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第192話 傭兵団6、結団式


 商店街の先にあった食堂で昼を済ませた俺たちは、特に何もすることがなかったので、だらだらと宿に帰っていった。

 もちろん宿に帰っても何もすることはないので、俺はベッドに横になることにした。

「昼から何もやることがないから、俺は横になってるけど」

 エリカたち女性陣は、食料品以外を見てくると言う。

 食料品以外となると衣料品関係になると思い、4人が部屋から出ていくとき、エリカとケイちゃんの了承を得て、ペラにチームの財布から金貨5枚持たせておいた。

「マスター、ありがとうございます」

「いや、これはチームのお金だし、ペラの活躍の報酬のようなものだから気にするな」

「はい」

 

 4人が部屋から出て行ったので、俺はそのままベッドに横になり目をつむった。


 ……。


「ただいまー」

 目をつむったと思ったらエリカが部屋に戻ってきた。

「忘れ物?」

「ええ? 今帰ってきたところなんだけど、忘れ物はないわよ」

「あれ?」

 エリカのほかに女性陣が全員揃っていた。

 体内時計を確認したところ、エリカたちが部屋を出て行って2時間半くらい経っていた。

 また意識が飛んでいたようだ。意識が飛んだ時間を俺の人生のどこかに貯金したと思っておけばいいだけだが、俺の意識のないところでエドモンド・ハイド氏がまさか勝手に動き回ってはいないよな?


 夕食まで間があったのでまた目を閉じたら、夕食時間になっていた。なんだこの便利機能。しかし、スキップした時間が何等かの形で戻ってこなければ、時間を丸損したことになってしまう。


 とにかく、夕食時間になったのでみんな揃って1階に下りていった。

 その途中。

「明日だって何もやることはないから、やっぱり3泊目はキャンセルして明日の朝ゲルタに向かわないか?」

「そうね。わたしはいつでもいいわよ」

「わたしもそれでいいです」「わたしも」「はい」

「先に受付に言っておこう」


 下に下りたところで受付に行って3泊目をキャンセルした。問題なく1泊分の料金を返したもらえた。


 そのあと、食堂で定食の他、エールとつまみを頼んだ。キャンセル料の代わりにつまみは多めに頼んでやった。

 料理とエールが揃ったところで。

「それでは、傭兵団『5人』の結団式を行なおうと思います。ウェッヘン。

 そういうことなので、かんぱーい!」「「かんぱーい」」


「それで、みんなは服でも買ったのか?」

「うん」

「ペラも?」

「はい。それでマスター。頂いたお金の残りがあるんですが」

「それはペラのお金なんだからペラが自由に使ってくれ」

「ありがとうございます」

「ドーラは?」

「この前服は買ったから、見てただけ」

「買いたいものがあって今のお金が足りないようならいくらでも貸してやるからな?」

「いくらでも貸してくれるって、恐いよ」

「あははは」


「それで、明日の朝、朝食が終わったあと出発するとして、馬車の時間はやっぱり8時でいいのかな?」

「そうなんじゃない。だけど、ゲルタまでならダンジョンで歩ているくらいの距離しかないから最初から歩いてもいいんじゃない。荷物はエドがキューブに入れてくれるから軽いし」

「それもそうか。馬車に乗っているより自由だしな。他のみんなはそれでいい?」

「それでいいです」「うん」「はい」


 そういうことで、明日は徒歩でゲルタまで移動することになった。ここブルゲンオイストからゲルタまでの距離は30キロもないらしいので、移動時間は6時間もない。出発は朝食を摂ってからなので7時。従って到着は13時。途中昼食を摂れば14時到着だから。ちょうどいい。


 その辺りのことを4人に説明して、その後俺たちは本格的に飲み食いを始めた。

 他の客の話し声も聞こえてきたが、やはり国王がやってきているのではという話が中心だった。


「そういえば、サクラダに貴族の息子がいたじゃないか?」

「嫌なヤツだったわね」

「あいつの親って廷臣貴族って話だったろ?」

「うん」

「王都が敵に占領されたら当然痛い目に合ってるよな」

「そうなんでしょうが、あの男と親は関係ないのであまりそういったことは言わない方がいいかもしれません」

「確かに。俺が言い過ぎだった。しかし、国王が逃げ出した以上、廷臣貴族に年金は支払われないよな?」

「そうなんじゃない。払うお金もないだろうし、払う人もいなくなったろうし」

「つまり、辺境伯みたいな領地持ちの領主は一応貴族だけど、廷臣貴族は貴族ってわけじゃないんだ」

「本人は自分のこと貴族と思っているんでしょうけど、実質的にはわたしたち平民と同じじゃない」

「それは愉快だな。あの男に今度会うことがあったら、思いっきり嫌味を言ってやろ」

「エドって、意地悪だなー。でもわたしも言ってやるんだ。あははは」

「エリカもたいがいだな。あははは」

「ねえ、貴族となにかあったの?」

「うん。あったんだ。

 ……。ってことがあったんだ」

「そうなんだ。エドやエリカさんの気持ちは分かる」

「だろ?」「でしょ?」


「あいつが王都に戻っていたなら今頃敵軍の捕虜になってるんじゃないか?」

「そうね。でも、ああいった悪いヤツって悪運だけは強いから、案外王さまと一緒にこのブルゲンオイストに逃げてきてるかもしれないわよ」

「十分あり得るな。俺たちは明日の朝ここを離れるから、あいつにここで出会うようなことはないだろうけど、そのうちどこかで出会いそうだな」

「そういう意味では、楽しみよね。フフフフ」

「そうだな。あははは」


『ドーラちゃんのお兄さんとエリカはホントに仲がいいですね』

『そうみたいですね。そういえばエドはロジナ村で仲のいい同い年の女子がいたんですよ』

『そうなの?」

『はい。だけどその人、エドがサクラダに行くと言って村を出てすぐに他の男の人とすごく(***)仲良くなちゃって。エドには言ってないんですけど、これなら大丈夫みたい』

『そうだったの。よかったのか悪かったのか、ちょっと微妙かもね』

『良かったんじゃないですか。きっと』


「こら。二人で小声で何話してたの?」

「エリカとエドはホントに仲がいいなって話です」

「仲間なんだから、仲がいいのはあたりまえじゃない」

「その通りだ」

「そういうことにしておきましょう」

「なにそれ?」

「なんでもありません」


 俺たちはその後、散々飲み食いして傭兵団『5人』の結団式を終えた。



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