表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/96

ギャラクシー★Bang!Bang!(6)

「まあ、そう言うわけでだ」

 晴信がグラスを飲み干したのを見計らって福田は鞄から書類を取り出す。

「ん?」

 晴信が疑問の声を上げるのも構わず、福田は手にした書類をそのまま手渡す。

「企画書か、これ?ええと……『星降神社公認バーチャルストリーマーを活用したマルチチャネル観光ツアー』?なんだこれは?」

 書類の表紙に記されたタイトルを読み上げながら晴信は福田に尋ねる。

「前にも話したと思うけど、遠渡星様の力を向上させるには人々の信仰心を集めなきゃならん。とりあえずそのための活動の一環として、現在はバーチャルストリーマーをしてもらってるわけだが……」

「いや、報告は受けたし、実際に配信のアーカイブは見たけど……。神様があんなクソゲーを楽しそうにプレイする配信というのも世も末というかなんというか……」

「まあ本人も楽しそうだからいいんじゃない?」

 晴信の渋面に福田の反応は素っ気ない。

「いやまあ、そうなんだが……」

 言い淀む晴信に構わず福田は続ける。

「まあそこらへんはさておき本題に入ろう。配信活動からさらに信心を集める導線を増やす取り組みの一環として、星降神社を聖地とした天司希継縁の地を巡る観光ツアーの提供、そしてそのツアーとタイアップしたデジタルツイン上での遠渡星様による星降市ツアーの提供をしてはどうかという案がチーム内で出ている。これは、その案を企画書の形にしてまとめたものだ」

「なるほど……」

 呟きながら晴信は企画書に目を走らせる。

「これ……随分よく出来てるな。お前じゃないんだろう?誰が書いたんだ?」

「今、遠渡星様やジモクがらみの配信の運営をしてくれている学生の子だよ」

「ああ、報告にあったあの子か……。勝間みさ……だったっけ?」

 福田と会話しながらも、晴信はページをめくり、企画書をすさまじい速度で読み込んでいく。

「うん、企画の骨子としては良く出来ている。実際の地元の観光の部分に関しては知見が不足しているのか詰めが甘い部分もあるが……」

「だろうね」

 晴信の感想に福田も同意する。

「デジタルツイン上でのツアーについてはこちらで完結するし、一旦準備を進めてしまおうかとは思っている。でもまあ現実世界での観光ツアーについてはそういうわけにはいかないだろ?企画のブラッシュアップや、地元の観光業界関係者の理解と協力の取り付けにはそれなりに伝手が必要になってくる」

 その言葉を聞いた晴信が、福田の意図を察する。

「なるほど。企画の方向性についてある程度俺の理解と了承を取ったうえで、必要なコネの紹介とかをして欲しいということか」

「そういうこと。まあ、ついでにデジタルツイン上でのツアーについても地元からの要望を受けている代議士の声という形でウチの会社の方もつついておいて欲しいなと思ってね」

 こともなげにいう福田に晴信はため息を漏らす。

「……それは良いんだがまあ……都合の良いように随分と使ってくれちゃって……」

「お前さんが俺を巻き込んだせいだからね。諦めてくれ」

 福田はそう言うと、自身のグラスに口をつける。そんな福田の様子に、晴信はただただ苦笑を漏らすことしか出来なかった。

「なるほど、巻き込んだ側の責任……ね」

 晴信の呟きに福田は頷く。直後、背後の襖が開き新たな料理が運ばれてきた。

 

「しっかしまあ、無責任な話よね」

 みさはそう言いながらピザに齧り付く。

「無責任?」

 慰労会を兼ねた食事を始めて早々、みさのボヤキを聞いた澤野が首を傾げる。

「あんだけ勝手なこと言って人を追い詰めたところで、その発端だった連中は誰一人としてなんのお咎めもないんですよ?挙句、事が済んで興味が無くなったら次の話題にさっさと行っちゃうし……」

「さつきちゃんも一ノ瀬先輩も、無事だったから良かったようなものだものね……」

「本当それ!」

 あいねの同意にみさは頷きつつ、缶チューハイでピザを流し込む。

「その上、夢野さんの件はほぼほぼ言いがかりから始まった魔女裁判みたいなもんだったしねえ。一ノ瀬さんの件にしても、高町幸音が期待した動きをしてくれなかったら爆発したって感じでしょ?」

 澤野の言葉にみさが何度も頷く。

「あーもう、本当にどいつもこいつも無責任なのが腹が立つ……。せめてあの配信が止められればなあ……」

 みさがため息を漏らしながら空の缶を卓の上に置き、甲高い音が鳴る。

「難しいだろうね。これまでのククライの配信は確認したけど、どれにおいても個人情報は直接的に流していないんだ。炎上した人物の周辺情報についても、その人物が実際に行った炎上のきっかけとなるような行為について触れるだけだし。となると法的には問題の無い配信を止めることは難しい。表現的にも悪趣味ではあるけど、グロとかの類ではないし」

「そ、それに……仮にククライのアカウントを止めようとしても、ククライが活動している動画配信プラットフォームは海外のものですし……日本で裁判を起こして止めるのは難しいと思います……」

「と、なると……やっぱり対処療法しかないかあ……」

 澤野と西山の解説にみさが項垂れる。……が、すぐに顔をあげて遠渡星の方を見る。

「遠渡星様の方でどうにか出来たりしないんですか?神様のパワーでちゃちゃっと……」

 話題を振られた遠渡星は静かに首を左右に振る。

「すまないな。私は基本的には希継の見守って欲しいという願いによって生まれた神だからな。直接的に人の世の事象に干渉することは基本的には出来ない」

「こっちも駄目かあ……」

 みさのため息に澤野が苦笑する。

「それでどうにか出来るんだったら、最初からこんなチーム立ち上げたりしてないでしょ」

「ですよねぇ……」

 みさは頬杖をつく。そんなやり取りを横目で見ながらピザを自身の取り皿に乗せていた南が口を開く。

「……先輩たちが話していることはちょっとよく分からないですけど……そもそもなんで高町幸音のファンだった人はククライの配信に乗っかって一ノ瀬先輩を断罪なんてしたんでしょうか?」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

皆様の応援が執筆の励みになります。

もしよろしければブックマークや評価ポイント、感想やレビューなどお願いします。


引き続き、この作品をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