けっかおーらい(6)
「よしっ!仕様通りにバッチリ動いてる!」
星降神社の配信室でスターゲイザーの戦いの様子を見ていた澤野が指を鳴らす。
「この調子でいけば、一ノ瀬先輩の身の安全は一旦確保できそうですね」
その背後でみさはほっと胸をなでおろす。
「そうだね。とりあえず一旦引き離した先で被害者を隠し、その上でジモクを殲滅しよう。ちなみに隠す場所の選定、出来てる?」
福田に問われて西山が頷く。
「はい。出薄駅周辺の空間データやセンサー配置データを統合して、カメラや人感センサーに検知されないポイントを複数個所算出しました。後は状況を見て適切な場所に司馬さんをナビゲート出来れば……」
「そ。ありがと」
福田は西山に礼を言うと、電子タバコを一服する。それから福田はみさの方を見て尋ねる。
「ところでさ、なんで馬?」
福田に尋ねられて、みさは後頭部を掻き、目をそらしてから苦笑する。
「いや、最初はバイクにしようと思っていたんですけどね……。こっちのほうがウケるかなって……ちょっと悪乗りをしてしまいましてね……。仕様考えていたころに丁度息抜きで、母のコレクションのレッツパーリィな戦国モノの舞台の円盤とか見てしまったのもあって……」
「……なるほど」
福田は頷く。それからここ連日のドタバタを振り返る。そして、会社の立ち上げや配信の企画、スターゲイザーの装備の検討など大量のタスクを短期間にみさに振っていたことを福田は思い出す。
「……とりあえず……ひと段落ついたところで休ませた方が良さそうだな……」
福田は小さく呟くと、配信室内にいる疲れた顔をした一同を軽く眺めまわした。
「もー!また邪魔をするー!これで何度目!?あいつ本当に許せない!!」
断罪の様子をライブ配信で実況していたククライは、度々現れては断罪を妨害するスターゲイザーへの怒りを露にしていた。
『なんかもう段々馴染んできたな』『準レギュラー味出てきた』
その様子にリスナー達は呑気なコメントをする。ククライはそんなコメントに対し、寝転がり手足をじたばたさせながら抗議する。
「断罪の邪魔をするあんな奴が準レギュラーなんてやだやだやだやだやだ!」
そんなククライのリアクションにリスナー達も反応する。
最初は『うわっ、駄々こねだした』『可愛い』といった、最初はククライのリアクションに対するものが主流だった。
『でもさ、実際あんな奴ら困るよね。ここ数回、本当は断罪されるべきだった奴らが野放しになってる』
しかし、そんなコメントが流れた瞬間にリスナー達の空気が変わりだす。
『それはそうなんだよな』『由々しき事態』『邪魔する奴も悪だよな、やっぱ』
そういったコメントが、それに込められた感情がスターゲイザー達へと向けられ始める。
コメント欄が活気づく。その様子を見たククライは目を細めて舌なめずりをすると、おもむろに立ち上がる。
「そうだよね……!許しちゃいけないよね?逃がしちゃいけないよね……。だから……どっちもまとめて、ぶっ潰してやる」
ククライがそう呟いた瞬間、ジモク達は一斉に四つん這いになった。
『司馬さん、出薄の方に現在建設中の倉庫街があります。そこでしたら身を隠せる上に、道中にセンサー類が設置されていないため、一ノ瀬さんをしばらく安全に隠すことができると思います。経路情報を送りますので、そちらへ向かってください』
「分かりました」
西山の通信に南は頷く。それと同時に、南の視界に地下鉄の線路のマップ情報や、ナビゲート情報が表示される。
「よし……」
それらを確認した南は一人頷くと、ランジャ•チェイサーのハンドルを強く握る。
「……」
そんな南ことスターゲイザーの様子を一ノ瀬は目を細めながら観察する。
「……?先輩、どうしました?」
視線を感じた南が思わず尋ねる。
「先輩?」
全く見知らぬ特撮ヒーローじみた存在に突如として先輩と呼ばれ、一ノ瀬は思わず困惑と疑問が入り混じった声を上げる。
「あ」
そんな一ノ瀬の反応に、自分の発言が迂闊だったことを認識し、思わず南は声を上げる。そんなスターゲイザーの様子を注意深く観察しながら、一ノ瀬は疑問を口にする。
「君……そんな格好してるけど同じ大学の学生……?そういえば声も聞き覚えがあるような……」
「え、えーと……」
正体は極力秘匿しろとみさに言われたことを思い出しながら、この場をどうやって誤魔化したものか……と南は言い淀む。
『あんた……何やってんのよ……』
そんな二人のやり取りを聞いていた、みさからの通信が入る。その声色には明らかに呆れの色が混じっている。
「いや……その、つい、うっかり……」
南の反応に、みさがため息を漏らす。
「?さっきから君は一体誰と話して……」
側から見ると、自分の質問にも答えずに独り言を言ってるようにしか見えないスターゲイザーに一ノ瀬は困惑する。
「へ!?ああいや、その……」
南がしどろもどろになっていたその時――
「!?」
突如、電子的な警告音が鳴り響く。
『し、司馬さん!気をつけてください、ジモクの反応がそちらに近づいています!』
「え……?」
緊張感を孕んだ西山からの通信に南は困惑する。それから視界に表示されているマップ情報を確認すると、確かに自身に向かって大量の何かが接近しつつあることが示されていた。
「まさか……」
スターゲイザーは恐る恐る、背後を振り向く。それに釣られて、一ノ瀬も背後を見る。
「!?」
そして二人は思わず息を呑む。彼らの視界には四つん這いの状態で力場を展開し、滑走しながら高速移動するジモクの大群が迫りつつあった。
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