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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
172/336

第172話 ドーラ5、案内


 ドーラのウーマとの初対面は面白かったが、それは置いて俺たちは階段を下って12階層に出た。

「今度は洞窟じゃなくって石の部屋だ!」


 階段下の石室には罠を示す赤い点滅が何個所もあった。

「ドーラ、赤い点滅見えないか?」

「見えてるけど、何なの?」

 ドーラは女神像に祈ってはいなかったが罠を見分ける能力を授かったようだ。レメンゲンの力なのか女神さまの力なのかは判断できないがありがたい。


「赤い点滅は罠がある証拠なんだ。あの上に立てば床石が割れてその下は底の見えない落とし穴になっている」

「うわー。でもなんでわざわざ落とし穴の場所を赤く光らせてるの?」

 もっともな疑問だ。

「実は、俺たち、以前この階層で見つけた女神像に祈ったんだ。そしたら罠の位置が赤く点滅して見えるようになったんだよ。だから本来罠の位置は見えないんだ。

 ドーラは女神像に祈っていないけれど俺たちの仲間ということでその力が備わったんだろう」

「そうなんだ」

「そうなんだよ」


「それじゃあドーラに俺たちの最後の仲間のリンガレングを会わせよう。この前話していたクモのカラクリだ。見た目はどう見てもモンスターだから他のダンジョンワーカーの目に触れないところで外に出している」

 そう言ってリンガレングをキューブから出してやった。

「うわっ!」

「クモなんだけど、俺たちの中で最強だ。ペラでも相手にならないんじゃないか」

「そうなの?」

「そうなんだよ」


「それじゃあ、俺が先頭でリンガレングがその次。あとは今まで通りでいこう。

 リンガレングは俺の通った後をちゃんと歩いて罠を踏み抜かないように」

『リンガー!』

「そのリンガーってなんだ?」

『了解という意味です。景気づけの一種と思ってください』

 どこかの兵隊さんはレンジャー! とか言ってたような気がするがまさか真似したってことはないよな? 幸いかどうか知らないが、リンガレングの言葉は俺にしか聞こえていないからどうでもいいけど。


 13階層への階段目指して歩いて行き、まずは目の前の扉の前で「3、2、1、(収納)」と声をかけて扉を収納した。そして、その先へどんどん歩いて行った。

 後ろの方から「扉が無くなった!?」とかドーラの声が聞こえてきたが、何も言わず歩き続けた。


 階段下からそれほど歩くことなく女神像のあった部屋にたどり着いた。

 部屋といっても正面の壁がなくなっているので大広間の入り口といった感じで、祭壇はあったもののやはり女神像はなかった。

「その先が13階層への階段なんだけど、今度の階段は300段あるから気を付けてな」

 ドーラに注意だけはしておいた。

「ホントに300段もあるの?」

「あるんだ。それじゃあ下りていくからな」

「うん」


 ドーラも問題なく300段を下り切った。

 そこですぐにウーマをキューブから出して全員で乗り込んだ。


 先にみんなに食堂の椅子に座っていてもらい俺はウーマに行き先の指示をしておいた。

 行き先は赤い階段。今回は大空洞を斜めに横切ってまっすぐ赤い階段下まで行くつもりだ。距離にして約630キロ。時間にして21時間。明日の9時から10時あたりに到着するハズだ。

 

 ウーマに指示を出し終えた俺は、リンガレングを前方警戒のためウーマの前方スリット前に配置して食堂のテーブルに向かった。

 食堂のテーブルは大きさ的には6人掛けのものだが、椅子は4脚しか置いていない。俺は今回新しく用意した椅子をキューブから取り出しそれをテーブルの空いたところに突っ込んでおいた。

