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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
140/336

第140話 柱5


 夕食を終え、デザートとしてマンゴーだかパパイアを切ってみた。

 外見は赤っぽいのだが中身の実は濃い黄色だった。

 縦に割ろうとしたら中に大きな種が入っていたのできっとパパイアだ。いやマンゴーだったか? まあ、名まえはエリカに任せるからどうでもいいか。

 なんであれこれもいい匂いがする。

 中の種がとにかく邪魔なので何度か失敗したがそのうちコツがわかってきたので、うまく実を食べやすい形で皿に載せられるようになった。


 何とか小皿に4人分盛ってフォークで食べてみた。

 独特の口触りと、強い甘み、ほとんど酸味はなくその代りわずかな苦み。このまま冷凍したらいいアイスができそうだ。

「変わった口触りだけど、すっごく甘いわね。癖になりそう」

「これもおいしいです」


 ペラは何も言わず食べている。おいしいんだろうな。


 デザートを食べた後、ペラは見張りに立ち、残った俺たちは後片付けだ。


 後片付けを終えたら午後6時半ごろだった。予想ではあと1時間くらいで階段が見えてくるはずなのだが。


 俺は警戒中のペラの横に立ってスリットから前方を眺め、ときおり見つかる果物を収納していった。はっきり言って食べきれないほど既にキューブに入っているが、飽きずに収穫だ。


 そして、予想通り右手に見える壁にしたから斜めに上がっていく線が見えてきた。

 その線がだんだん太く大きくなって階段になった。


「ウーマ、階段の下で停止してくれ」

 それからしばらく前進していたウーマが階段の手前で停止した。今日はここまで。

 俺が前方警戒に立っている間にエリカとケイちゃんは風呂に入って既に上がっている。

 俺も風呂に入ってエキスを注入してこよう。



 翌朝。


 朝食を終え後片付けをした俺たちは、装備を整えウーマから降り、階段を上り始めた。上り始めた時刻は6時。

 ウーマは昨日同様、キューブに収納している。


 階段は、1階層と2階層を結んでいた階段と全く同じだ。その階段が壁に沿って天井まで続いている。つまり、昨日と同じく階段を上り切るには1時間半かかることになる。


 2階層のジャングルには、1階層のジャングルと同じように中央に空き地が広がっていた。

 真ん中に空き地があり、その周りをジャングルが囲んで、壁とジャングルの間に2、30メートルの空き地があるというのが階層の一般形かもしれない。たった2例だけでは何とも言えないけれど、次の3階層でも同じようならそう考えてもいいだろう。ただ、3階層ではそれ以上階段を上っていく予定はないので階層の真ん中に空き地があるかどうかは実際のところは分からない。


 上り始めて1時間半。俺たちは予想通り3階層にたどり着いた。

 3階層でも2階層の時と同じようにエアロック式の扉があり、バトンを壁の穴に挿入することでエアロックを抜けることができた。


「見た感じ、1階層、2階層と同じだな」

「そうみたいね。だけど何で同じような階層を作ったのかしら?」

「人が作ったものじゃないから、人が考えても無駄かもしれないが、単純に考えるのが面倒だから同じものを作ったんじゃないか。そもそもこういったものを作る意味は分からないけどな」

 俺はそう言ってハッとしたのだが、これってコピペで作った感じなのかもしれない。俺が誰かにこういったものを作れと言われたら、ひな形を一つ作って後はコピペで済ませちゃうものな。

 案外、この柱を作った『誰か』はズボラなのかもしれない。


「少し休憩したら帰ろうか」

「そうね」

「そうしましょう」

「黄色いアレ食べる?」

「うん。食べる」

「それじゃあ、わたしも」

「わたしもいただきます」


 結局柱の内壁に背をもたれるように地面に並んで座ってバナナを食べた。皮は俺が預かった。

 10分ほど休憩した俺たちは立ち上がった。


 エアロックのこっち側の扉は開いたままになっているので、閉まった扉まで行けばどこかにバトンを挿入する穴があるのだろう。


 そう思って歩いて行ったら、ちゃんと壁に穴がありバトンを挿入したら後ろの扉が閉まって、正面の扉が開いた。


 下り階段に踏み出すと2階層の地面まで階段が続いているのが見えるので少しだけ吸い込まれそうな感じがするのだが、ビビることもなく上りの時と同じペースで階段を下っていった。その結果上りと同じ1時間半で2階層に戻ってこられた。

