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けっかおーらい(4)

 宙吊りにされている一ノ瀬の周囲に突如、大量の黒い人型のようなもの達が現れる。

「なんだ......?」

 驚きの声をあげながら、一ノ瀬は自身の周囲を観察する。そして、その人型達が手にしたワイヤーのようなもので天井からぶら下がっていることに気がつく。

「こいつらは......?」

 突如として現れた人型――ジモクに対し、一ノ瀬は疑問を口にする。直後、まるで一ノ瀬の言葉に応じるかのように大量のジモク達が全身の目を見開く。そして、一斉に一ノ瀬の方に目線と耳を向ける。

「!?」

 予期せぬ大量の視線、そこに込められた身勝手な怒りや懇願にさらされた一ノ瀬は、その気味の悪さに思わず息を呑む。しかし、そんな一ノ瀬の内心など知ってか知らずか、大量のジモク達は片手の掌を一ノ瀬へと向ける。


 断罪の実施を前にテンションの上がったククライが掛け声を上げる。

「それじゃ皆さんご一緒に!だーんざい!だーんざい!だーんざい!だーんざい!」

 そんなククライに応じて、リスナー達の断罪を求めるコメントも加速する。


 ジモク達が一ノ瀬に向けた掌から光のようなものが発せられ始める。それが一体何を意味するのかは分からないが、一ノ瀬は身の危険を本能的に感じていた。

「なんなんだ……なんなんだよ、これは!?」

 湧き上がる恐怖に耐えきれず一ノ瀬は吠えるが、それに応えるものはもちろん誰もその場には居ない。


「もうだめ……なのか?」


 ――そう、ただ一人を除いては。

「今助けます!」

 突如、コンコースに一ノ瀬には聞き覚えのある声が響く。それと同時、一条の光のようなものがまるで独楽のように回転しながら飛来する。光は次々とジモクがぶら下がっているワイヤー、そして一ノ瀬を吊るしているワイヤーを切り裂いていく。そしてその光はそのまま、コンコースの壁に突き刺さる。

「!?」

 どうやらその光は、SF物などでよく見るビームサーベル等の類のものであるらしい。形成された光の刃は、突如消失し、その発生元と思われる筒がそのまま地面に向かって落ちていく。

「うわっ!?」

 それと同時、一瞬の無重力を感じた後に始まる急速な落下に一ノ瀬は悲鳴を上げる。

「よいしょっ!」

 だが、その体が何者かに抱き止められ、落下が停止する。一体誰が……?と疑問に思った一ノ瀬は、周辺の状況を確認しようと視線を動かす。そして、自分を今しがた助けた存在について目視•確認した一ノ瀬は呆気に取られる。まるで子供の頃に見た特撮ヒーローを平安武士風にアレンジしたような存在――そう、スターゲイザー風雷華が一ノ瀬を抱き抱えている。

 そのままスターゲイザーは一ノ瀬を抱えたまま着地する。

 それと同時に周囲に大量のジモクが地面に落ちてくる。ジモク達は地面に対し四つん這いの姿勢になりながら落下する。設置の瞬間、ジモク達の手足からは光る力場のようなものが展開され、そのまま柔らかに着地する。そしてジモク達はそのまま睨めつけるようにスターゲイザーを見上げる。

「君は……?」

 とりあえず自身の無事を実感した一ノ瀬はスターゲイザーに疑問の声を投げかける。

「えーと……まあ、助けに来た者です。お待たせしました」

「いえいえ、それはどうも……」

 それに対する返答はかっこいい見た目と裏腹の気の抜けるものだったことに一ノ瀬は困惑する。しかし、助けに来たというのは事実らしい。気がつけば一ノ瀬を縛り付けていた全身の拘束も解かれている。

「立てます?」

 スターゲイザーに問われて一ノ瀬は頷く。スターゲイザーは一ノ瀬を下ろすと、改めて周辺を見回した。

「まずはここから逃げないと……かな?」


 配信室でスターゲイザーの戦況、および各種配信の状況を確認しながら福田は呟く。

「今回のジモクはワイヤーと手足から発生させた力場を使うタイプか……」

「……」

 福田の言葉にみさは考え込む。

「どしたの?」

 福田に問われてみさがハッとした顔をする。

「ああ、いや……ちょっとあのジモクが使う能力……最近読んだ漫画に似たようなのがあったなって」

「へぇ?どういう漫画?」

 みさの話に少し興味がわいた福田が尋ねる。

「異能バトルものですね。異能を持った人類が大量に発生した世界で主人公たちが非合法な自警団的な活動をするっていう話なんですが、その作品の主役たちの持つ異能があんな感じでした」

「なるほどね」

 みさの言葉に福田は顎に手を当てて考え込む。

「もしかしたら今回のジモクは本当に自警団的な活動のつもりなのかもしれないね」

 福田の言葉にみさは顔をしかめる。

「高町幸音が自分達の想定するイメージから外れたことで、リスナーのコミュニティが危機に陥った……これを解決するためには自分達で暴力で解決するしかない……みたいなロジックですか?」

 福田は頷くと電子タバコをふかす。そして、吸い殻を抜き取ると携帯灰皿に入れる。

「澤野君。今回のジモクを『自警団<ヴィジランテ>型』としよう。それと今回の戦い方について改めて司馬君に指示を」

「分かりました!」

 澤野は頷くと、南との通話を開始した。


『司馬君、聞こえるかい?』

「はい、聞こえてます」

 澤野からの通信に南は応じる。

『戦闘前にも一度伝えたけど、迅雷刹華は一度使用すると君が戦闘不能になる可能性が高い。出来れば最後の手段として使用は極力避けるんだ』

「分かりました」

『それから……そのコンコースには前回の市民ホールと同様に大量の数のジモクがいる。君は一旦そこから被害者を離脱させるんだ。今回用意した"新装備"……あれを使えば出来るはずだよ。経路は俺の方で指示するから』

「了解です」

 南は澤野に応じながら周囲のジモク達を見回す。どうやらジモク達はスターゲイザーの隙をついて一ノ瀬を攻撃するつもりらしい。

 ――戦いの火蓋が今、切られようとしていた。


 


 

 

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