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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
211/336

第211話 ウーマに招待2


 風呂から上がって、髪と体を乾かして父さんたちを食堂のテーブルに着かせた。

 台所で料理を出していき、エリカたちがそれをテーブルに並べていく。


 テーブルが料理でどんどん埋まって行き最後にエールを人数分のガラスのジョッキに注いで準備完了。

 エールの入った樽を食料庫から運んだ時、いきなり壁が消え出入り口が現れたところで父さんたちは驚いたようだが何も言わなかった。ダンジョン産謎アイテムということで全て納得したのだと思う。


 俺の席はお誕生日席で椅子は隊長室から持ってきた椅子だ。

 俺の斜め左に父さん、右にヨゼフさんが座って、父さんの横にドーラ、エリカ。ヨゼフさんの横にケイちゃんペラの順で座った。


「それじゃあ、かんぱーい!」「「かんぱーい!」」

 ガラスのジョッキも珍しいものなので父さんとヨゼフさんはしきりに感動していた。


「ジョッキがガラスだと割れそうでちょっと怖いな」

「丈夫なガラスだから、割ろうと思って無茶しない限り絶対割れないから」

「これもダンジョンで見つけたのか?」

「これは、ウーマの中にあったんだ」

「じゃあ、ダンジョン産だ。安心して飲める」


 エールをごくごく飲んだ後、父さんがナイフとフォークでハンバーグを口に入れた。

「これどうしたんだ?」

「これはねー、エドが作ったんだよ。おいしいでしょ?」と、ドーラが父さんに説明してくれた。

「こんなおいしいものは初めてだ。

 エドは料理もできるようになったんだな」

「うん。やってたら少しずつだけどうまくなってきたんだ」

「しかしこれホントにおいしいな。

 ロジナ村に帰ったら母さんに作ってもらいたいが、俺が帰る時までに作り方を紙にでも書いておいてくれ」

「分かった。面倒は面倒なんだけど難しい物じゃないから」

 今回のソースにはケチャップとショウユを使っているので、父さんが帰る時にはレシピと一緒にその二つを父さんに持たせよう。


 お客さんの父さんとヨゼフさんのお酒が無くなるとドーラがすぐに気づいてジョッキに樽から注いでやっていた。

 残りの4人は勝手に自分で樽からジョッキに注いで飲んでいる。

 俺はエールがなくなったわけではないが途中でブドウ酒に変えたら、みんなブドウ酒になってしまった。


 昼食会は2時間ほど飲み食いしてお開きになった。

 俺が父さんたちを送ると言ったら、ドーラも一緒に行くと言ったので二人で父さんたちを送ったのだが大通りに出たところで自分で帰れると言って父さんたちは二人で隊舎に帰っていった。二人がおとなしく隊舎に帰ったかどうかは不明だ。




 休み明け。

 俺たち5人は隊員たちの訓練の様子を父さんたちとしばらく見てから、俺たちだけ先に部屋に戻った。

 ペラとドーラは伝票仕事を始めた。エリカとケイちゃんは特に仕事はないので、ドーラの仕事を手伝ったりしている。

 俺もペラの持ってくる伝票にサインするくらいしか用事はないので、寛いでいたところ、領軍本部から連絡兵がやってきた。

 連絡兵は隊旗と旗立てと手紙を5通置いていった。隊旗は夏の甲子園の優勝旗のような感じで赤地に金糸で△の中に+が描かれていた。考えたら色の指定を何もしていなかったのだが、誰が色を考えたのか、なかなか良い感じだ。


 受け取った手紙は俺たち5人にそれぞれ宛てたもので、叙爵式の案内状だった。式は次の隊の休養日。場所は領主城。案内状を持って10時までに領主城の本館に行けばいいようだった。衣装も用意しているし。



 翌日。新人隊員用に防具が隊舎に届けられた。

 新品の防具を受領したことで、少しやる気が出たようで、動きが良くなってきた気がする。

 少しずつ、部隊が部隊らしくなってきた。まだ武器を用意していないのだが、父さんと相談した結果、部隊の標準武器は他の部隊と同じで背丈ほどの槍と短剣にしようということになった。


 攻撃力は最終兵器リンガレングもいるし、ペラもいるのでそこまで重要ではない。突出した攻撃力があるため防御力もあまり重要ではない。

 大事なのは、敵のいる場所にいかに迅速に移動できるかだろう。

 本当は素人同然の部隊を連れ回す方が非効率だが、今後都市の解放なども視野に入って来るならどうしても人数は必要になる。いずれにせよ俺の部下としてレメンゲン効果が発揮されれば能力がかさ上げされ、必然的に最高部隊になる。


 今はまだ行進主体の訓練だが、少しずつランニングに切り替えていき、1日50キロは移動できる部隊を作り上げるのだ!


