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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
215/336

第215話 ドロイセン襲撃作戦2、海戦


 一夜明けて作戦決行日。


 昨夜はいつも通り寝て5時前にみんな目を覚ました。朝の支度が終わったらすぐに朝食を摂り、そのあと装備を整えた。

 そして6時少し前にウーマをキューブに収納して俺たちは倉庫を出た。


 倉庫を出たところ、今は12月の半ばなのでまだ外は暗かった。空を見上げたら今日は曇りのようだ。ウーマに乗るまで雨が降らないことを祈るしかない。


 領都を出た俺たちは途中街道から外れて南下していき何個か町を通過した先の海辺の町にたどり着いた。時刻は11時少し前。意外と領都に近い。その割に領都で新鮮な魚が手に入らないのはなぜだ?


 俺たちは町を縦断して海岸に出た。

 ここまで天気はもってくれたのだが、空はどんよりと曇っていつ降り出してもおかしくない。

 海岸は岩場で磯といった感じだった。漁港を作るにはちょっと難しいかもしれない。

 ウーマにとって多少のデコボコはどうってことないはずなので、そこでウーマをキューブから出して、俺たちはウーマに乗り込んだ。


 前方スリットから外を眺めたら雨が降り出したようで、少し先の海は煙っていてはっきり見えない。

 その程度のことでウーマがどうなるわけでもないだろう。と、思った俺は、沿岸から数キロ沖をつかず離れず航行するようウーマに大まかに示して、ウーマを発進させた。あとはウーマが適当に針路を調整してくれるだろう。


 動き出したウーマが海に入ったようで少し傾いた後また水平になった。

 さっそく見張りに立ったペラと並んで前方のスリット越しに外を見たが、しぶきと雨のせいでほとんど何も見えなかった。スリットからは今までの雨同様しぶきが中に入ってくることはなかった。

「ペラ、外は何も見えないから、防具を外してきた方がいいんじゃないか?」

「人の可視光線以外でも周囲を警戒していますから」

 確かにペラの目は人の目じゃないし、目以外にもレーダー的な何かが備わっていてもおかしくないものな。


 俺は周囲の警戒をペラに任せてソファーの近くまで戻り装備を外していたら、着替え終わったエリカたちが寝室から出てきた。


「雨が降ってきたし、海も波が出てるみたいだけど、ウーマの中はほとんど揺れないな」

「ホントね」

「そういった仕組みが組み込まれているかもしれませんね。何せウーマですから」

 確かにウーマは何せウーマだからな。


 俺たち3人はウーマに任せきりで十分と思っているが、ドーラは違っていた。

「わたし、海初めてなんだけど、大丈夫かな?」

「俺だって海は初めてだけど、大丈夫だと思うぞ。そもそも揺れてもいないし」

「船ってふつう揺れるよね。

 本当に海の上を進んでいるのかちょっと見てくる」

 そう言ってドーラはペラと並んでスリット越しに外を眺めたが、やはり何も見えないようですぐに帰ってきた。

「全然外が見えない。こんなのでウーマはまっすぐ進んでいるのかな?」

 おそらくまっすぐ進んでいるのだろう。

 自動地図を広げても、海の上なわけだが、先ほどの海岸は記入されているはずなので、ちゃんと進んでいるかどうかは分かるはず。

 そう思って床に置いたリュックから自動地図を広げて見たところ、ちゃんと領都からの地図が描かれていて、先ほどの海岸からウーマの航行に合わせて地図上に海岸線が延長されていた。

