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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
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第168話 ドーラ、装備と訓練


 ミュラーさんの工房でドーラは肩丈くらいの木製の杖を買った。ドーラは今まで杖を扱ったことはない全くの素人だろうし、もちろん俺も杖を扱ったことなどない素人だ。教本なんてない世界だけど、まあ何とかなるだろう。


「そういえばペラ」

「はい」

「ペラは武術的なものでなにか得意なものはあるのか?」

「殴る、蹴る。です」

「投げるのもすごいじゃないか?」

「アレは狙ったところに投げるだけですから。狙うところを決めるのに殴る蹴るを応用したまでです」

「なるほど。となると、もしペラがさっきドーラが買った杖を扱うとすれば、その殴る蹴るを応用して扱うことができるのか?」

「もちろんです。扱うという意味ではほとんどの武器は扱えます」

「なら、ドーラの訓練の相手が務まるんじゃないか?」

「大丈夫です」

「それならもう一本杖を買っとけばよかったな。帰りにミュラーさんのところにもう一度寄ってもう一本買っておこう。予備にもなるし」


「わたしがペラさんと訓練するの?」

「やってた方だ良いだろ?」

「ケガすることってない?」

「俺だって父さんと何年も訓練して、痛い目には何度もあったけど一度もケガなんかしなかったし、父さんには悪いけどおそらくペラの方が父さんより強いから安心しろ」

「少しは痛いんだね?」

「ある程度は痛くないと訓練にならないだろう。それにもしケガをしてもいい薬があるから安心しろ」

「エドが訓練を見てくれているの」

「そうだな。とにかく自分のためだ」

「うん。分かった」


 ウーマでの移動中は暇なので、ウーマの中で訓練できれば最高なんだが、さすがに棒を振り回すような訓練はできないものなー。家の庭で訓練すれば十分か。体力については俺たちと一緒に歩くだけで十二分の訓練になるから問題ないし。


