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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第267話 待機


 ドリスの即位式を終えて10日ほど俺たちはブルゲンオイストの王城で滞在したあと、いったんツェントルムに戻ることにした。その際、ドリスの護衛としてペラをメンテナンスボックスと一緒に置いていくことにした。もちろん、サリーたち3人も一緒だ。

 移動に際してドリスたちのため、フカフカタオルと一緒にシャンプーなどを置いていった。


 ブルゲンオイストの王城からツェントルムに毎日報告書が送られるように手配しておいた。

 報告書の到着は馬を乗り継ぐ軍の騎兵を使うため3日でツェントルムに届く。情報の伝達をもう少し速くしたいがそれが限度だ。本当に急を要する情報ならペラが走ることも視野に入る。ペラが走れば数時間でツェントルムまで走ってこられる。が、そういうことはまずないだろう。



 この10日の間に王城からは西ヨーネフリッツ各地の領主たちに書簡を発送している。


 書簡の内容はヨーネフリッツの正統な後継者であるドリス・ヨルマンが、ヨルマン領を解放し、ドリス・ヨルマン1世として立ったことを宣言したものだ。書簡の発送者はヨーネフリッツ王国大侯爵エドモンド・ライネッケと記され、俺が直々サインしている。数があったのでけっこう大変だった。


 これでドリスの後ろ盾が誰なのか、誰でも分かるだろう。俺が最終的に目指すものは分からないだろうが、少なくとも新生ヨーネフリッツ王国が目指すものが何なのかは理解できるはずだ。書簡は遅くとも発送から20日後には全領主のもとに届く。1カ月もせず、なにがしかの反応があるはずだ。


 当然、父さんのところにも送っていますよ。俺の名まえを見たら驚くだろうなー。

 と、思っていたら、父さんからの書簡が王城に届き、俺のところにも父さんからの手紙が届いた。


『陛下のご即位をお祝い申し上げ、同時にわが領地を返上いたします』という簡単なものだった。これに対して王城は、領地の返上は不要であることと、ヨーネフリッツの伯爵としてこれからの忠勤に期待する旨を記して返信している。


 この話をドーラにしたところ、ドーラが不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。

「なんで父さんは領地を返上するってドリスお姉さんに言ったの?」

「領地って建前は王さまから預かったものなんだ。それで父さんはドリスにまだ領主として認められていないから、ちゃんと認めてくれって意味で領地を返す。って言ったんだよ。

 そのまま領地を預けるって返事が返ってくることは、お約束なんだ」

「そういうものなの?」

「そういうものなんだよ。もしここで、それじゃあ領地は預かったからどこへでも行け。ってこっちが返事したらどうなると思う?」

「父さん怒ると思うけど、自分から言い出した以上仕方ないんじゃない?」

「父さん一人ならそれでお終いだけど、そのことを知った他の領主はどう思う? 誰もドリス側に立たなくなるだろ?」

「あー、そういうことなのか」

「そういうことなんだ」



 父さんから俺への手紙の内容は、

 領民たちはドリス殿下の無事と即位に驚いているが、おおむね良好に受け止めている。それ以上に|エドモンド・ライネッケ《おれ》が表舞台に返り咲いたことが喜ばれている。とのことだった。

 なんで俺の復帰を喜んでいるのかは分からないが、その逆でなかったことを素直に喜んでおこう。


 父さんのところ以外でも比較的近い領主から順に同様の書簡が王城に届けられ、爵位と領地を順次安堵している。

 この調子だと、西ヨーネフリッツ王国の直轄地を除いてほとんどの領主が寝返りそうだ。国内で血を流したくはないものな。


 当初ハルネシアに対して停戦の申し入れをしようかと思っていたのだが、領主たちのこういった反応から不要と判断して無視することにした。



 そのほか予想していなかったこととして、ブルゲンオイストの大商人たちから献金が相次いでいるようだ。もちろん商業ギルドを中心に各ギルドからの献金もある。商人の世界で勝ち馬に乗らないのはある種の罪悪だものな。


