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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
167/336

第167話 サクラダ到着


 ドーラを連れてロジナ村を出て、3日目の昼過ぎにサクラダに到着した。

 駅舎で乗合馬車を降りた俺とドーラは、大通りを歩き家に向かった。


「こんなにたくさん人が歩いてる!」


 ドーラは田舎者丸出しでキョロキョロして歩くので、迷子にはならないと思うが通行人とぶつかるかもしれないので俺が手をつないでやった。


「エド、ちょっと恥ずかしいんだけど」


 まだ小学校6年生くらいの小娘のくせに一丁前のことを言うもんだ。俺もまだ中学3年くらいなんだけどな。

「キョロキョロして前を向いて歩いていないから、危なっかしいんだよ」

「キョロキョロなんてしてないもん」

 ご当地キャラ『ないもん』が出たよ。『ないもん』ってどこのご当地キャラだったか? そもそもそんなのいたっけ?


 しばらく大通りを歩いていたらダンジョンギルドが見えてきた。

「ほら、向うに見えてきたのがダンジョンギルドの建物だ」

「ウワー、大きいー」

「家に帰ったらドーラを仲間に紹介するからな。その後ダンジョンギルドに行って登録だ」

「うん」

「その前に、昼食だった。

 その辺の店で何か食べよう」


 ちょうど食堂があったので中に入って、空いていた6人席の端にドーラと向かい合って座った。

 昼の時間たいていの店では定食しか出さないので、定食を二人分と薄めたブドウ酒を二人分注文して代金を払った。




 待つことなく運ばれてきた定食と飲み物で食事を始めたらドーラがあらたまって。

「エドに今まで全部お金を払ってもらっていたけれど、後で返すからいくら使ったか教えて」

 ほー。ドーラのヤツずいぶん大人になったようだ。

「ドーラ。その気持ちは大切だが、お金のことは気にしなくてだいじょうぶだ。でもまあ、その辺りはしっかりしてたほうがいいか。

 そうだなー、俺はサクラダに出る時父さんに金貨5枚借りたんだ」

「うん」

「俺は父さんに防具を作ってもらっていたから装備として必要だったのは剣ぐらいだったけど、ドーラは防具が必要だから俺が父さんの代わりにドーラに金貨10枚あとで貸してやるよ。それで装備を揃えてみろ。そして将来俺に返してくれ。今までの分は考えなくていいからな」

「分かった」

 そういえば、ドーラの給料はどうしようか。当面ドーラは役に立たないわけだから俺が給与の支払い者だな。少し役に立つようになったら、チームの財布からの支払に切り替えてもいいだろう。そこらはエリカたちと要相談だ。