 ウーマは指示通り海岸線に平行に進んでいる。

「ほら、ここがウーマが海に出たところで、この地図の真ん中が今ウーマのいるところだ。

 問題ないみたいだろ?」

「ほんとだ。ウーマってすごいよね」

「ウーマだからな。

 ということだから、航海はウーマに任せて、そろそろ昼にしよう」

「「はーい」」


 4人で作り置きの料理を並べていき、カトラリーを並べ終えたところでペラを呼んだ。

「「いただきます!」」


 食事しながら、襲撃時の作戦を決めておくことにした。


「時間はそれなりに前後すると思うけどあと3日半。

 深夜に襲撃したいから時間調整することもあり得る」

「うん」

「その際、敵船に遭遇しないよういったん沖にでていようと思う。

 それでも敵船に遭遇したら、敵船が港に帰り着く前にペラの鉄塊で沈めてしまう」

「はい」

「夜になって港湾部に侵入したら、ウーマの甲羅の上のステージからペラが鉄塊を投げて敵船を片っ端から沈めていく。

 その際、随時俺が鉄塊を補給する」

「了解しました」


「ペラが敵の船の水に沈んだ部分に鉄の塊を投げつけるとして、水切りみたいに鉄の塊が海の水で弾かれるってことはないかな?」

「あり得るんじゃないか。ペラどう?」

「横方向回転だと水切り現象が起こるかもしれないので、縦方向に回転させて投擲します。それでおそらく水面で跳ねることはないと思います」

 確かに。水切りは横回転させるから水に弾かれて感じだものな。

 しかし、ダンジョンで眠っていたはずのペラがよく水切りなんかを知っていたものだ。


「本当は火をかけられれば一番よかったんだがな」

「どういった形であれ一度沈めば、そう簡単に引き上げられないんじゃない?」

「そうだろうな」

 サルベージ技術なんかはあるはずないので、沈めるだけで十分と言えば十分かもしれないが時間的余裕があれば引き揚げても修理できないくらい壊してから沈めた方がいいだろう。

「敵の数が少なく時間的に余裕があるなら徹底的に船の上部を破壊して最後に船の腹に孔を空けて沈めてもいいかもしれない」

「マスター。状況を判断して、できる限り敵船を破壊してから沈めます」

「そうしてくれ」

「港や船上に敵兵がいた場合どうしますか?」

「攻撃してくるようなら排除だな」

「了解しました」

 とはいえ、俺たちは港に接近したら明かりがスリットから漏れないように明かりを落としてしまうので、敵はどこから攻撃されているのか分からないだろう。つまり俺たちが敵兵から反撃されることはないはずだ。


 この作戦がうまくいったら、今度は北大洋側の敵の海軍拠点を襲撃することになるだろう。


 ……。



 航海を続けて丸二日。その間文字通り何事もなかった。

「こう何もないとホントに暇よね。

 やっぱり釣り道具を用意しとけばよかった」

「今回うまくいったら次は北大洋だ。その時までには用意しよう」

「うん」


 この二日で雨は上がっていたが空は曇ったまま。

 自動地図を広げて見てると、出発地点から陸沿いにウーマは進んで今はウーマは南を向いて進んでいる。何度か進んだ距離から逆算してウーマの速度を割り出したところ、時速10キロで着実に航行していることが分かった。ドロイセンまであと1日半だ。ペラは雨上がりのあとスリットからでは視野が狭いと言って、甲羅の上のステージに立って周囲を警戒している。




 昼食を終えて一休みしていたら、甲羅の上のステージに立って警戒しているペラから声がした。

「前方に船影多数」


 俺はペラの立つステージに上がって前方を眺めたら、確かに多数の船がこちらに向かっているのが見えた。オールが規則正しく動いているのも見えるので、どう見ても軍船だ。

 ヨーネフリッツの艦隊は壊滅しているわけだから、前方の船団は敵確定。


「前方の船団は敵船団だ。

 ウーマ。このまま、まっすぐ突っ込んでいくぞ」


 空はまだ曇っているし、海はうねっている。そのうねりの中をウーマが白い波を立てて前方の船団に向けて進んでいく。


「ペラ。ウーマはこのまま、まっすぐ敵船団中央に突っ込んでいくから射程に入ったら順に沈めていってくれ」

「了解しました」


 俺はペラの足元の周りに四角手裏剣を並べておいていった。数はざっと60個。


 会敵まで10分ほど余裕はありそうだったので、エリカたちにも言って防具を身に着けた。

 ウーマの中にいる以上防具の意味はないのかもしれないが、少なくとも気持ちは引き締まる。

 何かの加減でウーマが急な動きをしたとき、ひっくり返って頭を打つことだったあり得るし。


「ペラ。四角手裏剣を投げながらで大変かもしれないが、適宜ウーマに指示を出して襲撃しやすい位置取りをしてくれ」

「了解しました」


 防具を身に着けたエリカたちは前方スリットをのぞいている。スリットの位置が低いので波のある海では遠くまでは見えないが、戦闘が始まるくらいまで近づけばよく見えるようになるだろう。




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