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EGO~eyes glazing over(2)

 スターゲイザーは一度身を沈めると、そのまま軽やかに飛び上がる。身に纏った衣をたなびかせながら降り立った先は、夢野が磔にされている十字架とジモクの間。スターゲイザーは音もなく着地をすると、左の腰に一度手を当てて、そのまま右に振り抜く。


「……」


 直後、夢野を、取り囲んでいたジモク達が音もなく引き裂かれ、そのまま霧散していく。そして、振り抜いたスターゲイザーの右手には、筒状の物が握られている。そして、その筒の先からは光の刃が出力されている。


「ふう……間一髪、間に合ったか……」

 なんとか断罪前に夢野を助けにこられたことに南は胸を撫で下ろす。

「そのようだな」

 遠渡星が同意していると、通信を通して澤野の歓声が耳に入る。

『よし!新しいアバター、上手く動いてる!』

「そうみたいですね。これならやれそうです」

『おわっ!?通信つけてたか、ごめん』

 予期せぬ南の反応に、澤野は驚きながら謝罪する。

「いえ、大丈夫です。しかしさっきの桜の花びらは……」

 予期せぬエフェクトが出たことに南は困惑して尋ねる。その問いに今度はみさが答える。

『ああ、あれは私がつけたのよ。演出で特に意味はないわよ』

「意味ないんですか!?」

 南は素っ頓狂な声をあげる。

『無いわよ。単純にカッコよくてリスナーにウケた方が信仰集まると思ってつけただけ』

「そういうもんですか……」

 釈然としない気分で南はみさに尋ねる。

『そういうもんよ。なんか問題あった?』

 みさに言われて南は改めて考える。

(確かに格好悪いよりは良いか……)

 そう考えた南は、改めてみさに答える。

「問題無いですね。むしろ問題は……」

『問題は?』

「これあったんなら、事前に言っておいていただけたら助かったってことですかね。市民会館の前で間抜けな立ち往生しちゃったし」

 南は少し気恥ずかしそうに言う。

『いや、ほんとゴメン……』

 そんな南の回答に、澤野が通話越しでもわかるほどに沈みながら謝罪をする。

『なんとか連日徹夜してさっき間に合わせたんだ……。仕事トロくてすまない……ワイはカスや……カス研究者や……!』

「……お、お疲れ様です。なんとか間に合わせていただけたんで大丈夫です……助かりました……」

 キャラが崩壊しかかっている澤野にどう反応したものかと南は困惑しつつ礼を言う。

(人間、ちゃんと寝ないと壊れるんだな……)

 とりあえず一つ大事なことを学んだ南は、澤野を安眠させてあげるためにも一刻も早く夢野を助け出さなければ、と決意を新たにするのであった。


 ――そんな内情も知らず、ククライは新たな姿のスターゲイザーに怒りを露わにする。

「もー!なんなのよー!姿違うけど、この間邪魔したアイツなの!?わかんないわかんないわかんないわかんない許せない!」

 そんなククライの反応にコメント欄は盛り上がる。

『キレてて可愛い』『可愛そうで草』『わからせか?わからせか?』

 そんなコメントにも構わずククライは叫ぶ。

「あんな奴のせいで、悪いやつが野放しになっちゃうんだよ?そんなの良くないよね?許せないよね!」

 ククライの言葉にリスナー達は同意する。

『それはそう』『トレパク絵師を構うやつは同罪』

 それらのコメントにククライは意地の悪そうな笑みを浮かべる。

「そうだよねぇ!?私たちの正義の断罪を邪魔するならアイツも悪いやつだよね?だったらアイツも断罪対象!」

 リスナー達はククライの言葉に呼応する。

『断罪!』

『断罪!』

『断罪!』

『断罪!』

『断罪!』

『断罪!』

 ククライの配信の盛り上がりが加速度的に増していく。


「やっ!」

 スターゲイザーは手にした刃で夢野の拘束を破壊する。

「うわ……うわあぁぁぁぁぁっ!?」

 拘束が解かれた瞬間に、重力のままに自由落下が始まり、夢野は思わず悲鳴をあげる。スターゲイザーはそんな夢野の身体を抱き留め、お姫様抱っこをする。

「……」

 理解が追いつかない夢野は目をぱちくりとさせている。

「……大丈夫ですか?」

「おひょおう!?」

 得体の知れないヒーロースーツのようなものを身に纏った人物に話しかけられると思っていなかった夢野は思わず奇声を発する。

「……大丈夫です?」

 夢野の異常な返事を訝しんだスターゲイザーは改めて問う。そんなスターゲイザーの落ち着いた態度が功を奏したのだろうか。夢野は少し落ち着きを取り戻し、まともに返事をする

「は、はい……」

「なら良かった」

 夢野の無事を確認できた南は改めて講堂の座席を見渡す。右を見てもジモク、左を見てもジモク、そして正面を見てもジモク。そこには見渡す限りの席を埋め尽くす大量のジモクがいた。今からこの囲みを突破し、夢野の安全を確保しなければならない。

「さて、どうしたものか……」

 南はぼやく。


「――!?」


 その瞬間、目の前のジモク達に異変が起きていることに南は気がつく。ジモク達が身体を変え、まるでコートを纏った人のような姿に変わる。そして、そのコートの中には大量の銃剣が仕込まれている。ジモク達は整然とした動作で、コートの中から銃剣を二本取り出し、片方を順手、もう片方を逆手で持つ。そして、手にしたそれらで十字を描く。


「おおっとー!?ここで怪物が姿を変えたー!?これは果たして強くなったのか!スターゲイザーさんはこれにどう立ち向かうのか!?さあ、どうなる!?」

 宇宙野いるかは、ジモクの形態変化を目の当たりにした驚きを隠しながらも、実況を続ける。そんないるかの実況にコメント欄は活気付く。

『悪役怪人の強化はやっぱいいよね』『盛り上がってまいりました』

 リスナー達が展開に乗ってきたのを感じ、いるかはさらに応援を盛り上げようとする。

「みんな、スターゲイザーが勝てるように応援しましょう!せーの、がんばれー!」

 そんないるかの掛け声にコメント欄が応じる。

『がんばれー!』『ここからだぞー!』

 そう言ったコメント、そこに乗せられた思いがスターゲイザーの力になると信じてあいねは祈る。

(お願い、司馬君……。勝って……。そしてつかさちゃんと無事に帰ってきて!)

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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