ギャラクシー★Bang!Bang!(4)
「ところで、今回は一人なのか?色々と優秀な人が増えたみたいじゃないか」
晴信に尋ねられて福田は肩をすくめる。
「おっさんと飯食って堅苦しい話をする場に来て喜ぶような若いもんなんて今日日そうそういないよ。それに彼らもこの間一騒動収めたばかりだ。休ませてやらにゃ可哀想だろ」
「たしかに」
晴信はまたしても苦笑する。
(まあ来そうなのは居るんだけどね)
そう言って福田はみさの顔を思い浮かべる。
(ただ、酒が入るとどうなるかわかんないからなあ、あの子)
政治家として多忙な晴信を捕まえられる機会はそう多くない。この貴重な機会に、酔ったみさが暴走して話が進まなくなる事態は福田としては避けたかったのだった。そんな福田の内心も知らず、晴信は本題に入る。
「その一騒動、中々大変だったみたいだな」
晴信はそう言って自身のスマートフォンの画面を福田に見せる。そこにはニュースサイトの記事が表示されている。『地下鉄車両緊急停止。原因は自動制御システムに流れた正体不明の異常データ?』という記事のタイトルを見るに、先日のジモクとの戦いの余波で緊急停止した地下鉄の話のようだ。
「いやー、悪かったな。ジモクが想定外の挙動をしたもんで」
悪びれずに言う福田に晴信はため息を漏らし、スマートフォンを置く。
「本当に悪かったと思ってるか?」
「思ってはいるよ。ただ、何から何まで手探りな状態なんだ。多少のやらかしは多めに見て欲しいと言うのは正直な感想だ」
福田の回答に晴信は鼻を鳴らす。
「……そこはこっちも分かっているつもりだ。ただ同じような事態の頻発や規模拡大が起きれば、スマートシティの安全性は疑われる。そうなれば企業の誘致は滞り、投資機運は沈む」
晴信の言葉に福田は頭を掻く。
「そうなったら俺達の活動に、お前が資金を融通することが難しくなるってことだろう?」
福田の回答に晴信は頷く。
「ああ。その結果、ジモク退治活動も縮小せざるを得なくなる。ククライが野放しになった後に人々が星降スマートシティとアレの関係性に気づいたら最後、この街は断罪配信を利用した私刑場に成り下がる可能性がある」
「私刑の街の烙印が押されれば、人も金も離れる。仮にそんな街に住むモノ好きなんていたら、ろくな奴じゃなさそうだ」
福田は肩を竦める。そんな福田の仕草を見た晴信は頭を下げる。
「……そうならない様するために、わざわざお前を巻き込んだ。そして、ようやく遠渡星様の霊力に適合出来る人間が現れた。ここからが正念場だ、頼む」
福田は頷く。
「分かってるよ。街についてもなるだけ被害が出ないように立ち回れる戦い方を模索していくつもりだ」
その言葉を聞いた晴信が顔を上げ、福田を見据える。
「すまない……。こっちもお前に無茶を言っていることは分かっている。それでも一族にとって、そして俺自身にとっても大事な街だからな……。"あの人"にとっても」
晴信の真摯な言葉を聞いた福田は軽く鼻を鳴らす。その瞬間、晴信が卓の上に置いたスマートフォンの画面がホーム画面に切り替わるのを福田の視界が捉える。ホーム画面は若い日の晴信と、傍に寄りそう女性の写真だった。
(……)
写真の女性の姿を見て、福田は小さく苦笑する。
「まいったね。その話を持ち出されると俺も弱い。……まあ、出来る限りのことはするよ」
「ありがとう……」
晴信はそう言うと再び頭を下げた。晴信の真摯過ぎる反応に、福田は視線を逸らし、頬を指で掻いた。
――直後、福田の背後の襖の外から声がかかる。料亭のスタッフの女性のものだ。
「失礼いたします。こちらビールと前菜の桜海老と菜の花のお浸しをお持ちしました。室内にお邪魔してもよろしいでしょうか」
「ああ、頼みます」
晴信がそう言うと襖が開き、料理と瓶ビールを乗せたお盆を手にした女性が中へと入ってくる。そして、晴信と福田の前に瓶ビールとグラス、そして前菜を並べていくと、一礼してから出ていった。
「さて、それじゃあ飲みながら引き続き話をしようか」
晴信はそう言うと瓶ビールを手に取る。
「ああ」
福田は頷くと、手にしたグラスを差し出す。それを見た晴信はそのグラスにビールを注ぎ始める。
「……本当は俺達、天司家の人間が戦えれば良かったんだろうがな……」
ビールを注ぎながら、晴信はぽつりと呟く。それと同時に福田の手にしたグラスがビールで満たされる。福田はグラスを置くと今度は晴信から瓶を受け取り、彼のグラスにビールを注ぎ始める。
「まあこればっかりはstargaszerが使えないことにはどうにもならないからな」
「……」
晴信が無言で頷く。それと同時に晴信のグラスも満たされる。
「皮肉なものだ。かつて、遠渡星様と共にあった者の末裔だというのにな」
そう言いながら二人は軽く乾杯をし、グラスに口をつける。
「体質的なものだからなあ。実際、かなりの数の候補者にあたっても適合する人間は居なかった。気にしてもしょうがないんじゃないか?」
「そうは言ってもなあ……。我々の場合は……」
福田のフォローに渋い顔をしながら、晴信は言い淀む。それから吐き出そうとした言葉ごと、グラスを飲み干す。それを見た福田も、一度グラスを飲み干す。二人は空になったグラスを一度置く。
「なあ、福田」
「ん?」
「今回、stargazerに適合した学生……司馬南はどういう子なんだ?」
「……」
福田は無言で空のグラスを手に取り、軽く回しながら眺める。
「空っぽ……だ、そうだ。遠渡星様曰く」
――その頃、バイトを終えた南は星降神社の社務所前に戻ってきていた。
「はっくしょん!」
そして南は不意にくしゃみを漏らす。
「……風邪?それとも誰か噂してたとか?」
そんなことを一人つぶやきながら南は社務所の中へと入っていった。
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