 そこでウーマに乗り込み今までと同じ左回りで下り階段を目指した。


 3時間後、ウーマは2階層を半周してエアロック前に到着した。これで壁の周りを1周したのだが、何も変わったところはなかった。


 ちょうど昼過ぎだったのでウーマの中で昼食を摂り、少し休憩してウーマから降りて俺たちはエアロックを通りその先の階段を1階層に下っていった。


 1階層に下り立ったのは午後2時半。夕食の時間まではまだだいぶある。


「このままこの階層の真ん中まで進んで行こう」

「この茂みを切り開いていくわけだよね。大丈夫かな?」

 そう言ってエリカが双剣を引き抜いた。

「剣で切り飛ばすんじゃなくて、適当に木とか下生えをキューブに収納していこうと思うんだ」

「なーんだ。てっきりわたしとエドで草木を切り飛ばして進んでいくのかと思っていたわよ」


「方向を間違えないようにエリカに地図を渡しておくから、ズレたら教えてくれ」

「分かった」

 俺は背負っていたリュックを下ろして中から自動地図を取り出し、一度広げてエリカに渡した。

 自動地図には1階層の大まかな地図が描き込まれていて、俺たちが壁沿いに移動した半円周だけ詳しく描き込まれていた。半円周の反対側にまっすぐ進んでいけば1階層の中心だから、地図を見ていさえすれば間違うことはないだろう。


 俺たちは俺を先頭にいつもの隊列で1階層の中心部を目指してジャングルに踏み込んでいった。推定距離は30キロ。どの程度のスピードでジャングル内を進めるか分からないが時速3キロとして30キロ進むには10時間かかる。当然途中ウーマで野営することになる。


 行く手を遮る大木、灌木をキューブの中に収納し、進んでいく。思っていたのは歩く速度の半分なのだが、ツタなどが絡まった木々の収納は面倒で、思った以上に速度が出ない。おそらく時速2キロにも満たないと思う。


「ねえ、エド」

 俺のすぐ後ろを歩くエリカが話しかけてきた。

「なに?」

「ウーマって草原を移動してるとき進路上に木があろうがなぎ倒してたじゃない」

「うん」

「ここでも進路上の木をなぎ倒して進んでいけるんじゃないかな?」

「これだけ密に繁ってるけど、行けるかな?」

「試すだけやってみない?」

「分かった。ウーマをうまく出せるようこの辺りの木を片付けてしまおう」

 俺はそこから頑張って直径15メートルくらいの空き地を作った。その空き地の真ん中にウーマを取り出した。


「ウーマ、そこからまっすぐ10メートルほど前進してくれ」

 ウーマは俺の言葉で動き始めそのままジャングルに突っ込み、進路上の木々を難なくなぎ払ってしまった。

「すごいわねー。これなら問題なくこの密な森を進めるんじゃない?」

「ホントだ。

 ウーマ。俺たちが乗り込むから元の位置に戻って、脚を曲げてくれ」


 ウーマはバックで先ほどの位置に戻り脚を曲げて甲羅を地面につけた。


 全員ウーマに乗り込んだところでウーマを出発させた。

 ウーマは文字通りジャングルの木々をなぎ払い、いつもと変わらぬ速さで進んでいく。

 スリット越しに外を見ていると豪快に大木が折れるのだが、音も振動もほとんど伝わってこない。


 ウーマの動きを確認して俺たちは装備をほどいた。とはいってもこのスピードなら1時間もかからず中心の空き地にたどり着けそうなので、武器を吊った剣帯だけ外しておいた。


 スリットの外はジャングルなのでほとんど視界はない。ペラはいつもの位置に立たせていたが俺たちはソファーに座ってウーマがジャングルを抜けるのを待った。



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