「それじゃあ、昼の用意をしよう。

 パンとスープと、あとは軽いものでソーセージと温野菜くらいにしようか」

「はーい」「「はい」」「……」

「ペラはカトラリーを用意してくれ」

「はい」


 ペラがカトラリーをテーブルに用意している間俺は台所に立って大鍋から深皿にスープをよそっていった。スープはエリカとケイちゃんがテーブルに運んでくれた。

 その後平皿にソーセージと温野菜を盛りつけていき、皿の上にケチャップを乗っけて料理はできあがり。できた料理はみんなでテーブルに運んでくれた。

 最後に俺がバスケットにスライスしたパンを盛ってテーブルに運んだ。


「「いただきます」」「えっ? いただきます?」

「ここだと『いただきます』と言って食べてるんだ。ここもいちおうダンジョンの中だし、ダンジョンの中で酒を飲むわけにいかないから『かんぱい』の代わりのようなものだ」

 新参者に俺が懇切丁寧に説明してやった。


 ドーラがスープを一口、口に入れて、

「スープもおいしい。これどうしたの?」と、驚いた声を上げた。

「エドが作ったのよ。最初料理なんかしたことないって言ってたんだけど、どんどん料理がうまくなったのよ」

「料理ってそんなに簡単にうまくなるものなのかな?」

「それがなったんだよ」

「これが本当にエドが作ったのだとしたら、うまくなったってことだものね」

「そうなんだよ」

 ここでレメンゲンの話をしてもよかったが、詳しく話すと場が暗くなるのでドーラには不思議なことがあるものだ。くらいに考えておいてもらえばいいや。


「ソーセージもおいしい!」

「それは俺が作ったわけじゃなくってサクラダで買ってきたものだけどな」

「そうなんだ。でもこの赤いのを付けて食べたらおいしいよ」

「その赤いのは、このウーマの中にあったんだ」

「ウーマの中に?」

「そう。実はこのウーマの中には食料庫と雑貨倉庫があるんだよ。食事が終わったら見せてやるよ」

「そうなんだ」

「そうなんだよ」


 何がおかしいのか俺とドーラの会話を聞いているエリカとケイちゃんが笑っている。


「フフフ。だけど、ウーマの中は落ち着くわね」

「フフ。そうですね」

「エドの料理はここでなくても食べられるけど、ここで食べた方がおいしく感じるわ」

「わたしもです」


 昼食を終えいったん食器類を流しに下げ、デザートを配った。今日はアップルパイだ。

 お茶を淹れてアップルパイを小皿にとってテーブルに置いていく。

「おいしいー!」

 ドーラのうれしそうな笑顔を見られて兄さんもうれしいぞ。


 デザートを食べ終わったところで本格的に後片付けをした。といっても流しで軽く水洗いした皿などを食洗器に入れるだけで、あとはできあがりを食器棚に片付けるだけだ。


 そうなんだけど、俺が軽く洗った食器を食洗器ひきだしに入れていたら、

「エド、ちゃんと洗わず片付けてどうするの!」と、ドーラに叱られてしまった。

「ドーラ。こうやってここに入れて引き出しを閉めると、中のものが洗われてきれいになるんだ。そんなに時間がかからないからでき上ったら見せてやるよ」


 引き出しを閉めたらシャワー音とウニウニ音が響いてきた。

「何だか音がしてるよ!」

「いま洗っているんだ。10分くらいこれが続いて、最後に数分乾かしてできあがりだ」


 10分間見ていても仕方ないのでドーラを案内してまずは寝室、風呂場、そして洗面所を見せてやった。

 寝室はオーソドックスなので大したことはなかったがお風呂には驚いていた。

 ついでだったので、ドーラが持ってきたリュックの中に入っていた汚れ物を洗剤と一緒に洗濯機の中に突っ込んでおいた。4、50分もすれば洗濯が終わって乾燥も終わっているだろう。

「それほんとなの?」

「ホントだから」

「夕食前にエリカたちが風呂に入るから一緒に入れよ」

「う、うん」


「ねえ、エド」

「なに?」

「外から見た大きさと中の広さが全然違うような気がするんだけど?」

「俺も不思議なんだが、そういうものらしい」

「そうなんだ」

「そうなんだよ」


 台所に帰ってきたら食洗器からドライヤーらしき音が鳴っていてすぐにその音は鳴りやんだ。

 引き出しを開けたら温かい空気と一緒にピカピカになった食器が現れた。

「スゴイ!」

「だろ?」


 洗い終わった食器はみんなで手分けして食器棚にしまった。


「ねえ、エド、ちょっと気になったんだけど、このウーマって今動いてない?」

「動いてるぞ。リンガレングのいるところが前の方なんだけど、前の方にスリットが見えるだろ? のぞいてみろよ」

 俺に言われてドーラが恐る恐るリンガレングの隣りに立ってスリット越しに前の方を見た。

「ウーマ、スゴイ速さで進んでるよ。木なんかお構いなしになぎ倒してるし」

 そういえばスリットからは雨は降り込んでこないし、木をなぎ倒しても音はしないんだよな。不思議なことだ。



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