 食べ終わったところで店を出て、大通りをダンジョンギルドの前で左に曲がって家に向かった。


「ここだ」

「うわー。お屋敷じゃない!」

「借家だけどな」


 門を入って玄関前で「ただいまー」と言って扉を開けたらカギはかかってなく、中からケイちゃんがお帰りなさいと言ってペラを連れて現れた。

 留守番のケイちゃんがカギを持っているのでケイちゃんが留守にしていたら入れなかった。

「ケイちゃん、留守番ありがとう。これが俺の妹のドーラだ」

「ドーラ・ライネッケです。えーと?」

「ケイ・ウィステリアよ。よろしくドーラさん」

「わたしのことはドーラって呼び捨てにしてください」

「じゃあドーラちゃんね」

「はい」


「ケイちゃんは、見ての通りエルフと人間の混血なんだ」

「見ての通りって?」

「耳が横に長いだろ?」

「どこが?」

「だって横に長いじゃないか?」

「あれ? さっきは普通だったのに。あれ? 今は横に長い? あれ?」

「なに訳の分からないこと言ってるんだ。

 ドーラの部屋は決めてあるからまずは部屋に荷物を置いてこよう」

「ちょっと待ってよ。こっちの人に自己紹介してないよ」

「おっと、ゴメン。こっちはペラ」

「ドライゼン帝国陸軍省兵器局開発、陸戦兵器 ドールmk(まーく)9セラフィム。名まえはペラです」

「えっ?」

「今のは気にしなくていいから。どうみてもペラは人間に見えるんだが実は人間じゃなくってカラクリなんだ」

「エドが言ってたカラクリってペラさんのこと?」

「そう。ペラは俺たちの貴重な戦力なんだ」

「そうなんだ」

「そうなんだよ。

 あいさつが終わったところで、ドーラの部屋に行こう」

「うん」



 なぜかみんな揃って2階に上がってドーラのために用意した部屋に入っていった。

 ドーラの部屋はちょっと前までペラが使っていた南西の角部屋でペラはその向かいの部屋に移っている。

「ここがお前の部屋だ。自由に使ってくれ」

「うん」

 ドーラの荷物の入ったリュックをキューブから取り出して床に置いた。

「買い物もしなくちゃいけないからドーラ、荷物をリュックから出してタンスに入れておいてくれ」

「買い物用のリュックならわたしのがありますから、それでいいでしょう。

 ちょっと待っててください」

 ケイちゃんが部屋を出てリュックを持って戻ってきた。

「ケイちゃんありがとう」「ありがとうございます」

「どういたしまして」


「それじゃあ、ダンジョンギルドに行って登録してしまおうか」

「そうですね」「うん」

 ケイちゃんとペラに先に部屋を出てもらって、ドーラに金貨10枚入れた小袋を渡しておいた。


 玄関前で待っていてくれていた二人に合流して、家の戸締りをして4人揃ってダンジョンギルドに歩いて行った。


「ここがダンジョンギルドだ。正面に渦が見えるだろ? あそこを潜るとその先がダンジョンなんだ」

「ふーん。ちょっと怖いね」

「慣れだから」

「うん」


「それじゃあ受付カウンターに行って登録してしまおう」


 ドーラを連れて受付カウンターに回り、小銀貨を1枚カウンターの上に置いてエルマンさんにドーラのギルド登録を頼んだ。

「エドモンド・ライネッケの妹のドーラ・ライネッケです。登録お願いします」

「分かりました。

 それではドーラさん。生年月日を教えてください」

「えーと、生まれは349年3月8日です」

「ダンジョンワーカー的には随分若いですけど、サクラダの星の所属でしょうから問題ないでしょう」

 まだドーラは11歳だったのか。それより俺たちが無名だったら登録できなかった可能性もあったのか。

「お名まえのつづりはこれでよろしいですか?」

 エルマンさんがドーラの名まえと生年月日を書いた紙をドーラに見せた。

「はい。大丈夫です」

「ギルドの会員証を兼ねたタグを作りますので少々お待ちください」

 エルマンさんはその紙を持って奥に行き戻ってきた。

「規則ですのでタグができるまでドーラさんに当ギルドの説明をいたします」


「……。以上が当ギルドの規則です。

 当ギルドの施設についてはいいですね。

 寮の方はどうします?」

「それはいいです」

「了解しました。ドーラさんはサクラダの星のメンバーですからギルドの食堂での朝、夕の定食は無料ということにしておきます」

「ありがとうございます」

 ここでもサクラダの星の名が利いてしまった!

 ダンジョンワーカー(どうぎょうしゃ)にはほとんど注目されていない俺たちだが誇らしいぞ。


 そうこうしていたらタグができ上ってきて渡されたので礼を言ってカウンターを離れた。

「これでドーラもダンジョンワーカーだ」

「うん。サクラダの星ってすごいんだね」

「そうなんだよ」


「それじゃあドーラの装備を見に行こうか。まずは武器からだ」


 俺たちはダンジョンギルドのホールから表通りに出て、それからギルドの建物をぐるっと回って工房街に向かった。


 まずはミュラーさんの武器工房。

「こんな小さな子をダンジョンワーカーにするのか?」

 ミューラーさんの第一声がこれだった。

「一応俺たちが守るので」

「それならいいかもしれないが、まだ体もできていないわけだからなー。それでどういった武器が望みなんだ?」

「ある程度自分の身が守れて、重くない物ってありますか?」

「自分の身を守れるかどうかは技量次第だが、そうだなー。金物だとどうしてもそれなりに重いからいっそのこと杖はどうだ? 長いのから短いのまであるから、ちょうどいいんじゃないか?」


 ということで、杖を見せてもらうことにした。

 並んでいた杖は、杖というより棒だった。


 ドーラは保護者おれたちが横で見ている中、一本一本杖を手に取って見て、結局、立ててみて自分の肩先あたりの長さの杖を選んだ。

 俺から見れば少し細く見えたが、ドーラの手には太くもなく、細くもなく、ちょうど良さそうな太さの杖だった。

 今のドーラにはもちろん無理だろうが、使い手が使えばこの杖でも十分殺傷能力はある。俺たちと一緒に歩いていれば、まちがいなくドーラも早い段階で使い手(***)になるだろう。



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