 そこで問題になるのが輜重部隊だ。だいたい1日25キロ、無理しても30キロほどしか移動できないので、部隊がいくら移動できても無意味になってしまう。


 輜重部隊を連れ歩かない前提だと、作戦時は、数日分の水と食料を持参するしかないのだが、水が問題だ。1日4リットルの水を使うとして5日だと20リットル。これだけでリュックが重くなり思うように移動できなくなる。


 部隊の輜重をキューブに頼ることも可能ではあるが、それは最後の手段だ。

 そう考えると、無補給で作戦行動が可能なのは2日。長くて3日くらいになってしまう。それ以上作戦を伸ばすなら現地調達するしかない。意外と制約がある。



 一人で考えてもらちが明かなかったので、俺たち5人と父さんとヨゼフさんで、隊舎の空き部屋を使って部隊の方針会議を開いた。

 テーブルはないので床に座っても同じだったが、各自自分の部屋から椅子を持参している。


 適当に車座になって、俺の考えていることをまずみんなに話した。

 ちなみに、父さんとヨゼフさんにはリンガレングのことも収納キューブのことも教えている。


「……。そういった感じで、長くて三日間くらいしか作戦行動が取れないんだけど、何かいい案があるかな?」

「領軍本部長がどういった考えを持っているかは正確には分からないが、ライネッケ遊撃隊が領主城の隣りの駐屯地にいる以上、基本的に領都に迫る敵軍の撃破がこの部隊の主な役割じゃないか」と、父さんがもっともなことを言った。

「つまり?」

「長期間の移動を考えた部隊運用はないんじゃないか?」

「ということは。敵が迫ってきたら、いち早く駆け付ければいいということだよね」

「そうだな」

「となると、わざわざ部隊を連れて行かなくても、俺たち5人とリンガレングで済んじゃうんだよ」

「まあその通りなんだろう。ただ単純に敵を皆殺しにするならそれでいいんだろうが、捕虜を取るとなると兵隊の数は必要だぞ」

「そういうことか。確かに、俺たち5人だと大量の捕虜をどうすることもできないからね」

「捕虜を取ればいろいろ交渉の材料にもなるからな。

 もちろん、そんな余裕がなければそういったことを考慮する必要などないが、余裕は十分あるんじゃないか?」

「うん。あると思う」

「じゃあ、そのつもりで装備を考えたらいい」

「つまり敵兵を拘束するロープとか用意すればいいってことか」

「武装解除してしまえば、そこまでしなくてもいいかもしれないが用意するに越したことはないしな」

「じゃあ、そういった物を用意しておこう。ペラ対応頼む」

「了解しました」

 これでペラが物品購入依頼を領軍本部に提出すればそのうち用意されるはずだ。


「しばらくは領都の防衛なんでしょうけど、そのうち外に出ていくんじゃないかな?」と、今度はエリカ。

「そうだろうな」

「その時はやっぱり何日も移動するわけだけど、輜重部隊を連れてたらそれ以上で進めないでしょ?」

「さっき言ったようにそこがネックなわけだ」

「それで、輜重部隊がどうして遅いのかというと、結局馬がネックなのよね。重い荷物を引いている関係で1日30キロも進めないのは」

「そうだな」

「つまり、馬を使わなければいいのよ」

「エリカ。確かにそうだけど、荷物はどうするんだ?」

「それは人が引っ張るのよ」

「人がか?」

「そう。普通の荷馬車じゃ荷馬車自体が重くなるから小型で軽い荷車を作るの」

「確かに。それは妙案かもしれない」

「でしょ?」

「うん」

 20人隊に複数配備して荷物を運ばせれば1日の行程は短くなるのだろうが、それでも輜重部隊を連れ歩くより移動速度は上がるはずだ。


「小型軽量荷車は何台かいきなり本番で作る前に試作した方がいいだろうな。

 ペラ、その辺も対応頼む」

「了解しました」

 ペラが適当に領軍本部と交渉して、何とか荷車を実戦で使えるようにしてくれるだろう。

 有能な部下を持った上司ほど楽なものはない。

 一般社会だと、あまりに有能な部下がいた場合、自分の椅子が危うくなるのだが、ペラの場合はそういった心配は全くない。

 500人隊長は気楽な稼業ときたもんだ。


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