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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第174話 入浴。カール・ライネッケ5、王都へ2


 ペラがワイバーン5匹を撃墜し、俺はそのワイバーンをすべてキューブに回収してウーマに戻ったところでウーマは移動を再開した。


 ウーマの甲羅上のステージに置いた四角手裏剣のうち残った5つはペラが持ち帰って階段の上り口に置いていたので回収しておいた。そこで思いついたのだが、ステージの脇に空の宝箱を固定してそこに四角手裏剣を2、30個置いておけば便利だ。

 ということで、空宝箱にあらかじめ20個ほど四角手裏剣を入れておき、甲羅の上に上ってその作業をペラと二人で行なった。

 宝箱の固定はウーマにひとこと言っただけで宝箱はステージに貼り付いてしまったので作業というほどの作業ではなかった。

 どうやって宝箱が固定されたのかは分からないが宝箱はしっかりステージにくっ付いて俺の力でがびくともしなかった。これなら安心だ。ペラの力だと宝箱が引きちぎれてしまうのでペラには試さなくていいからと言っておいた。

 


 作業を終えた俺とペラはウーマの中に戻って向かい合ってソファーに座り、俺とペラの間に置いてあるソファー用のテーブルの上にバナナを取り出して食べ始めた。

「ペラもどうだ?」

「いただきます」

「しかし、ペラの投擲はすごいよな」

「ありがとうございます」

「ところで、ペラ。ドーラの訓練だけど、移動中何もしないともったいないと思うんだが、何か良い手はないかな?」

「まだ体ができていませんから、筋力は鍛えない方がいいと思います」

「なるほど。成長が阻害される可能性もあるだろうしな」

「はい。持久力を養うことは重要ですが、今回渦から13階層までの移動を見る限り持久力も問題ないようです」

「となると、何も訓練する必要はないということか?」

「結論的にはそうなります」

「そうか。それならそれでいいけどな」


 ペラと話していたら、女子たち3人が風呂から上がってドライヤーで髪とかを乾かし始めた。

 さっきの洗濯は乾燥まで終わっていたようで、ドーラは洗濯物を抱えている。

「みんな風呂から上がったようだから俺も風呂に入ってくる」

 そう言って俺は風呂に向かった。


「エド。ウーマが一度止まったようだったけど何かあったの?」

 風呂場に入る前に髪の毛を乾かしていたエリカに聞かれた。何気に鋭いな。

「うん。リンガレングがワイバーンを見つけたからペラがアレを投げて全部撃ち落としたんだ。それで死骸を回収した。全部で5匹。今キューブの中にワイバーンは25匹入っている」

「そうだったんだ。ご苦労さま」


「そういえばドーラ、温かい風呂に入った感想はどうだった?」

「あんなに気持ちいいものだとは思わなかった。それもそうなんだけど頭から足の先までピカピカになっちゃった。触ってみる? ツルツルだよ。ほら、髪の毛だってサラサラ! エリカさんとケイさんの髪の毛と肌が何でこんなにきれいなんだろうと思ってたんだけど謎が解けたよ」

「毎日風呂に入れるからこれからもっときれいになるぞ」

「うん。そうだよね!」

 確かにドーラの髪の毛はサラサラ、お肌はツルツルだ。


「それじゃあ俺も風呂に入ってくる」

「うん。頑張って!」

 頑張らなくてもいいだろ。

 ほら、エリカとケイちゃんが笑って見てる。



 風呂に入った俺は裸になって、今まで着ていたものはキューブに収め、かけ湯をして湯舟に入り肩まで浸かった。


 ふー。生き返る。


 存分にエキスを吸収して身も心もリフレッシュした。

 こうなってくると何がやりたいわけではないが、やってやるぞー! って、気持ちになるよな。いろんな意味で。

 

 一度湯舟から上がって体と髪の毛を洗ってまた湯舟に入って肩まで浸かった。

 少しお湯が温く感じたので、給湯ガーゴイルに向かって熱い湯を少し出してくれ。と声をかけたら熱いお湯が出てきてすぐに適温になった。何がどうしてどうなっているのか全く分からない謎技術が詰まったウーマの中は実に快適だ。


