fake town baby(5)
「大丈夫なんだろうか……」
工事現場の仮設事務所の一室に身を潜めていた一ノ瀬はぽつりと呟く。一人で薄暗い室内でじっとしていると、様々な考えが浮かんでは消えて不安が搔き立てられる。
――この、自分達が良く知っているはずなのに、どこかおかしい街は一体何なのか。
――自分を襲おうとしたあの化け物たちは何なのか。
――そして、自分を助けようとして戦っていた彼は何者なのか。
先程から何が何だか分からないことだらけではある。しかし、それに対して現在の自分が出来ることなど何もないということ、そして自分のために戦ってくれた人物の言葉を信じるしかないことも一ノ瀬はよく理解していた。
「待つしかない……ということか」
そう言って窓の方へと目線を向ける。窓の外には夕方の薄暗い空が広がっている。だが、その空も一ノ瀬にはいつもの空と別のもののように思えた。
「!?」
直後、すさまじい轟音と地震が起きる。
「……今のは……?」
驚いた一ノ瀬は恐る恐る窓の外を見る。直後、近くの空中に巨大な人型の黒い影が飛んでいくのが目に入る。
「あれって……」
先ほど自分を襲ってきた化け物を巨大化させたようなものが空中に吹っ飛んでいる。
「!?」
そしてさらに光線のようなもので撃ち抜かれる。ただでさえ訳が分からない状況で、立て続けに常識外れの光景が目に映り、一ノ瀬の頭はさらに混乱する。
「一体、何が……」
一ノ瀬がそう呟いた直後、さらに別の巨大な人影が現れる。
「……!?」
まるで子供の頃に見た特撮ヒーローのようなその姿に、一ノ瀬は思わず心を奪われる。しかし、その巨人はすぐに姿が消える。
「あれって……」
代わりに、先ほど自身が乗った覚えがある馬型のマシンが大量に空中に現れる。さらに、その中の一つから青白い光が放たれている。一ノ瀬は目を凝らして、その光を見る。
「もしかしてさっきの……」
光を放っているのは、先ほど自分を助けてくれた人物が放っている物なのだろうか。しかし今、一ノ瀬にその答えを教えてくれるものは居なかった。
『司馬君!前回同様に迅雷刹華を使ったら、おそらく君は力を使い果たすことになる!ここで一気に決め切るんだ!』
澤野の通信が南の耳に入る。
「分かってます!」
南がそう答えると同時、ガイダンス音声が流れる。
『これより、迅雷刹華を起動します。連続使用可能時間は10秒です。それでは、良い旅を!』
そして、前回機動した時と同じくアバターの身体から、低いうねりのような音が鳴り響かせ、青白い光を放ち始める。
「それじゃあ……行きますっ!」
南がそう言うや否や、スターゲイザーは空中のランジャ・チェイサーの上から文字通り目にもとまらぬ速度で跳躍する。
「はああああああああああああっ!」
スターゲイザーは南が叫ぶまま、進路上にいる大量のジモクを片っ端から蹴り上げ、斬り上げていく。そして、そのまま別のランジャ・チェイサーのところにたどり着くと、それを足の踏み場にして次の進路に向かって跳躍する。
「やあああああああああっ!」
再び、スターゲイザーは進路上のジモクを片っ端から吹き飛ばしていく。そして次のランジャ・チェイサーにたどり着くとスターゲイザーはそれを足場にし、再び空中へと飛び出していく。
スターゲイザーが目ではとらえることのできない速度で駆ける度、空中に青白い雷撃が幾重にも走り、そして桜の花びらが舞い散る。そして、その度に大量のジモクが空高く打ち上げられていく。
そんな中、迅雷刹華の起動時間の限界をガイダンス音声が告げ始める。
『3……2……1……』
その音声を聞きながら、スターゲイザーは限界まで空中を駆け抜け、そしてジモク達を空中に打ち上げていく。
「これで……ラストぉ!!」
南が叫ぶと同時に、スターゲイザーはジモクの一団を上空に吹き飛ばす。
『迅雷刹華、終了しました』
ガイダンス音声が終わると同時、スターゲイザーの背後に『加速終了』の文字が現れ、南の体感する世界の速度が通常のものに戻る。それと同時に、打ち上げられた大量のジモク達が先ほどよりも高速で上空に打ち上げられていく。
「……」
迅雷刹華を使用した反動か、南は全身からすさまじい虚脱感を感じて倒れそうになる。
(……以前使った時は迅雷刹華を使った直後に倒れた……だけど、今は!)
だが、南は倒れそうになるのを必死に堪える。そして上空に吹き飛ばされたジモクを睨みつけると、絞り出すように叫ぶ。
「アバターチェンジ、アーク!!」
再び、スターゲイザーは巨大な姿へと戻る。そして、右腕の腕輪の水晶部分を空中のジモクの群れへと向ける。水晶部分が輝きだすと同時、力を振り絞るように腹の底から南は叫ぶ。
「いっけぇぇぇぇぇぇ!アークッスマッシャァァァァッ!」
咆哮と同時、スターゲイザーの腕輪の水晶がまばゆい光を発する。そして、巨大な光の奔流が水晶から迸る。光の奔流はジモクの群れを捉え、そしてそのまま飲み込んでいく。
――直後、高い空で巨大な爆発が起きた。
「……これで……終わり!!」
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