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「そ、そんなっ!」

 昼下がりのコンビニエンスストア・24フレンズ草応大学星降キャンパス前店のバックヤードに、悲痛な男性の声が響き渡る。

「すみません」

 そんな男性の声に淡々と応じる少年の声……南のものだ。

「奨学金も受けられるようになったし、これからは学業に専念しようかと思いまして……」

 南は目の前の中年男性こと店長にそう言いながら頭を掻く。そう、南は朝の星降神社の騒動の後、バイトに来ていた。その際、バイトを辞める意思を店長に伝えたのだが……。

「だ、だからってすぐにでもバイト辞めなくても良いじゃない!」

 店長はそう言うと、涙ぐみながら南の両肩に手を置く。

「最近は牧野さんが問題起こした上に辞めちゃうとか、夢野さんもなんかトラブルに巻き込まれかけたとかで余計な仕事増えて大変なんだよ!しかもそこらへんのゴタゴタで嫌気さした一部のバイトが辞めちゃうし!その上になにも問題起こさないバイトの君まで辞めてしまったら仕事が回らなくなっちゃう!」

 そう捲し立てながら店長は南の両肩を大きく揺する。

「お、お、お、お、お!?落ち着いてください、店長」

 急に揺すられて驚いた南が奇声を上げてから店長を宥める。

「頼むよ!頼むよ!シフト減らしても良いから、代わりのバイト確保するまでは辞めないでよ〜!」

 しかし、店長の頼み込みは激しさを増すばかりだ。


 ――その時、南のスマートフォンが通知音を鳴りびかせる。


 店長は南を揺する手を止める。

「……」

 南は懐からスマートフォンを取り出し、画面を確認する。

「店長、注文です。勤務時間的に最後の配達になりますが……」

 南がそう言うと店長は頷く。

「うん、分かったよ……。とりあえず退職についてはまた今度改めて話させてもらえる?」

「分かりました」

 南が頷くのを確認すると、店長はレジの方へと出ていった。

「……さてと」

 それを確認してから南は自身のスマートフォンの画面を改めて確認する。その時、南はふとあることに気がつく。

「これ……配達先大学じゃないか」

 南は一人そう呟くと、近くの窓越しに目と鼻の先にある大学を見る。

(こんな距離でデリバリーサービス使うなんて……どんな怠け者な人なんだろう)

 そんなことを考えながら、南は配達の支度に取り掛かる。その時、注文の品目の中にエナジードリンクやら熱冷ましやらが並んでいることを南は気にも留めなかった。


 南が配達の支度に取り掛かってから程なくして、みさとあいね、西山は大学のキャンパス内を歩いていた。

「……まさか大学までついてくるほど暇だとは思わなかったわ」

「へへー」

 みさがそう言うと、あいねはそう言うと両手でピースをする。

「まあ、私と西山さんは学事にちょっと用があっただけし、それも済んだからもう帰るけどね」

 やれやれと言った感じでみさはため息を漏らす。そんなみさにあいねは軽く口を尖らせる。

「えー、せっかくだからお茶してこうよー。天下の草応大学のキャンパス内のオシャレカフェ入ってみたいー」

 あいねば冗談めかした物言いをする。そんなあいねの様子を見て西山は苦笑する。

「こらこら、西山さんだって仕事中なんだから、迷惑になるようなこと言わない」

 そう言ってみさはあいねに軽くデコピンをする。

「ちぇー」

 あいねがわざとらしく舌を出す。そんな微笑ましい姉妹の様子のじゃれ合いを見て西山も釣られて笑う。

「わ、私は大丈夫ですよ。福田さんからも今日はもう上がって良いって言われてますから」

 そんな西山の言葉にみさは苦笑する。

「そうですか?じゃあお言葉に甘えて……」

「やったー!……ってアレ?」

 みさが言い終わる前にあいねははしゃぎ出すが、その最中に何かに気がつき、驚きと疑問が入り混じったような声をあげる。

「どうしたのよ?」

 急なあいねの挙動の変化にみさは訝しむ。

「あそこ、司馬君が歩いてる」

 あいねの言葉にみさが首を傾げる。

「司馬が?別に珍しくないでしょ、あいつだってここの学生なんだから」

 みさの疑問にあいねは頷く。

「そうなんだけどさ。でも、バイト先の制服着てたよ」

「配達……ってコト?あんな目と鼻の先にあるコンビニから?」

 みさの疑問にあいねは頷く。

「ほーう……どんな不精者がそんな注文したのかしら。面白そうだから、ついて行ってみる?」

 みさの言葉に今度は西山とあいねが苦笑した。


「えーと……配達先はB棟の五階……五〇二号室か」

 南はスマホの画面を見つつ、一人呟くと校舎内に足を踏み入れる。中に入った南はエレベーターに乗り込み、指定された配達先へと向かう。そしてたどり着いた先は各教員に割り当てられた個室だった。

(注文したの、先生なのかな?)

 南はそんなことを考えながら個室のドアを軽くノックする。

「……?」

 しかし、誰もノックに応じる気配がない。

(留守かな……?)

 南はそんなことを思いながら、軽くドアノブに手をかけて、回す。すると、ドアはすんなりと開いた。

「あれ……?」

 南は軽く驚きつつ、室内を覗き見る。

「……!?」

 そこで目にした光景に、南は思わず息を呑む。室内は大量の紙が散乱している。そして、その先で机に倒れ込んで意識を失っている男性がいた。突然の事態に困惑しながら南はつぶやいた。

「え、えーと……事件現場?」

 


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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