 俺たちがミュラーさんの工房を出て次に向かったのはハインツ防具店。

 店の中に入るといつもの女性店員が接客してくれた。

 ドーラがモゴモゴしているので、ちょっと過保護だったが俺がドーラに代わってドーラにあう防具を見繕ってくれと頼んでしまった。


「まだ体が小さいですから、少し大きめにしますか?」

「ドーラ、どうする?」

「じゃあ、それでお願いします」

「分かりました。胸当てとヘルメットをお持ちします。手袋とブーツはピッタリの方がいいでしょうから大きさを試してお選びください」

「は、はい」

 たしかにドーラは、村の雑貨屋でしか買い物したことのないような子どもだし、防具の一そろいとなると結構な値段だ。少しぐらいビビるのは仕方がない。



 店の人が二往復して胸当てとヘルメットを3つずつ持ってきてくれた。ケイちゃんとペラが手伝ってその場で試着したところ、どれもゆるゆるでもなかった。

 3つの中から、ドーラが一つずつ選んだ。


 その後手袋コーナー、ブーツコーナーに連れていかれてそこで手にはめ、足にはいて手袋とブーツをドーラが選んだ。


「胴着とズボンはどうします?」

「は、はい。それもお願いします」

「ズボンは革だから洗濯しないけど、胴着は洗濯するから2枚買ったほうがいいぞ」

「うん」


 ドーラは胴着とズボンもその場(***)で試着して胴着は2枚買うことにした。

 胴着もズボンもやや大きかったがそれ以上小さいものがなかった。

 ドーラの場合、杖なので剣帯に下げるものは何もないのだが最後にベルトも兼ねて剣帯を一つ買わせた。

 商品をまとめてもらって代金を精算したところドーラが支払ったのは金貨2枚と銀貨数枚だった。杖も高いものではなかったので結構安く済んだような。


 荷物は買い物用のリュックに詰めて、4人そろって店を出た。



「よーし。これでドーラも名実ともにダンジョンワーカーだ!」

「よしてよ。道で大きな声を上げないでよ。恥ずかしいよ」


 その後ミュラーさんの工房に引き返して訓練用の杖を1本買った。これは俺が代金を支払った。


 大通りまで戻ったところで。

「ドーラちゃんのダンジョンワーカーの装備は整ったから次はドーラちゃんの普段着を見にいきましょう」

「それはいい。ケイちゃんと一緒に行って選んでくればいい。そっちはドーラがダンジョンワーカーに成ったお祝いに俺がお金を出すから。ドーラ、遠慮しなくていいから」

「えー。そんなのいいよ。エドに貸してもらったお金がまだたくさんあるんだし」

「いいから、いいから」

 そんな感じで、ドーラの普段着を買いに行くことになった。



 普段の俺なら女ものの店には入らないが、今回俺はスポンサーなのでケイちゃんに先導され、俺も店の中に入っていった。


 田舎だと普段着などは基本的には古着になるが、こういった都会のちゃんとした店では古着以外に、吊るしの既製服も売っているし、オーダーメイドもやっている。サクラダには人がたくさんいいる上、金巡りもいい。と、いうことなのだろう。


 店に入る前渋っていたドーラだが、店に入ったとたんキャーッとか奇声を上げて売り場に走っていった。俺には服に対する執着は全くないのでそういった気持ちは理解できないのだが、これほどあからさまだと何だかほほえましく感じる。


 それで結局普段着と称する余所行きを3着ほど買ったようだ。この世界の衣料品はそれなりに高価なのでそれなりの値段だったが、現状使うあてもなくお金を大量にため込んでいる俺からするともちろんどうということもない金額だった。金銭感覚が鈍くなっている自覚はある。


 買い物が終わった俺たちは店を出て家に帰っていった。荷物はケイちゃんに借りたリュックに入れてリュックごとキューブにしまっている。



 家に帰ってドーラの部屋に荷物を片付けた後お茶にした。

 服も買ったことだし、お茶とお菓子でドーラの機嫌は非常にいい。

「そういえば、もう一人メンバーがいるんだよね?」

「うん。エリカ・ハウゼンってオストリンデンの商家の娘だ。俺と同い年で双剣の使い手だ」

「そうなんだ。やっぱり相当強いの?」

「スピードだと俺もかなわない。俺は一撃は重いけど、エリカは手数で押すって感じだ」

「うわっ。エリカって呼び捨てなんだ!」

「最初はエリカさんだったんだけど、本人がそう呼べって言ってたような?」

「ふーん。いいけど。

 それで、ケイさんはどんな武器を使うんですか?」

「わたしは弓なの。ダンジョンの中だから短弓を使っているわ」

「弓もカッコいいなー。わたし杖だけど」

「あのな、ドーラ。剣とか杖なんかは誰でも振りまわしてればたいていは相手にあたるが、矢を的に当てるには熟練の技術が必要なんだぞ。

 初心者のドーラが弓矢で役立つには少なくとも5年はかかるんじゃないか? とにかく今は真面目に杖の訓練をしろ」

 レメンゲン効果で、数カ月でものになるかもしれないが、説教なんだからこれくらい言っておいた方がいいだろう。

「はーい」


「お茶が終わった夕食まで杖の訓練だ」

「えーー!」

「ペラもそのつもりでな」

「はい。マスター」

「エドってペラさんのマスターなの? なんでー?」

「何でもだ。気にするな」

「気になるよー」

「そのうち話してやるよ」


 お茶の片づけを終えて、ドーラは防具を着けに部屋に帰っていった。その後を手伝うと言ってケイちゃんがついていった。

 ケイちゃんも面倒見がいいというか過保護だな。


 5分もかからず防具を身に着け、杖を持ったドーラがケイちゃんと一緒に下りてきた。

 ペラにキューブから杖を渡し、みんな揃って台所から裏庭に出た。

 そこでドーラの訓練だ。ビシビシ行くぞ。ペラがな。


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