ギャラクシー★Bang!Bang!(3)
「さて……」
南が外に出たのを見送ってから、福田は自身のスマートフォンを改めていじり、それからジャケットを羽織る。
「あれ?これからどこか行くんですか?」
その様子を見て、あいねが尋ねる。
「ちょっとこれから会社の方に顔を出さないといけなくてね」
そう答えてから福田は澤野と西山の方を見る。
「今日は俺、その後も用事があってそのまま戻らないから、二人とも適当なところで切り上げちゃってよ」
澤野と西山は少し面食らった様子で、一度顔を見合わせてから福田の方を見る。
「はあ……分かりました」
「しょ……承知しました……」
福田はそんな二人の反応を見て頷くと、部屋の外へと向かって歩き出す。
「じゃあまあ、俺も失礼するよ。後は若いもん同士で気楽に一息ついてよ」
そういうと、軽く片手を上げる。
「ありがとうございましたー」
「どーも」
あいねは福田の背中に手を振り、みさは腕を組んで鼻を鳴らした。
そんな福田の背中を見送りながら遠渡星は首を傾げる。
「私はそんな若くないのだがなあ」
彼の言葉にどう答えたものかと、部屋にいたものたちは苦笑いを浮かべた。
後に残った者達のやりとりを知ってか知らずか、玄関の扉が再び開く音がした。
「……さて」
福田が出て行ったことを確認したみさが、南が配達してきたビニール袋の中身を検め始める。
「ピザとかピラフとかからあげとか……冷凍食品が多いわね。あとお菓子か」
「今回は泊まり込むことが多かったからね……。今後はそういった事態に備えて食糧とかをストックしておこうって話を福田さんとしてたんだった……」
「そ、そうでしたね……あはは……。ふう……」
「同じようなこと……起きてほしくないな……。起きるんだろうなあ、きっと……」
「お、お疲れ様でした……」
ここ数日の激闘を思い出し、遠い目をする澤野と西山になんと言葉をかけたものか分からずみさは言葉を濁す。「えーと……ほ、ほかの袋には何が入っているのかな〜」
話題を逸らそうと、みさが別の袋の中身を見る。
「……」
しかし、すぐにみさは言葉を失う。別の袋には大量の栄養ドリンクやおでこ等に貼る冷却シートが入っている。明らかに緊急事態に備えた物資である。
「あー、これいいかも!」
みさの後ろで別の袋を見ていたあいねが声を上げる。
「ん?何よ」
みさが振り返ると、両手にパスタと大量のパスタソースを持ったあいねが満面の笑みで立っている。
「パスタとパスタソース!こんな大量にあるんだし、パスタパーティと洒落込もうよ。コンビニで買ったものばっかりだと味気ないし、私準備するから!」
「へ……?まあ、あいねが良いなら良いけど……」
みさが同意すると、あいねは軽い足取りで台所に向かっていく。
「パスタ……パーティ?」
あいねを見送りながら澤野は首を傾げる。
「それはどういう反応です?」
澤野のテンションを掴みかねて、みさが怪訝な顔をしながら尋ねる。
「え?あ……いや……」
澤野は後頭部を掻きながらみさから視線を逸らす。
「なんていうかホラ……パスタって家で大量に茹でて百均のソースと絡めてとりあえず腹を満たす食べ物ってイメージだったから、なんか女の子がパーティとかいうのがすごい新鮮な感じで聞こえて……」
(……独身金欠男性特有の貧乏レシピ思考……!)
みさはそんなことを考えながら西山の方を見ると、彼女も似たようなことを考えているらしく口を開けつつ、妙に納得したような顔をしていた。
「みさちゃーん。うちに丁度いい盛り付け皿あるから、取ってきてもらっていい?」
台所で調理を開始しようとしたあいねがみさに声をかけてくる。
(おおう……さっきからなんか空気が重たいこの場から一旦逃げるチャーンス!ナイスよ、あいね!)
「分かったわ。家着いたら確認のためのビデオ通話付けるからちゃんと出てね」
みさは内心であいねに感謝をしつつ、返事をする。それから澤野達に向けて片手をあげる。
「それじゃ、ちょっと私家まで食器取りに行きますんで!」
そう言うとそそくさと部屋から出ていった。
残った澤野と西山は互いに顔を見合わせると、乾いた笑いを浮かべ、ため息を漏らした。
――あいねが夕飯の準備を始めてからしばらく時間が経った頃、福田は商業ビルの上層階の中を歩いていた。彼は『15階 レストランフロア』と記された掲示の横を通り過ぎて行く。そして、暖色系の暗めの灯りに照らされた通路を歩いて行った先に、天寿楼というのれんが掲げられた店舗の入り口があった。
「ここか……」
福田がそう呟くと、店内に足を踏み入れる。すると店舗の入り口で待機をしていた男性が福田に頭を下げる。
「いらっしゃいませ。天司様のお連れの福田様ですね」
「ええ」
福田が頷く。
「では、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
男性に導かれるままに福田は店内を進んでいき、個室の中へと入る。中には既に先客がおり、声をかけてきた。
「お、来たね」
「ああ」
声をかけられた福田は返事をする。その視線の先には、色白で糸目の男性が座っている。
「会うのは随分久しぶりだね」
座敷に上がろうと靴を脱ぐ福田に、男性は引き続き言葉をかける。
「思ったより時間がかかったもんでね。悪かったと思ってるよ」
福田は本当に悪いと思っているのか疑わしくなるようないつもの調子で応えると、そのまま男性の対面に座る。
「相変わらずだなお前は」
男性は福田の物言いに苦笑する。だが、福田はそれを気にすることもなく返事をする。
「そっちはみない間に随分とバージョンアップしたじゃないか。自由民権党の期待の新人議員……天司晴信。先生ってつけた方がいいか?」
「茶化すなよ」
福田の言葉に晴信は苦笑した。
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