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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
157/336

第157話 西の赤2。東の青


 赤い部屋を抜けた俺たちは、赤い点滅を避けながら11階層への階段部屋を目指して移動したが、間取り(***)は今までの2カ所の12階層とほとんど同じ作りのようで簡単に階段部屋にたどり着けた。時刻はまだ午前4時半だ。


 11階層に出る前にリンガレングを放って泉を凍らせた。

 階段から氷で囲まれた小島に出たら、ちゃんとポーションが詰まった宝箱があったのでありがたくいただいておいた。


 黒スライムがいたのかどうかは不明だったのでリンガレングに聞いたところ、いたそうだ。

 リンガレングを使って凍らせた後蒸発させてしまえば後腐れないが、そうすると長時間高温になってしまうのでそれは止めておいた。俺たちがここに戻ってくるまでに氷がとけていないことを祈るしかない。何かあれば少し嫌だがポーションもあるから大したことではない。


 氷上を横断したところでリンガレングをキューブに収納し、代わりにランタンを出した。

ランタンを点灯してからリュックに下げておき、上り階段を目指して歩き始めた。


 階段前のモンスターに出くわさないのは納得できるが、一度もダンジョンワーカーにも出会うことなく、一度小休止を挟み午前9時半ごろ予想通り前方に渦が見えてきた。始動が早かった分ずいぶん早く渦に到着できた。


 何か宗教的な休業日なのだろうか? とか考えたのだが、ここが未発見のダンジョンと考える方が合理的だろう。いずれにせよ渦をくぐれば見当は付く。


 さて、渦の先はどうなっているのか?


 そう思って、渦を潜り抜けようといつも通り何も考えず渦を抜けようとしたら思い切りぶつかってしまった。予期せぬ衝突は思った以上の衝撃があった。


「エド、どうしたの?」

「この渦、抜けられない」

「そんな」

 俺のすぐ後ろを歩いていたエリカが渦に手を伸ばしたがやはり渦の先に手は届かないようだ。

「つるつるの壁だわ」

 ケイちゃんも触ってみたところ、同じだったようだ。


「どうする?」

「どうするもこうするも。渦があっても抜けられないわけだし、帰るしかないんじゃない?」

「そうだよな。ダンジョンワーカーに出会わなかったから未発見のダンジョンなのかと思ったけれど、渦が通行止めになるとは知らなかった」

「わたしだって知らないわよ」

「わたしもです」


「マスター、わたしが少し調べてみます」

「ペラ、何か気付いたのか?」

「いえ、そうではないんですが。危ないのでみなさんは少し渦から離れてください」

 調べることがどうして危ないのか分からなかったのだが、ペラの言葉で俺たちは少し下がってペラが何をするのか見ていた。そしたらペラがいきなりこぶしを固めて渦に殴りつけた。

 音はほとんどしなかったが、ペラの右拳が潰れてしまった。


「ペラ、大丈夫か?」

「すぐに修復できますから」

 確かに潰れたペラの拳が見る見るうちに治っていく。この場合直っていく?