 さてと。ドーラのエキスが役に立つとは思えないが、エリカとケイちゃんエキスを十二分に堪能したし、そろそろ風呂から上がるとしよう。

 洗濯機は現在エリカたちの洗濯物を洗濯中のようだから、俺の洗濯は夕食後でいいか。

 風呂から出たら夕食の準備だ。さーて今日は何を作ろうかなー?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 カールは500人隊の隊長なので、食事については後続の輜重部隊の隊員が副官のヨゼフの分まで運んできてくれる。従って野営準備といっても毛布を地面に敷くくらいで終わってしまう。

 カールの乗馬についてはヨゼフの代わりの新しい従兵が世話をしてくれる。


 一般兵の場合は野営準備となるとまず簡易かまどを作ってそこで輜重部隊から支給された食材を煮炊きする。炊事用の燃料の薪などは通常野営地周辺から集めてくるわけだが輜重部隊でもある程度運んでいるのでどうしても燃料が足りない場合は支給される。

 通常なら干し肉や乾パンのような携帯食の他、かなりの量の食材を兵隊たちはリュックに詰めて移動するのだが、行軍中の荷物はなるべく軽くしてやるとのカールの方針で、食材は輜重部隊から支給という形をとっている。もちろん脱走を防ぐための方便である。兵隊たちもカールの真意は理解しているが、あからさまな不満は口にしていない。


 兵隊たちの炊事に使う鍋やその他の炊事用具は兵隊たちが分担して運んでおり、鍋などの大きなものはリュックの外、食器などの小さなものはリュックの中に入れている。これは通常通りである。


 カールとヨゼフは夕食を摂りながら。

「王都に着いたら、兵隊の数が減ったことの始末書を書くことになるんだろうなー」

「隊長。始末書で済むなら安い物じゃありませんか?」

「とはいえ、俺たちは領軍なんだからいくら何でも国軍の処罰は受けないんじゃないか?」

「もしも処罰されそうになったらどうします?」

「内容によるが、逃げるわけにはいかんだろうし、逃げられはせんだろう?」

「それはそうですけど。

 それで王都に到着した後、わたしたちはどこに移動すると思います?」

「俺は最初のうち、俺たちの行き先はズーリと思っていたが、ヨルマン領からズーリは遠いだろ? しかも王都経由だ」

「そうですね」

「だから、ズーリに近い王領の国軍がズーリに移動して、俺たちはその穴を埋めるんじゃないか?」

「それなら、わたしたちが生き残る可能性はグッと高まりますが、ズーリにわざわざ攻め込んで苦戦するような国軍がそこまで考えた行動しますかね?」

「さあな。最悪はどこかの矢面に立つことだが、願い下げにしてもらいものだ」

「その時はどうします?」

「領主さまの顔を潰さない程度に手を抜いて頃合いを見て逃走じゃないか? ただ、合戦ならともかく城攻めとかになると逃げるのは難しいだろうな」

「今さらですが逃げる訓練くらいしておけばよかったですね」

「行軍訓練さえまともにできなかったんだ。諦めろ。先のことはともかく、今一番大切なことは何人王都に連れていけるか。それだけだ」

「ですよねー」


 二人とも硬いパンをスープ浸して口に入れて飲み込む。


「ところで、隊長。われらの総指揮官閣下はどうなんでしょう?」

「ヨゼフ、何が言いたい?」

「いえ。何でもありません。スープのこの肉固いですね」

「肉が入っているだけましだったと思える日が来るかもな。虜囚のスープに肉は入ってないと思うぞ」

「隊長。いやなことを言わないでください」

「それは済まなかったな。まっ、そんなことにならないよううまく立ち回ろう」

「頑張ろう。じゃないところが切実ですね」

「俺たち領軍にとって何の得にもならない戦いだしな」

「ですよねー」



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