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素人童貞転生  作者: 山口遊子
ダンジョン編
107/336

第107話 12階層4、女神像


 12階層の石室の一つで祭壇の上に載った金色の女性像を見つけた。

 その像は見るからに神々しかったので勝手にダンジョンの神さまにまつり上げ、ご利益りやくを願って拝むことにした。


 エリカとケイちゃんが手を合わせている中、俺はどこかの地鎮祭に顔を出した時のことを思い出してそれっぽくへっぴり腰になり二礼二拍手一礼した。


 俺がそんなことをしていたせいか、エリカさまが変な目で俺を見ているではありませんか。

「エド、一体何をやりだしたの?」

「何となく」

「もう、訳の分からないことは止めてよ。ビックリするというか可笑しくなって笑っちゃうじゃない」

「そんなに可笑しかった?」

「うん。すごく可笑しかった」

 この世界の人から見ればすごく可笑しいのか? 神道布教にあたってはその辺りを考慮した方がいいかもしれない。つまりはスタイリッシュであること。布教に先立ちスタイリッシュ参拝を考案することを心のどこかにメモしておこう。そしてメモしたことを忘れないよう心のどこかにメモしておこう。以下同じ。


 いちおう女神像を拝んではみたものの、目に見えるような形でのご利益りやくはなかった。

 もちろん誰一人としてご利益が得られるとは思っていないので、エリカでさえ不満そうな顔をしていない。その代りばち当たりなことを言い始めた。

「この像持って帰りましょうよ。相当な値段で売れるはずよ。このままじゃ売れなくてもどう見ても金だから鋳つぶしてしまえば必ず売れるし」

「エリカ、こういったものはむやみに動かすと悪いことが起こるものなんだ」

 バチという言葉はこの世界にはないようなので、適当に訳さないといけない。そういえばバチって確か神道ではなく仏教だからさらにややこしい。


「ふーん。そうなのー?」

「そうなんだ。もちろん確実に悪いことが起こるわけじゃないけれど、生きていれば悪いことは必ず起こるだろ? そのとき『あのときあんなことをしたからだ』って思い出すんだよ。それってかなり嫌だろ? 逆に生きていれば必ずいいこともある。そのとき『あのとき神さまに祈ったからだ』って思い出せば、祈って良かったって思えるだろ?」

「うん。分かった」

 俺の説明にエリカも納得してくれたようだ。


 それで俺たちは祭壇部屋を後にして長方形の部屋に戻った。


「エド、床のいたるところが赤く点滅してるんだけど? エドにも見えてるわよね」

「見えてる」

「ケイちゃんは?」

「わたしにも見えています」

「もしかして罠の位置じゃない?」

「一枚床石を引っぺがしてみれば分かるからやってみよう」

 一番近くで赤く点滅していた床石をはがしたら大穴が空いた。

「罠だ」

「もしかしてさっき女神さまに祈ったから罠の位置が分かるようになったのかな?」

「きっとそうだ」

「女神さま持って帰らなくて良かったー」

 こうあからさまにご利益があると、バチも相当エグそうだものエリカの気持ちはよく分かる。エリカを思いとどまらせた自分をほめておこう。


「女神さまを持って帰らなかったのはエドのおかげだわ。ありがと」

 エリカに感謝されてしまった。悪い気はしないぞ。というかすごくいい気分だ。


「もう2、3枚確かめてみて全部罠だったら確実だ」

 俺はあと3つ赤く点滅している床石をはがしたところ3つとも穴が空いた。


「これで赤い点滅は罠だってことが確かめられた」


 部屋を出て通路を見たところいたるところが赤く点滅していた。


 俺たちがやってきた方向は俺が床石を引きはがした跡がズーと続いていていたが、引きはがしていない床石のうちかなりの数の床石が赤く点滅していた。


 この能力は落とし穴だけでなく罠全般を見破る優れものと見た! だって相手は女神さまなんだもん。


「それじゃあ次の扉にいってみよう」


 歩きながら赤く点滅している床石を収納するだけなのですごく楽になった。実際はキューブに収納すること自体は歩きながらでも無意識に近いくらい簡単な作業なので、これで楽になったというほど差はないのだが、気持ちの問題だ。


