表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
15/336

第15話 サクラダの星


 エリカがダンジョンギルドの寮?に引っ越してきたら、そのあと俺の部屋にあいさつに来るという。

 それまでだいぶ時間がありそうだったので、俺はその前に汗を流そうと桶とタオルを持って1階に下りていき裏の井戸に歩いて行った。


 手押しポンプから桶に水を入れ、タオルを浸し、良く絞ってから上半身裸になって体を拭いた。アザになっていたところはかなり色が薄れていた。


 そういえば汚れ物も溜まってきているので洗濯をそろそろしないといけない。一人住まいは思っていた以上に大変だ。洗濯屋はありそうだが、お金に余裕があるわけではないので自分で洗濯するしかない。生前?も一人住まいだったわけだが、洗濯機もあればクリーニング屋も近くにあったので楽だった。


 この世界になじむ前までは、異世界転生ってもっと華やかなイメージがあったんだけど、チートがあるわけじゃないし当事者になってみるといろいろあらも見えてきたんだよなー。

 それでも生まれ変われたことには感謝してるよ。しかもちゃんとした両親のもとに生まれ変われたんだ。これ以上の幸運を望んだらバチが当たる。でも、望むのはタダ(**)だから、俺にチートを!



 部屋に戻った俺は、洗ったタオルを物干しロープにかけ、モンスターの血の付いたボロ布とか他の洗い物を桶に入れて再度1階に下りて井戸のところまで行き今度は洗濯を始めた。

 洗剤といえば灰の上澄みをうちでは使っていたが、寮生活中の俺が使うには面倒なので水洗いだけ。元の生地からして真っ白ではないのでそれほど気にはならない。

 洗濯を終えて部屋に戻り、洗濯物を物干しロープにかけておいた。


 洗濯物が部屋の中にずらりと垂れ下がっているのでエリカが部屋にやって来た時みっともないのは承知だが背に腹は代えられないし。


 そうこうしていたら扉の外からエリカの声がした。

『エド、わたし』

「カギはかけていないから」

「お邪魔しまーす」と、言いながらエリカが部屋に入ってきた。


「結構早かったね」

「お店の人に手伝ってもらったけど、荷物もそんなになかったから」

「部屋はどこになったの?」

「わたしも3階で18号室。この部屋の斜め向かいの部屋よ」

「けっこう近い」

 そこでエリカが部屋の中をざっと見回した。


「自分で洗濯するなんて偉いじゃない」

「しないわけにもいかないからさっき下の井戸の前で洗ってきた」

「ふーん」

「もしかしてエリカは誰かに頼んだりする?」

「うん。洗濯物はまとめて店に持っていけば洗ってくれることになってるの」

「お嬢さまなんだ」

「そうなのかもしれないけれど、エドが気にする必要なんかないからね」

「分かってる。

 そういえば、エリカの剣はどうする?」

「新しく買わないといけないから、武器屋を探すつもり」

「俺は昨日少し先の工房で長剣を買ったんだけど、いいところだったよ。

 夕食まで時間がまだあるし、すぐそこだから一緒に見にいかないか?」

「そうね。それじゃあ一緒に行こう」

 俺からのアドバイスとして片手剣だとしても、細剣よりもう少し丈夫な剣に代えた方がいいのではないかと思うのだが、それは慣れやいろいろな要素が関係するデリケートな問題なので黙っておいた。

 もう少し親しくなってからの話だ。

 今回のことがあったからエリカも何か考えているかもしれないし。


 エリカを連れて1階に下り、玄関を出て裏手に回って少し歩けばもう工房前だ。

「そこの工房だよ」

「ホントに近いのね」

「ダンジョンギルドに近いわけだから、店の立地という意味だといい場所なんじゃないか?」

「そういえばそうか。それはそうとエドって立地とか結構難しい言葉知ってるのね」

「なんとなく」

 エリカからすれば俺は名前も知らないような村から出てきた田舎者だしな。


 工房の中に入ると昨日同様誰もいなかったので、奥に向かって大声で呼んでみた。

「すみませーん」


 しばらく店先で待っていたら、あの小太りのおじさんが奥から現れた。

「昨日の新人じゃないか。昨日の剣で何かあったのか?」

「いえ、調子いいです。今日は連れ用の剣を見せてもらおうかとやって来ました」


「お前さんも新人だな」

「はい。昨日エドと一緒に登録しました」

「そっちはエドと言うのか」

「正確にはエドモンド・ライネッケです」

「わたしはエリカ。エリカ・ハウゼンと言います」

「そうかい。俺は鍛冶師のハンス・ミュラーだ。

 それで、エリカはどういった剣が欲しいんだ」

「いままで細剣を使っていたんですが、今日大ウサギと戦って折れてしまいました。細剣になるべく近く、丈夫な剣があれば」

「ダンジョンのモンスター相手じゃ、細剣は厳しいだろうなー。ここはダンジョン用の武器しか扱っていないから細剣は置いていないから、長めの片手剣ってところだな。

 それを見てみるかい?」

「はい」


「こっちだ」

 ミュラーさんに連れられて俺の長剣があったテーブルとは違うテーブル前に連れていかれた。

 テーブルの上には俺の長剣と比べ細目の剣が昨日同様10本ほど並べられていた。

「ここにあるのが数打ちの片手剣だ。手に取ってみてくれ」

「はい」


 昨日の俺のようにエリカが1本1本鞘から出して手に取り軽く振ったりして確かめていた。

 そして最初に手に取った剣を再度手にした。

「この剣をゆずってください」

「そいつの値段は金貨2枚と小金貨1枚だが、エドと同じで金貨2枚に負けてやる」

「ありがとうございます」

 その場でエリカが代金をミュラーさんに支払い、剣を手にした。

 エリカの手にした剣はもちろんあの細剣より短かったが重さ的には同じくらいだったのだろう。長さに慣れる必要もあるし、戦い方も変わってくるからある程度練習も必要だ。その辺りは自分で判断できるはず。


「剣帯は持ってるよな?」

「はい」

「エリカは剣だけでよかった?」

「うん」



 ということで俺たちはミュラーさんに礼を言って工房を後にした。


 ほかを見ないで決めた俺が言うのもおかしいが帰りの道すがらエリカに一応聞いてみた。

「ほかを見ないで決めたけど、それでよかった?」


「うん。大丈夫。いい買い物ができたわ」

「ならよかった」


「まだ夕食には早いけどどうする?」

「わたしは部屋に戻って荷物の片づけしてる。6時になったらエドの部屋に迎えに行く」

「分かった」


 部屋の前でエリカと別れた俺は、部屋に入ったものの6時まで何もすることがないので、靴を脱いでベッドの上に寝転がった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