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第133話 柱


 朝食の準備を終えた俺はペラの隣りに立って前方を眺めていた。すると、ウーマの進行方向ではないが、上空に舞っているの鳥が数匹?見えた。距離から考えてワイバーンの可能性が高い。襲ってくればペラのレンガの投擲でいいお客様なので襲ってきてもらいところだ。


 そこで思いついたのだが、ペラの位置を昨日のような形ではなく、甲羅の上に陣取らせた方がいいような気がする。甲羅の真ん中にハッチを取り付けて、そこに梯子を取り付ければいいだけだ。自在に壁や甲羅を消したり元に戻したりできるウーマなら簡単だろう。


 2階の水タンク室前の階段の踊り場から梯子を上に伸ばせば良さそうだ。そしてその先にハッチを作る。甲羅のどのあたりにハッチができるのか分からないが、なるべく甲羅の中心あたりにできればベストだ。

 それで、甲羅の真ん中にペラがちゃんと踏ん張れるようある程度の広さを持った丸いステージを作る。投擲用の煉瓦は俺がハッチから首を出して、キューブからステージの上に2、30個出してやればいい。

 これだ!


 ウーマに話しかけるのは傍から見ると独り言になってしまうが、今思いついたことをウーマに伝えたところ、あっという間に階段の踊り場から梯子が天井に伸ばされてその先にハッチらしきものができ上った。


 エリカとケイちゃんは前を向いてソファーに座っていたのだが俺の独り言(***)を聞いて俺のところにやってきた。


「エド、今度は何始めたの?」

「ペラにレンガを投げさせるのは甲羅の上からの方がいいと思って甲羅の上に出られるよう階段に梯子を付けて甲羅を抜ける扉を作ったんだ」

「いろいろと思い付くことは大切だと思うけれど、甲羅に孔を空けて大丈夫なの?」

「大丈夫だから、ウーマにひとこと言っただけで階段も扉もできた。と思う。

 扉の先がどうなっているか見てみる」

 階段を上ってハッチを開けたところ、ハッチのすぐ先に直径にして2メートルほどの丸いステージが甲羅の上にできていた。もちろんステージの位置は甲羅の真ん中だ。素晴らしい。


「うまくできてるから、ペラを呼んでくれるかい」

「うん。

 ペラ、エドが呼んでるわよ」

『はい。今行きます』


 梯子から下りた俺はやってきたペラに。

「この梯子を上って、ハッチを開けて前を見てくれるか?」

「はい」


 ペラがハッチを開けたところでペラに指示しておいた。

「こんどワイバーンがやってきたら、ペラはそこのステージの上に立ってレンガを投げてくれ。レンガは俺がステージの上に置いておくから。以上」

「了解しました。それでは、持ち場に帰ります」


 ペラがハッチを閉めて持ち場に戻っていったところで俺もハッチを閉めて下に下りた。


 朝食予定は6時なのでまだ時間がある。まだ朝なのに1日が長い。

 仕方ないので掃除道具置き場からモップと桶を持ちだして床掃除を始めた。

 一通り床掃除を終えて掃除道具を片付けてもまだ時間がある。

 手持無沙汰だ。俺って、将来隠居したら一体どうなってしまうのだろう?


 それでも朝食の時間になり、テーブルの上に早朝用意しておいた料理を並べていった。

 みんな席に着いたところで「「いただきます」」

 いただきます。で食べ始めると、食べ始めるのがそろうのでなかなか良い。


「そっちの瓶がハチミツで、こっちの瓶がイチゴジャムだから」

「焼いたパンがおいしい!」

「ホントですね」

「マスター、おいしいです」

 がんばった甲斐があった。


 俺はパンにバターを塗ってその上ハチミツを塗ってみた。

 カロリー多めがおいしい。ここまでしてしまうとお菓子だな。


 ……。


「最近食べ過ぎてると思ってたんだけど、今日も朝からお腹いっぱい。

 ウーマのおかげで歩いていないから疲れないし。このままだと絶対太っちゃうわよね」

「本当ですね」

 俺もそれは思うけど、階段前まで戻ればそこから丸々半日歩くことになるわけだから大丈夫だろ。


 ……。


「「ごちそうさまでした」」


 ペラは見張りに戻り、俺たちは朝食の後片付けをした。


 後片付けが終わり、またペラの隣りに立ってスリットから前方を眺めたらシルエットが視界を覆うようにかつ実体を持って見えてきていた。樹皮で覆われた木の幹に見える。超巨大木なのか? 枝葉えだはが見えないので柱っぽいのだが青い空に溶け込んだ先に枝葉があるのだろうか?


 時刻はまだ午前7時。


 あと2時間もあれば柱の根元まで到達できそうだ。

 ここから見えている柱の根元の横幅=直径と、ここから柱までの距離は同じくらいの感じがするので、柱の直径は60キロくらいあるということになる。すっごく太い。いや、太くてもいいんだけど。

 幅はそれでもいいけれど高さが想像を越えている。柱は上に向かって細くなっていき空に溶け込んでいるのだが柱の幅から考えて、100キロ、200キロではなく1000キロ、2000キロのオーダーのような。つまりダンジョンに宇宙があるとして、柱の先に枝葉があるなしにかかわらず、柱の一番上は宇宙空間ということになる。


 エリカとケイちゃんが俺の近くにやってきたので、ペラが遠慮して少し脇に寄り警戒を続けた。

「9時ごろまでには根元に到着しそうだから、到着したら近くで良く見よう」

「上の方は空に溶け込んでしまって見えないし」

「柱というより木の幹に見えますね。柱の上の方は空に溶け込んでいますが、空の青さに濃淡があるような気がします」

「確かに、濃淡がある。枝葉が繁ってるのかな?」

「そうかもしれません。上に上がらなければ分かりませんから、上に上がれそうもない以上確かめられないでしょうね」

「階段でも付いていて上がれたとしても上がる気は起きないな」

「でも、途中にお宝があるなら、わたしなら上るわ」

 途中にお宝があるかどうかは行ってみなければ分からないわけだから、もし階段があったらエリカは必ず登ろうと言うだろうなー。俺もやぶさかではないが、上ると言っても空気の関係で3、4千メートルが限度だろう。ここから見た3、4千メートルはまだ柱の根っこ部分だものな。



「それはそうと、下り階段はこの柱の周りのどこかにあるんじゃない?」

「可能性は高いよな」

「そうでなければ柱の中かも」

「柱の中に入れるということ?」

「どこかに入り口があって中に入れる上に、ダンジョンのようになっているかもしれません」


 いやいや。もしそうだとして、これが上に上がっていく塔型ダンジョンだとすると一体全体何階層あるんだ?



 そんな話をしている間にもウーマはどんどん柱に近づいていく。柱の表面は松の樹皮に似たかさぶたのようなもので覆われているのがはっきり見えてきた。かさぶたひとつひとつの大きさはおそらく数キロ単位だ。もし、上からあんなのが落っこちてきたら逃れようがない。幸い、地面にそんなものは見当たらないので、そう簡単には落下しないと考えていいとは思う。

 

 そんなことを考えている間にも、ウーマが柱に接近していき、同時に地面少しずつ盛り上がってきた。


「柱が地面に接したところに穴があるぞ」

「穴があるってことは柱の中に入れるってことだよね」

「どこまで続いているのかは分からないけれど、そうなんだろう。

 ウーマ。穴の前まで近づいてそこで止まってくれ」


 足元が一瞬沈んだ感覚があったので『了解』したということだろう。




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