 次の扉の前に立った俺はレメンゲンを抜いた。扉は赤く点滅していないので罠などないのだろう。

 そう思って俺は扉を押し開こうとしたのだが、もしまた矢が飛んで来たら切り払うのが難しくなるので今まで通り扉を収納することにした。


「3、2、1、(収納)」


 扉の先の部屋は、いつもの正方形の部屋で俺が取り払った扉しか扉はなく、中は空だった。

 床の上には3カ所ほど赤い点滅があったが、部屋の中に入る必要はないので放っておき、次の部屋に向かった。


「3、2、1、(収納)」


 次の部屋の中には剣を持った石像が立っていたけれど、ケイちゃんの矢で瞬殺されてしまった。

 今回の部屋も行き止まりの部屋だったが、宝箱が部屋の真ん中に鎮座していた。

 俺は念のため赤く点滅する床石をはがしてから宝箱の前に立った。


「エド、何も床石をはがさないでも横を通ればいいだけじゃない?」

 赤い点滅は十分目立っているので迂回は簡単。ごもっともな意見なのでこれからはそうすることにした。


 宝箱を観察したところ、銅の宝箱でカギ穴がないところは今までの宝箱と一緒だが一回り小さい。

 開けてみたところ、中からポーション瓶が出てきた。

 ガラス瓶の中の液体の色は濃淡でしか判別できないのだが、この前手に入れた2種類のポーションと同じだ。


 これも宝箱ごと収納しておいた。ポーションに消費期限があるのかは分からないが、少なくともキューブに入れておけば半永久的に使えるはずだ。従ってポーションはいくらあってもウェルカムだ。

 と、思ってエリカの顔を見たら、ちょっと不平そうな顔をしているではありませんか。

 エリカさん、何が不満なんや?

「なにか、もっと変わったものが欲しいわよね!」

 そう言われましても、こればかりは、……。


 再度通路に戻って、次の扉の前に立ち鞘に納めていたレメンゲンを抜いて「3、2、1、(収納)」


 前方で弓の鳴る音を聞き、同時に飛んできた矢を払う。後ろで響く弓の音を聞いて、床に倒れて砕ける音を聞いたら、その先に宝箱があった。今回の部屋はいつもの正方形の部屋だったが、入り口から見える3つの壁の各々の真ん中に扉があった。

 ちょっと得した気分だ。


「何かなー?」

 エリカが赤い点滅を避けて宝箱に近づいて、しゃがんで宝箱を眺めている。俺も宝箱の前にしゃがみこんで宝箱を観察した。


 今回の宝箱も銅製の宝箱だが横長だった。

 これは期待できそうだ。

「長四角ということは目新しいものが出てくるんじゃない?」

 そう言ったエリカの口元はニマニマしている。俺は学習する生物なのであえてそれを指摘はしなかった。


「可能性はあるな。

 それじゃあ、開けてみる。

 何が起こるか分からないからエリカは少し離れててくれ」

 罠があるようなら赤く点滅する可能性が高い。目の前の宝箱は赤く点滅していないからおそらく罠はない。と、思う。が、用心に越したことはないのは確か。


 エリカが少し下がったところで宝箱のフタを開けた。中に入っていたのは……。

 うーん、何だかわからない。強いて言えばバトン?

「二人とも、これは何だと思う?」

「さあ。かなり立派だけどね」

「全く分かりません」


二礼二拍手一礼が出たところで、常闇の女神シリーズその2

常闇とこやみの女神 ー目指せ、俺の大神殿!ー』https://ncode.syosetu.com/n0271gt/ よろしく!

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