表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
156/336

第156話 謎解き2。西の赤


 長期遠征帰りの俺たちは例のごとく雄鶏亭で反省会をしていた。

 そこで、今回謎として残ったモニュメントの四つの面に書かれていた呪文の話になった。


『われを称え唱えよ。黒き常闇とこやみの女神サルム・サメ』

『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』

『われを称え唱えよ。白き太陽の神ウド・シャマシュ』

『われを称え唱えよ。赤き黄昏の神アラファト・ネファル』


 夜明けは東、黄昏は西、太陽は南、残った常闇は北を指しているのではというところまで来た。

「東西南北はいいとして、それが何を意味すると思う?」

 エリカの言うようにそこが問題だよな。

「あのう、300段の階段の色と祭壇らしき台の色ですが、サクラダ側は黒、ベルハイム側は白でした。何か関連がないでしょうか?」と、ここでペラから鋭い指摘が出た。

「うん。黒が北、白が南。東に青があって、西に赤がある。となると、13階層には後2カ所階段があるかもしれない」

「あそこで唱えたのは、何かが起こるとかじゃなくってこれを教えるためだったってことなのかしら?」

「これが当たっていたらそうなんだろうな。ケイちゃんとペラのおかげだ」

「当たっていたらいいですね」


「次回は、まずは西の赤を探してみる。でいいかな?」

「うん。それでいいけど何で西なの?」

「13階層ではいつも左回りだったから、今回も左回りで行こうかと思っただけで深い意味はない。だから東の青でも全然問題ないよ」

「別にわたしもどちらでもいいから。何だかワクワクするね」

「そうですね」「はい」


「明日は今日の代金をもらう用事があるだけだけど、そのまま13階層に潜る?」

「うん。行きましょうよ」「行きましょう」「はい」


 おそらく今回の推理は当たっていると俺の勘が告げている。何だかスッキリした。

 謎解きのあとは、雑談しながらたらふく飲み食いしてその日の反省会はお開きになった。




 そして翌朝。


 朝食を雄鶏亭で摂った俺たちは、買い取りカウンターのゴルトマンさんのところに行き昨日のワイバーンの代金をもらった。

 今回も1匹金貨100枚だったらしく、2匹分で金貨200枚となった。毎度あり!

 チームの財布の中が重くなり過ぎていたので、今回はチームの財布から金貨10枚を出し一人頭金貨70枚とした。ここから家にいったん帰るのは面倒だったので、金貨の受け渡しは13階層に下りてウーマの中で、ということにした。


 渦を抜けて俺たちはまずは11階層を目指して歩いていく。

 11階層の泉の前でウーマをキューブから出して乗り込み、泉を渡り、小島でウーマから降りてキューブからリンガレングを出し代わりにウーマをしまっておいた。時刻は正午だったが、前回と同じく13階層まで下りてしまいウーマの中で昼食を摂ろうということになった。


 12階層を通り、黒っぽい階段を下って13階層に出た。キューブから出したウーマにさっそく乗り込み、まずはウーマに指示を出しておいた。

 今回は、階段を見逃さないよう13階層の壁沿いを進んでいくつもりだ。想定通り13階層を4分の1周したところに階段があるとすれば、移動距離は1170キロ。39時間だ。1日と15時間。今の時刻が12時半少し前。到着は明後日の午前3時ごろになる。


 ウーマが壁沿いを左回りに進み始めたところでリンガレングに警戒を任せた俺たちは装備を緩め昼食を摂った。

 料理は作り置きしていたスープと、ハムと葉野菜のサンドだ。サンドにはマヨネーズを塗ってある。

「やっぱり、ウーマの中が一番よね」

「そうですね」

「エドの料理が最高だものね」

「ほんとにその通りですね」

「雄鶏亭の料理がマズいってわけじゃないけど、お酒でごまかしているところもあるしね」

「ここだとお酒を飲んでいないから、本当の味がわかりますからね」


 ほめられると伸びるというのは、ほめられるとやる気が湧いて更なる努力が苦にならないということではないだろうか?

