fake town baby(7)
「ん……」
配信室の片隅に配置されたソファの上で、南は目を覚ます。
「目、覚めた?」
意識が覚醒して最初に南の目に最初に入ったのは、500mlのスポーツ飲料が入ったペットボトルを手にしたみさの姿だった。
「はい」
南は返事をしながら立ち上がる。
「し、司馬さん……大丈夫ですか?」
西山が不安そうな眼差しを南に向ける。
(……そうか。前回は戦ったとすぐに倒れたから……)
以前の戦いで自身の身に起こったことを思い出しながら、南は軽く体を動かす。今回の戦闘において迅雷刹華を再び使用したが、どうやら前回ほどの消耗は無いらしい。そのことを確認した南は西山の方を見て一度頷く。
「心配ありがとうございます。なんか大丈夫そうです」
そんな南の反応に西山はほっと胸をなでおろす。
「良かったです……」
「……」
その横でみさがじっと南を見る。
「?どうしました?」
みさの様子を訝しんだ南が尋ねる。そんな南の胸にみさは手にしていたペットボトルを押し付ける。
「お疲れ。とりあえずそれでも飲んで一息つきなさい」
「あ、ありがとうございます……」
南は礼を言いながら、ペットボトルを受け取り、飲み始める。
「それから……」
みさは勢いよく南の尻を掌で叩く。
「!?」
衝撃と驚きで口に含んだ飲料を吐き出しそうになるのを南は必死にこらえる。
「あんた……前回戦った後にぶっ倒れたのに、私達に気を使って黙っていたそうね」
「あ、いや、その……」
みさの追及にどう答えたものかわからず南は狼狽える。そして、こういう時に助けてくれそうな福田や澤野の方を見るが、彼らも珍しく何も言わない。途方に暮れる南の肩にみさはそっと手を置く。
「あんまり、気を使いすぎるんじゃないわよ。私達……同じ仕事をしている仲間でしょ?」
「……」
みさの言葉に、南の胸中に何か温かいものが湧き上がる。この気持ちは一体何なのか、分からないが南はそれでも、頭を下げ、湧き上がるままのことばをみさに返す。
「ありがとうございます」
そんな南の様子をみてみさは鼻を鳴らす。
「分かればよろしい」
そして、そんな二人の様子を福田や遠渡星たちはうんうんと頷きながら見ていた。
「おっつかれさまー!」
そんなやり取りをしていると、あいねが防音ブースから出てきた。
「お疲れ様。無事配信は終わったみたいだね」
福田に声をかけられたあいねが頷く。
「はい!ジモクも無事退治出来ましたしね~」
あいねはそう言って南にピースする。そんなあいねにどう返したものかわからず、南はぎこちなくピースを返した。
「ククライの配信の方も、今回も邪魔されたことによりすっかり盛り下がったみたいです。少なくとも、今回の配信でこれ以上ジモクの追加出現は無いとみて良いでしょう」
澤野がそう言って、大型ディスプレイの一つにククライの配信の様子を映す。そこには、悔しがるククライと、配信のリアルタイム視聴者数がどんどん減っていく様子が映されていた。
その様子を見て福田がポリポリと後頭部を掻く。
「とりあえずは対処療法は一旦できたとみて良さそうだね。あとは……」
「今回の被害者……一ノ瀬先輩がどうやったら再度標的にならないようにするか……ということですね?」
みさの言葉に福田は頷く。そして、室内にいる者達は誰も対応策が思い浮かばないため押し黙る。
「……」
そんな室内の一同の様子を見回し、福田は小さく嘆息する。
「まあなんにせよ、とりあえずはひと段落ついたんだ。これからのことは明日以降にまた改めて考えよう」
福田の言葉に皆頷く。それを見た福田は軽く手を叩く。
「とりあえず、戦いは無事勝ったことだしパーッと行こうよパーッと。お金は出すからさ。とりあえず何食べる?」
そう言って福田はスマホを取り出し、フードデリバリー用のアプリを起動する。福田の言葉を聞き、そしてアプリを起動する様を見るやいなや、みさの目が妖しく光り出す。そんな様子を見た澤野が福田に耳打ちする。
「大丈夫なんですか……?彼女、スイッチ入ってますけど……」
「ま、独りもんだからね……」
どうやら、タダ飯のおかげで他のメンバーたちもとりあえずは目が輝いたらしいことを確認し、福田は苦笑いをしながらため息を漏らした。
「……んっ……」
時を同じくして、自室のソファの上で一ノ瀬は目を覚ます。
「だるいな……」
やけに頭がぼーっとする。何か恐ろしい目にあったような気がするのだが、それが何か思い出せない。改めてスマホで時刻を確認すると、夕飯時手前だった。
「ゆっくり寝てしまったな……。疲れてたのかな……」
一ノ瀬は軽く首を振り、伸びをする。すると、腹の音が誰もいない室内で鳴り響く。
「……今日はもう外食で済ますか」
そう言うと一ノ瀬はソファから起き上がる。そしてそれから軽く伸びをすると、玄関へと向かって歩き始めた。
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