「便利だな」

「はい。わたしの体は生体金属製なので、この程度の破損は簡単に修復可能です」


 この世界の一般人では理解できそうにないペラの説明を聞いたエリカはボーっとした顔でペラを見ていた。ケイちゃんは逆に普通の顔をしていた。


「ペラが何ともないならよかったけれど、それで、ペラ。なにか分かったのか?」

「いいえ、破壊できないということだけ分かりました」

「ペラ、破壊できたらできたで困るからこれからはそういうのはやめてくれ」

「はい」


「それじゃあ、帰るしかないな」

「そうね」

「仕方ありません」


「それで13階層に戻ったら、残った東の青い階段を探す?」

「残しておきたくはないけれど、あまり面白そうじゃないわよね」

「それなら、ここの12階層で少し稼ぎますか?」

「そうね。誰にも荒らされていないわけだから、宝箱があるはずだし。

 エド。地図の方は大丈夫なの?」

「ちょっと待って。確かめてみる」

 リュックに入れていた自動地図を取り出して広げたところちゃんと地図ができていた。

「大丈夫。迷子にはならない」

「それじゃあ、12階層に下りてそこである程度稼ぎましょう」


 俺たちはそこから6時間ほどかけて12階層に到着した。時刻は午後3時半。

「ここで久しぶりに1泊しようか? リンガレングもいるから不寝番の必要はないし」

「そうね。たまにはいいかも」

「そうですね」


 ということで、そこから俺たちは12階層の探索を始めた。

 面倒だったのでリンガレングを先頭にして、俺が扉を収納したらリンガレングが突撃する作戦だ。

 ケイちゃんの弓矢でも簡単に片が付いた石像が相手なので、リンガレングは無双していき、どんどん宝箱を回収できた。

 宝箱の中身はサクラダ側の12階層と同じで例の大型金貨とポーションだけだった。


 時刻にして午後7時。

 適当な部屋で野営をすることとし、リンガレングを見張りに立てた。

 ペラには毛布がなかったので、俺の毛布を1枚貸してやった。

 テーブルはウーマの中なので、床の上にに作り置きの料理を並べ、みんなで車座になって食べ始めた。

「床に座って食べるのも久しぶりよね」

「そうだけど、椅子に座って食べる方が食べやすいよな」

 贅沢は敵ではあるが、贅沢に慣れてしまうとどうも不自由を感じる。


 この3時間でもかなりの金貨とポーションを見つけている。ポーションはまだしも、俺たち、もう使いようのないほどの大金持ちなんだけど何にお金を使えばいいんだろう?


 食後のデザートとして久しぶりに生のブドウを食べ、後片付けをした俺たち4人揃って早々に毛布に横になった。


 翌朝4時前に目が覚め、朝の支度をしていたら、みんな目覚めた。


 朝食を終えて装備を整え、野営地とした部屋を出発したのが午前5時。2時間ほどかけて13階層への階段部屋にたどり着いた。


 300段の階段を下りた俺たちはキューブから出したウーマに乗り込んだ。


「それで結局どうする? ここまできたんだからやっぱり横断して青い階段を目指してみる?」

「そうねー。ここまできた以上確かめましょう。ウーマに乗っていれば到着するわけだし」

「それはそうだけどな。じゃあ、ケイちゃんもそれでいい?」

「はい」


 こっち方向からの13階層の横断はまずまっすぐ山並みまで進みそこから半円を描くように山並み沿いに進んで、そこから直角に曲がって大空洞の壁に向けて進むことになる。距離にして2000キロ。前回横断した時と同じで丸2日と18時間かかる。今から出発して到着は2日後の23時から24時になる。

 大したことないと言えば大したことはない。


 ウーマに一応経路を説明したところで。

「しゅっぱーつ、しんこー!」


「エド、また何やりだしたの?」

「いや、景気づけに」

「エドの勝手だから全然いいけどね。ここにはわたしたちしかいないし」

 俺たち以外がいる前でしてはいけないような言い草だな。言われなくても俺も他人ひとさまの前ではしませんよ。




 今回は平原の中を移動した関係で、ペラが8匹のワイバーンを四角手裏剣でたおしている。もちろん死骸は回収したので、キューブにワイバーンは全部で26匹入っている。2匹ずつ卸しても13日かかるのでなかなかだ。


 白い階段下から出発し2日目の真夜中23時。真夜中と言っても日が沈むわけではないので外は明るい。夜食?のバナナを食べながら見張り役のリンガレングの横に立ってスリット越しに前方を眺めていたら、正面に階段の入り口が見えてきた。階段の色は青ではなく緑だったが広義には青と言ってもいいだろう。生前の信号機も青と言っていたがアレは緑だったし。


 エリカたち3人は寝ているのかどうかは分からないが、ウーマが停止したら寝室から出て俺のところまでやってきた。

 エリカとケイちゃんはガウンのようなものを羽織っていた。おそらく下は下着なのだろう。それもヨルマン領で手に入るようなカボチャパンツなんかではなく、ウーマの中にあったそれっぽい下着だ。だから何というわけではない。ペラは普段着を着ていた。


「やっぱり階段があったわね。緑に見えるけど、青と言えないわけじゃないでしょ」

「今の時刻は夜の11時くらいのはずだから、階段を上るのは明日の朝ということにしよう」

「そうね」


 そう言うことで、寝室に戻った俺たちは各自ベッドにもぐりこんだ。潜り込む前エリカたちがガウンを取ったのだが普段着を着ているのがちらりと目に入った。目に入れなければよかった。




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