ギャラクシー★Bang!Bang!(7)
南の質問にみさが目を丸くする。
「それならこの間福田さんが言ってたじゃない。高町幸音がファン達のパブリックイメージから外れたからって」
「そうなんですけども……」
みさの回答に南は言い淀む。
「……何か気になった点があるの?言ってみなよ」
そんな南の様子に何かを察したあいねが後押しをする。その言葉を受けて、南はみさの方を見る。その視線に気がついたみさは小さくため息を漏らすと、顎をしゃくる。それを見た南は自分の中の疑問を整理しながら紡ぎ出す。
「高町幸音のファンだった人達って……推してる、つまり応援してるんですよね?それなのになんでイメージと違うって怒るのかよく分からなくて……。そういうのも含めて応援してあげるというものではないんですか?」
そんな南にみさが苦笑する。
「それなら良いんだけどねえ。実際は推してるって言ったって、みんながみんな純粋に応援してるとは限らないわよ」
「どういうことですか?」
やはり、みさの言わんとしていることがわからず南は首を傾げる。
「推し活の中には、推しに依存してるって人もいたりするのよ。誰かを推してることで、自分も特別な何かになれた気がするとかね」
「承認欲求拗らせた人とかでありがちだよねえ……。推しにやたら投げ銭して、配信中にコメント読んでもらうことに生きがい見出してる人とか……」
みさの説明に頷きつつ、澤野が缶ビールを呷る。そして、缶を卓の上に置く。どうやら既に中身は空らしく、置かれた瞬間に甲高い小気味のいい音が鳴り響いた。
「まあもちろん純粋に応援してくれる人もいるんだろうけどね。ただまあ、たくさんいるリスナーの中にはそういう人達もいて、そんでもってその人達がトリガーになって騒ぎが起きたりすると今回みたいなことになったりするわけよ」
「そこらへんをうまくコントロールしないといけないってあたりも配信者は大変だよねえ」
みさのフォローに澤野は同調する。しかし、そんな二人の説明を聞いてもいまいち腑に落ちないのか南は腕を組む。
「……別に誰を応援してようと人間、自分は自分では?」
そんな南の言葉にその場にいた者達が思わず苦笑する。
――ただ一人を除いて。
「世の中そんな、司馬さんみたいに執着するものが無い人ばかりじゃないんですよ……」
そう言う西山は無意識のうちに力んでいたのか、手にしていた缶が乾いた音を立てて凹む。
「?別に自分は強くなんか無いんですよ?」
西山のいつになく唐突な、そして棘のある物言いにみさ達は少々面食らう。その一方で南は西山の言わんとしたことが分からず、やはり首を傾げている。
(……なんか過去にあった?)
俯いているため表情は窺い知れないが、声のトーンなどから西山の感情が良くない方向に傾いていることを察したあいねは話題の転換を試みる。
「まあアレだよ。南ちゃんは今のままの南ちゃんでいて?出来れば定期的に女装はして欲しいけど」
「え……予想以上にアレ気に入ってたの!?」
「それは今のままではないのでは?」
驚くみさを他所に、南は真顔で尋ねるのだった。
「とりあえず……司馬君が今のままでは困るんだよねえ」
――天寿楼で引き続き会食をしていた福田が切り出す。既に食事の方は、主菜は粗方食べつくして日本酒片手に土鍋の炊き込みご飯をつつく段に至っている。
「困る?」
福田の言葉に晴信は疑問の声を上げる。そして、空いたお猪口を福田の方に差し出す。福田は徳利を手にし、晴信のお猪口に日本酒を注ぎながら答える。
「今は遠渡星様からのサポートがあるから何とか戦えているが、元々彼は戦闘に関しては素人だ」
福田の回答に晴信は苦笑する。
「そりゃまあ……ちょっと重たいバックグラウンド持ちとはいえ普通の学生なんだろう?素人なのもしょうがないだろう」
福田は頷きつつ、徳利を下す。晴信は注がれた日本酒を軽く飲むと、お猪口を卓の上に置く。
「だが、いつまでも素人のままじゃまずいでしょ。と、いうわけで晴信……光司君、いつこっちに戻ってくる?」
福田に問われた晴信は、親指を顎に当てて思案する。
「えーと……あいつはたしか……今月中には研修終わるから、その後すぐこっちに戻ってくるはずだったかな。少なくとも来月頭にはいるはず」
その回答を聞いた福田が小さく息を吹く。
「ありがたい。時間的には出来て精々やらないよりはマシという程度かもしれないけど、多少は備えることが出来そうだ」
福田の言葉を聞いた晴信が腕を組む。
「備える……。……つまりまた、ククライによる炎上騒動が起きる可能性が高いと?」
「ああ」
福田はそう言うと、自身のお猪口の日本酒を一気に飲み干し、スマートフォンのニュースを晴信に見せる。
「……経済ニュースか?ええと……『ドローンベンチャーAirVerge・星降スマートシティでドローンタクシーサービスの実証実験を開始へ』……。おい、なんだこれは……」
ニュースのタイトルを見た晴信の顔色が変わる。その反応を見た福田も肩を竦める。
「どうもこうも。俺だって今日知ったくらいだ。でもこの会社の実証実験を星降市では実施しないようにするため、お前が色々と裏で走り回ったことがあったよな?」
福田の問いに晴信が頷く。
「都市部で安全性の検証が不十分なドローンサービスを提供して事故を起こし、散々問題になっている会社だ……。くそ……聞いてないぞ」
「ここの社長さん、たしか元外コンだろ?そこで内閣府とかと強いコネでも構築して、それ経由でねじ込んだんじゃないか?」
「官邸主導なんて言えば聞こえはいいが全く……。何かあったら尻ぬぐいにはこっちも駆り出されるというのに……」
福田の予想に、晴信は額に手を当ててため息を漏らした。
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