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ギャラクシー★Bang!Bang!(2)

「だねえ……。今店長からも返信あったけど、この画像で間違いないみたい。……でも、どうしてうちの店舗に来た人が女装した南ちゃんの写真を?」

 あいねが首を傾げる。

「それはこういうことよ」

 そう言って、みさが今度はディスプレイに表示する内容を切り替える。今度はSNSにおける特定の話題に関するまとめサイトだ。福田は表示されたサイトの内容を声に出して読み上げながら確認していく。

「えーとなになに……『高町幸音がメイクしてる女の子が今世紀最大の美少女と話題に』……」

 そこまで読んだ福田が一度読み上げるのを止めて、南の顔を見る。ディスプレイには、福田が読み上げた文言とともに、いつぞや演劇サークルの女性二人がSNSに上げた女装した南と、メイクを施した主犯二人(顔面にはモザイクがかけられている)が表示されている。写真の"南ちゃん"と、目の前の司馬南を見比べているのだろうか。

「……何でしょう……?」

 ディスプレイに映されている内容と、福田からの目線を受けて何とも言えない顔をする南。そんな彼の質問には何も答えず、福田はディスプレイの方へと向き直り、再び内容を読み上げ始める。

「『めっちゃ可愛い……』『これ、24フレンドの制服?バイトしてるのかな』『高町幸音の通ってる草応大学のキャンパス近くに確か店舗あったよな』『じゃあ、そこにいけばこの娘に会えるってこと!?』……」

「あー、なるほど……」

 そこまで聞いた澤野が納得の声を上げる。

「つまり一ノ瀬さんが身バレするきっかけとなった写真に写ってた女装した司馬君に注目が集まって、それ目当ての人達が突如として大量に訪れたわけか……。事情知らなきゃ店はそりゃ警戒するわな……」

 澤野の言葉に福田は頷く。

「だねえ」

 それから福田は改めて南を見る。

「でもまあ、これでどうしてククライからの追加アクションがないか……その理由は見当がついたかな」

「どういうことですか?」

 南は福田が何を言わんとしているのか分からず、首を傾げる。

「皆の興味が高町幸音から、この『謎の美少女・南ちゃん』に移ったということでしょ、多分」

 福田の説明にあいねが目を輝かせる。

「おお!つまり私達で作り上げた芸術が一ノ瀬先輩自身を救ったということですね!」

「ま、そういうことになるのかな」

 福田の気の抜けるような返事に、南が再び何とも言えない顔になる。

「ええ……」

 その後ろでみさがため息を漏らす。

「どういう展開よ、まったく……」

「そういうのもアリだろう。稀継もかつて、擬態して市井に紛れ込んだ宇宙人を誘き出すために女装したこともあったしな……」

 その様子を見ていた遠渡星が遠い目をし、笑う。

「神話なのかSFなのかはっきりしてくださいよ……」

 みさががっくりと項垂れる。

「え!?その話詳しく聞かせてください!」

 対照的にあいねは目を輝かせて身を乗り出し、遠渡星に尋ねようとする。

「なんかえらい食いつきいいな……」

 いつになくテンションが高いあいねに、澤野も少々驚く。

 

 その時――段々と混乱してきた空気を引き締めるように、手と手を叩き合わせる乾いた音が室内に鳴り響く。その音に驚いた一同は手と手を合わせたまま立っている福田に目線を向ける。自身に皆の注目が集まったことを確認した福田が話し出す。

「まあ色々話題はあるが、そこらへんは一旦置いといて……」

 そう言うと福田は手と手を離す。

「とりあえず今回の件も一旦は対処完了……というわけだ。みんなお疲れ様だったね」

 福田のねぎらいの言葉に南達は頷く。

「なーんとも締まらないオチですけどね。それにまあ……人の興味関心なんてのはどれほどいい加減なもんなのか……ということを嫌と言うほど思い知らされますね……」

 しかし、その後ろでみさは後頭部を掻きながらため息を漏らす。

「……ま、いいじゃないの。終わらない対処療法ずっと強いられるよりはさ」

 そう答える福田の表情は相も変わらず平常通りといった様子で、感情が読み取れない。

「それはまあそうなんですけど……」

 憮然と答えるみさの前で福田は南が配達してきたビニール袋を手に取り持ち上げる。

「とりあえずさ、折角ひと段落ついたことだしパーッと飲み食いして気晴らしでもしようじゃないの」

「この間もそんな感じの事言ってましたよね」

 南がありのまま思ったことを反射的に口にする。みさは直後に、そんな彼の背中を勢いよく叩く。

「痛ァ!?」

 みさの予想外の行動への驚きと肩を叩かれた痛みに、南が思わず素っ頓狂な声を上げる。

「余計なこと言うんじゃないわよ。折角年長者が我々にタダ飯食わせてくれるって言ってるんだからありがたく恩恵にあやかっておきなさい」

「……俺はまだバイト中なので、あんまり恩恵にあやかれそうにないのですが……」

 背中をさすりながら南はぼやく。

「んなもん私が知ったこっちゃないわよ。取り分無しが嫌だったらさっさと残りの配達終わらせて戻ってくることね」

 そんな南からみさはそっぽを向く。

「はい……」

 南は素直に立ち上がると、とぼとぼと玄関へと向かっていた。そんな南とみさを交互に見比べてからあいねは笑みを浮かべる。

「……何よ?」

 そんなあいねの様子をみてみさは訝しむ。

「あんなこと言いながら、ちゃんと南ちゃんの分取っといてあげるんでしょ?」

 あいねの見透かしたような言葉にみさは苦笑いする。

「まあね」

 

 直後、玄関のドアが開く音がすると、そんな二人のやり取りも露知らず南は外へと走り出していった。

 


 

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