 献金という名の付け届けで資金的に余裕が生まれたことで、ブルゲンオイストで新たに兵を募ることにしたところ、たった2日で予定の2000人に対して3000人近い人が集まってしまった。面接を行ない、2000人を採用したという。

 もちろん彼らは何の役にも立たない新兵なのでみっちり訓練する必要がある。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ブルゲンオイストからツェントルムに戻った俺たちは、状況が動くのを待つだけだったので、これまでの日常生活に戻った。ドリスに貸し出したペラがいないのでちょっと寂しいが、ツェントルム周辺の見回りをしたり、研究所に顔を出しアドバイスとかして過ごした。

 ブルゲンオイストから毎日届けられる報告はひとことで言えば順調。いい感じ。

 エリカとケイちゃんは駐屯地に出かけて兵隊たちの訓練をみたりしていた。

 ドーラは行政庁に顔を出して、伝票処理を手伝ったりしている。




 ツェントルムに戻って10日ほど過ぎた。


 その間に軍隊の呼称変更についてみんなと話しをした。

「どこの国も500人隊を基準にしているんだけど、呼びにくいんだよなー。

 第1、500人隊とか」

「それは分かるけど、それでエドは何がしたいの?」

「呼び方を変えたいんだ」

「名まえを変えるだけなら、別にいいと思うけど、みんな慣れ親しんだ500人隊をわざわざ変えると混乱するんじゃない?」

「そういうことが起こらないように、簡単な名まえにしようと思っている」

「思っているということは、何か案があるって事よね?」

「うん」

「それで?」

「500人隊を大隊、100人隊を中隊、20人隊を小隊、20人隊の中の班を分隊としようと思うんだ」

「なーんだ。エドのことだから突拍子もない名まえを考えているのかと思ったんだけどすごく普通。

 でも、良いじゃない。それだと、部隊の人数が少々前後してもおかしくないし、第1、500人隊なら第1大隊になるんでしょうからすごく呼びやすいし。隊長はそれぞれ大隊長、中隊長、小隊長になるんでしょ?」

「うん。

 他の二人はどう?」

「いいと思います」「何だか新しい響きがあるし、すごく強そう。良いんじゃないかな」

「それじゃあ、それでいこう」

「うん。そのように通達を出しておくね」

「頼んだ」


「第1、500人隊の第1、100人隊の第1、20人隊だと、第1大隊第1中隊第1小隊になるわけよね?」

「うん」

「今どこの500人隊にも属していない100人隊が3つあるけど、この3つは何て呼べばいい? 今まではなんとなく1番目の100人隊とか言ってたけど」

「独立第1中隊か第1独立中隊でいいんじゃないか? 混在はマズいからどっちかに決めた方がいいだろう」

「そうねー、どちらがいいかと言えば、わたしは独立第1中隊かな」

「わたしは第1独立中隊です」

「ドーラは?」

「うーん。分かんない」

「じゃあ、軍の責任者のエリカの意見を採って独立第1中隊としよう」

「「了解」」


「あと、将来的には騎兵を集中して運用したいんだ」

「つまり騎兵隊よね?」

「うん。その時騎兵であることを示すために第1騎兵大隊とか兵隊の種類を表す言葉を入れたいんだよ。今だと全部陸兵だから分かりづらいだろ?」

「じゃあ、弓兵なら第1弓兵大隊ね」

「うん」

「じゃあ、普通の陸兵は?」

「歩兵を考えている。騎兵との対比だな」

「ふーん」

「歩兵の中で槍を主に使う部隊を第1槍兵中隊とかにすればいいと思っている」

「剣を主に使う歩兵は?」

「それは何もなし。ただの歩兵でいいだろう。少なくとも短剣を含めれば陸兵はみんな剣を持ってるから剣兵はおかしいから」

「分かった。

 となると、第1歩兵大隊の中に、第1歩兵中隊、第2歩兵中隊、第1槍兵中隊、第2槍兵中隊、第1弓兵中隊って感じになるわけね?」

「うん。でも今は各部隊とも剣と槍は混在しているから、将来的には分けるとしても今はまだ分けないで大隊、中隊、小隊、分隊だけの変更でいいんじゃないか?」

「そうね」




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