 魚料理は下ごしらえが面倒だけど、やはり作ってみようとか思っちゃうもの。夕方はキンメダイ風の赤魚の煮つけで決まりだな。あとはご飯か。ミソがあれば完全に和食になるのだが、スープで我慢だ。


 早いところ食料庫にミソが湧いてくれないかなー。




 ウーマが左回りで13階層の壁沿いを移動し始めて丸1日経った。ワイバーンもどこにも見えないし、この間変わったところは何もなかった。


 そして深夜を過ぎ午前3時ごろ。ペラがベッドで寝ていた俺を起こしてくれた。

「マスター、ウーマが階段下で停止したようです」

「ペラ、ありがとう」

 すぐに覚醒した俺はペラに礼を言って起き上がった。

 俺はエリカたちを起こさないように寝室を出て服を着てそれから朝の支度を始めた。


 なるべく音は経てないようにしているのだが、気配は完全に隠せないので、やはりエリカたちを起こしてしまった。寝室から二人が着替える音が聞こえてきた。

 そして朝の準備を終えた二人が寝室から出てきた。

「おはよう」

「「おはよう」」

「二人ともまだ寝ててもよかったのに」

「ウーマに乗っての移動中って何もすることがないから、今まで以上に疲れないのよねー。だからいつ起きても問題ないの」

「そう考えると、そんなに昔の話でもないのに不寝番を立てて野営してた頃が懐かしいですね」

 そう言われればそうだった。優しく肩をゆすられて耳元で名まえを呼ばれて起こされていたんだった。あの頃がすごーく懐かしい。ただ、ウーマだと、お風呂でエキスを注入できるから、それはそれで素晴らしいことだ。何であれ総合力でウーマ生活はそれまでの生活を圧倒しているのは確かだ。


 スリット越しに階段を眺めるたところ、階段が赤っぽく見える。諸々の推理は正解だったようだ。おそらくここの反対側には青い階段があるのだろう。


「朝食はキューブから出すだけだから、もう食べる?」

「そうね。少しお腹がもたれてはいるけれど、階段を上れば落ち着くでしょうし」

「そうしましょう」


「じゃあ、二人が顔を洗ったりしている間にペラと用意しておくよ」

「うん」「ありがとう」


「それじゃあペラはテーブルにカトラリーを並べてくれるか?」

「はい」


 俺の方は作り置きしていた料理を並べていった。今日はハムステーキに温野菜。スープとトーストだ。トーストはスライスした塊パンをフライパンで焼いて焦げ目をつけたものだ。バターを塗って食べるとすごくおいしいはず。


「「いただきます」」


 ……。


 朝食のあと、お茶を用意して、砂糖漬けにしたリンゴを出した。これも移動中時間があったので試しに作ってみたものだ。リンゴの酸っぱさが抑えられ、砂糖漬けだけど甘みもそれほどではなく結構おいしいものができ上った。


 朝食の後片付けを終え、各自装備を整えた俺たちはウーマを降り、それからウーマをキューブにしまってさっそく階段を上った。

 階段を上ればどうせ赤い巨人がいるはずなので、リンガレングを先にやって俺たちが後に続いた。

 階段を上り切る少し前にリンガレングが走り出し、ガシャゴショと階段の先から音が聞こえ、最後に重たいものが床に落っこちたような振動と音が伝わってきた。終わったらしい。


 階段を上がって出来上がりを見たら、床の上に銅色の部品がバラバラになって転がっていた。

 今回は銅の巨人だったようだ。銅はありがたくキューブに回収しておいた。


 巨人のいた先の壁を調べたら、ちゃんとバトン用の穴が見つかり、そこにバトンを差し込んだら正面の壁がゆっくり沈んでその先の部屋が現れた。

 思った通りの赤い部屋で、手前に赤い祭壇らしき台があった。


 台の上に像はなく、バトン用の穴があるだけだったのは、ベルハイムに続く白い部屋の時と同じだ。



宣伝:近未来宇宙SF『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』 (全101話、26万5千字)https://ncode.syosetu.com/n6166fw/

地球を越える大きさを持つ超巨大宇宙戦艦の艦長になった主人公が宇宙を救う話。『巻き込まれ召喚~』(無印)につづく作者の第2作目。『巻き込まれ召喚~』をテコ入れしようと思って書いてたらこっちの方が売れちゃって。なろうの宇宙SFで日間、週間、月間、四半期までは総なめしたような。

 これ書いていた時、東京オリンピックは2020年に開催されると思ってたんですよねー。物語の始まりは2022年の設定でした。『巻き込まれ召喚~』関連は大人の事情でなろうから撤退しました。わずかに『ASUCAの物語』だけ残しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