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けっかおーらい(5)

「!」

 警戒する南の視界にアラートメッセージと敵の攻撃予測が表示される。直後、複数のジモクが構えた掌から光弾を発射する。発射された光弾がスターゲイザーと一ノ瀬に向けて飛来する。

「わあっ!?」

 敵の攻撃に思わず一ノ瀬は両腕で顔面を覆い、目を瞑る。

「させないっ!」

 直後、一ノ瀬は閉ざした視界の中で風圧のようなものを全身で感じる。

「え?」

 自身の周囲に突如として発生した突風のようなものと、予想していたダメージが自身に発生しなかったことに戸惑いを感じ、一ノ瀬は両手を下ろして恐る恐る目を開ける。目の前には扇子のようなものを握ったスターゲイザーが立っている。

「もしかしてその扇子で……」

「はい。敵の攻撃は全て吹き飛ばしました」

 一ノ瀬に尋ねられて南は頷く。

 だが、ジモク達の攻撃は止まらない。二人の会話にも構うことなく、ジモク達は手足から光を発すると、地面を滑るように移動する。そしてスターゲイザー達を取り囲むと、ある者はワイヤーを射出し、ある者は手をメリケンサックのように変形させながら飛びかかり、殴りかかる。

「ま、また来たっ!?」

 またも激しい攻撃の嵐に晒されて、一ノ瀬が悲鳴を上げる。

「見えてます!」

 敵の攻撃に南は反射的に叫ぶ。スターゲイザーは咄嗟に腰に装着された筒を手に取る。直後、筒から光の刃が形成される。スターゲイザーは手にした光刃をふるい、ジモク達の手を一閃の元に切り落とす。さらにその反動を利用して扇子をふるい、小さな竜巻を巻き起こす。小さな竜巻は射出されたワイヤーを巻き取り、ジモク達を引き寄せる。

「このお!」

 さらに南は吠える。そして、スターゲイザーは光刃を振り、払い、突き出し、さらには蹴りを繰り出し、引き寄せられたジモク達を次々と倒していく。


「つ、強い……」


 その様子を眺めていた一ノ瀬の口から正直な感想が漏れる。


 だが、敵の攻撃はまだ終わらない。

『司馬君!上だ!』

 澤野の声が南に警告する。

「分かってます!」

 南が応じ、スターゲイザーは頭上を見る。その視線の先には跳躍したジモク達が落下の勢いを利用して攻撃しようとしている。さらに、先ほどの滑走攻撃に加わらなかったためにスターゲイザー達から離れた位置にいるジモク達が掌を向けて、光弾を発射しようと身構えている。その瞬間、南の脳裏に遠渡星の声が響く。

「ふむ。南、ここまでの一連の攻防で既に敵の一角は崩した。この全方位からの攻撃を凌ぎつつ、この場からの離脱をするための一手は……分かるな?」

「はいっ!」

 南が遠渡星の声に応じると同時、南の眼前に複数のアイコンが表示される。南はその中の一つ、馬のピクトグラムが描かれたアイコンに手にした扇子で突く。直後、ガイダンス音声が鳴り響く。

『ランジャ・チェイサー、スタンバイ!良い旅を!』

 それと同時に地上のジモク達の手から光弾が発射され、空中のジモク達からは変化させた手からの打撃が繰り出される。直後、爆風のようなものが巻き起こる。


「おおっと!敵からの波状攻撃が一気にスターゲイザーに襲いかかる!果たして彼は無事なのかー!?」

 内心の心配を隠しつつも、宇宙野いるかはスターゲイザーの戦いを実況する。

『うわー、敵の攻撃えげつな!』『これどうにかなるのか?』

 実況を聞きながら観戦していたリスナー達からも心配のコメントが投げ込まれる。

 ――直後、空中にいたと思しきジモク達が吹き飛ばされて床を転がる。さらに吹き荒れてた暴風が収まり、中継されている映像が明瞭になる。そこには、頭にハンドル、後部には六本のマフラーがついた馬のようなマシンに乗ったスターゲイザーと一ノ瀬の姿があった。

「おおっと、スターゲイザー無事だ!さらに見たことのないマシンに乗っているー!」

 いるかの言葉と、マシンに乗ったスターゲイザーの姿がリスナー達の興奮を一気に加速させる。

『どうやって敵の攻撃凌いだんだ』『何あのマシン?』『馬イクじゃん』

 いるかはそんなコメントを横目で見る。

「さあ、この一瞬でどういった攻防があったのか確認をしてみましょう!」

 それから、前置きをしつつスターゲイザーがジモクの一斉攻撃を捌いたシーンのスロー再生VTRを流す。

 VTRでは、スターゲイザーが手にした扇子で突風を発生させ、光弾を全て吹き飛ばす。それと同時に、どこからともなく現れた馬型メカが高速でスターゲイザー達に駆け寄り、そのまま跳びあがる。そして、そのまま空中から攻撃を仕掛けようとしたジモクに体当たりをし、吹き飛ばす。それを確認したスターゲイザーは一ノ瀬を脇に抱えるとすぐさま馬型メカへと跳び乗る。

『なるほど、こうなっていたのか』

 VTRにより一部始終を確認したリスナー達は納得のコメントを漏らした。


 ランジャ・チェイサーのハンドルを握った南は一人つぶやく。

「よし、これなら……」

「ああ、一旦引くぞ」

 南のつぶやきに遠渡星が応じる。それからスターゲイザーはランジャ・チェイサーのハンドルのアクセルを絞り込む。南のアクセル操作に呼応し、甲高い唸りをあげてランジャ・チェイサーが一気に駆け出す。

『司馬君!大量のジモクによって地下鉄の出入り口は埋め尽くされてる!脱出には地下鉄の線路を使うんだ!』

「分かりました!」

 南が応じると同時、視界にナビゲーションのための矢印が表示される。スターゲイザーはそのナビゲーションに従いながらランジャ・チェイサーを操る。まずは駅の改札を勢いよく飛び越え、そして昇降階段を駆け下りて駅のホームへと躍り出る。そしてそのまま線路へと飛び降りると、すさまじいスピードで一気に駆け出す。

『よしっ!そのまま一気に終点の出薄駅まで駆け抜けるんだ!』

「了解です!」

 澤野の指示に南は応じ、ランジャ・チェイサーが速度を上げる。地下鉄の線路の暗闇の中で、力強い蹄の音が高速で鳴り響いた。

 



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