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けっかおーらい(8)

 南達を追うジモク達の一部が速度を上げる。

「来るっ!」

 一ノ瀬は思わずつぶやく。

「早い……!」

 ランジャ・チェイサーで振り切れないどころか、さら肉薄すらし得るジモクの速度に南は戦慄する。そんな二人の内心を知ってか知らずか、ジモク達は再び掌をスターゲイザー達へと向ける。

「やばいっ!」

 それを見た南が強張った声を上げる。

「警戒しろ、南。なにやら様子がさっきまでと違う」

 遠渡星が警戒を促すと同時、南の視界に先ほどまでとは異なった内容の警告が大量に表示される。

「これって……?」

 南は疑問の声を上げる。それに対する回答は直後のジモクの行動によって示される。

 ジモク達がスターゲイザーに向けた掌……のすぐ下、手首のあたりからワイヤーのようなものが射出される。

「くっ……!」

 スターゲイザーは素早くハンドルを切り、それらの攻撃をかわす。

「まだだ」

 回避をした南達に遠渡星は警告する。その警告をトリガーに南も異変に気が付く。ジモク達が放ち、回避されたワイヤーはそのままスターゲイザーの前方にある壁に突き刺さる。そして、固定されたワイヤーを巻き取る勢いを利用しジモク達はさらに高速で移動しながらスターゲイザー達に迫る。

「なにそれ!?」

 焦りと驚きの言葉を口にしながら、スターゲイザーは腰から光の刃を引き抜く。直後、一体のジモクがワイヤーを利用した高速軌道の勢いを活かした跳び蹴りを一ノ瀬に向けて仕掛ける。スターゲイザーはその攻撃を手にした武器で受け止める。

「くうっ!」

「!?」

 相手の攻撃の重さに南は思わず声を漏らす傍ら、自身の眼前で停止したジモクの攻撃に思わず一ノ瀬は息を呑む。

「うわぁっ!?」

 それも束の間、攻撃を受け止めたことで生じた衝撃からランジャ・チェイサーの機体が激しく揺れ、一ノ瀬は思わず声を上げる。

「このぉ!」

 スターゲイザーはハンドルを強く握り、機体を抑え込みつつ、相手の攻撃を弾き飛ばす。しかし、ジモク達の攻撃はそれだけでは終わらない。他のジモク達が一斉にワイヤーを利用して飛び掛かる。

「このお!」

 スターゲイザーは銃を乱射し、敵をけん制する。一部のジモク達は光弾を受けて落下するも、他のジモク達は銃撃を回避し、そのまま襲い掛かってくる。スターゲイザーはランジャ・チェイサーの機体操作で回避しつつ、それでもさばききれない攻撃を手にした剣で、蹴りで受け止める。

「な、なんとかなった……」 

 ここまでの攻防で、とびかかってきたジモク達の攻撃は一旦凌ぎ切れたらしい。そのことを理解した南は一度大きく息を漏らす。その後ろの一ノ瀬はと言うと、流石に恐怖に晒されすぎたのか表情が固く引き攣っている。しかし、それが妙な色気を生んでいるようも南には感じられた。

「今回の攻撃は捌ききれたが、次の攻撃が来る。気を引き締めろ」

 そんな南に遠渡星が警告する。

「キリがない……どうすれば……」

 呟く南の耳に再び澤野からの通信が入る。

『司馬君!今から言う通りのコースで移動してくれ!』

 それと同時に、南の視界に地図による経路案内とナビゲーションの矢印が表示される。

「これって……」

 それを見た南は息を呑む。

『大丈夫大丈夫。澤野君優秀だからさ、信じていいよ。多分なんとかなるって』

 そんな南の内心を察したのか福田が緩く声をかける。その向こう側からみさが『んないい加減な……』とぼやく声が漏れ聞こえてきた。

「……わかりました」

 それを聞いた南は意を決する。それと同時にスターゲイザーはハンドルを強く握り込む。

「先輩、こっからハードになります。しっかり俺につかまって下さい」

「え、これ以上ーーーーーー!?」

 困惑の声を上げる一ノ瀬に構わず、ランジャ・チェイサーはさらに加速する。その速度に、一ノ瀬の声が引き延ばされていく。そして、その声を辿るかのようにジモク達も加速する。

 ――それからまもなく、スターゲイザー達は終点一つ前の駅にたどり着く。

「ここだっ!」

 南が叫ぶと同時、ランジャ・チェイサーが駅のホームに飛び乗る。さらにそのままホームを突っ切り、反対側の線路へと飛び込んでいく。


「おっとー!?これはスターゲイザー大丈夫でしょうか!こちらの線路は反対方向に向かう電車が来る上にトンネルが狭くて逃げ場がありません!」

 戦いの様子を実況していた宇宙野いるかが驚きの声を上げる。それに対してコメント欄には『どこいくねーん!?』『アカーン!』『自滅かよ』等と言ったコメントが投げ込まれていた。


「むっふっふっふー!あいつら焦って判断誤ったね!でもぉ……このまま地下鉄と激突してジ・エンド!なーんてつまらないよね?私達の手でぇ……しっかり断罪しないとだよねぇ?」

 ククライが意地の悪い笑みを浮かべながら自身のリスナー達に問いかける。それに対する反応は当然ごとく『もちろんだ』『俺達の手できっちり裁かないとな』『潰せ潰せ』等と言ったものだった。


 反対側の線路にまで速度を緩めることなく追いかけてくるジモク達を見て南は一人頷く。

「やっぱり……追って来てる!」

 ジモク達は、スターゲイザー達を追い立てるように、掌を向けながら速度を上げる。

「さっきみたいな弾を撃つ攻撃をするぞ……って脅して、俺達をさらに早く電車にツッコませようとしてるってことか……?」

 その様子をみた一ノ瀬が呟く。

「でしょうね……」

 南は呟く。そして、スターゲイザーのハンドルを握る手に力が入る。そんな南に再び遠渡星が声をかける。

「ふむ。なかなかに悪辣な手合いだな。ここは一つ、彼らに目にものを見せてやるとしよう」

「はいっ!」

 南は頷くと、今度は澤野から通信が入る。

『司馬君!これからカウントダウンを開始するよ!0になると同時に……分かってるね?』

「はい!」

『それじゃあ行くよ!』

 南が力強く応えたのを確認し、澤野がカウントダウンを開始する。


『5』

 程なくして、地下鉄車両のライトの光が南達の視界に映る。地下鉄が駆け抜けることにより生じる轟音が二人の耳朶を、そして地下鉄が駆け抜けることにより生まれる風圧とトンネルに伝わる振動が二人の身体を揺らす。

『4』

 スターゲイザーは身体を機体に押し付けるように沈み込ませる。そして、その後ろで一ノ瀬がスターゲイザーに掴まる手に力を込める。

『3』

 宇宙野いるかが『このままじゃ激突!どうなっちゃうのー!?』と悲鳴をあげ、コメント欄も『危ない!』『大ピンチじゃん!』等と盛り上がる。

『2』

 ククライが『追い詰めたよぉ……!今度こそ……断罪断罪!』と叫び、それに呼応してコメント欄が『断罪!』コールで埋めつくされる。そして、ジモク達が地下鉄車両の衝突と同時に攻撃を加えようと飛び掛かる。

『1』

 地下鉄車両が眼前まで迫り、澤野のカウントの後ろで、みさや西山が息を呑む気配が伝わる。

『0!』


 その瞬間、攻撃をしようとしたジモク達の眼前からスターゲイザーの姿が消えた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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引き続き、この作品をよろしくお願いします。

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