた相手だ。

 幸い近くに見物人もいないようだし、サクッとリンガレングでたおしてやろう。


「リンガレング、目の前の男をたおしてくれ。モンスターと思って丁寧に処理してくれよ」

「了解しました」

「リンガレング。上のハッチから外に出られるか?」

「問題ありません」


「それじゃあやってくれ」

「はい」


 リンガレングは階段を駆け上り、前足で器用にハッチを空けて後ろ足でジャンプしながら脚を折りたたむという高難度の体技でハッチから飛び出していった。


 俺たちはリンガレングと御子との戦いを見るために前方スリットに張り付いたのだが、リンガレングはスリットから見えるものの、知らないうちに先ほどの御子が見えなくなっていた。

「御子がいない。逃げたのか?」

「マスター、御子はリンガレングの斬撃を延髄下部あたりに受け即死したようです」


 俺たちがそれなりに苦労してたおした御子とおそらく同程度の御子を、一瞬でたおしてしまったのか!?

 リンガレングってヤヴァ(**)いんじゃないか?


 ウーマの腹を路上に付けさせ側方ハッチから道に飛び降りて御子の死体を探したのだが見当たらない。

「リンガレング、御子の死体はどうなった?」

「先ほどウーマが腹を路面につけたところで押しつぶされました」

「なんだってー!」

「御子は完全に潰れましたが剣と盾は無事ではないでしょうか。うまくすれば防具も利用できるかもしれません」



谷村新司 昴

https://www.youtube.com/watch?v=LbJ01CaMiEw


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