REAL×EYEZ(5)
ククライの配信は、本番が始まる前からゲリラライブにより既に盛り上がりが最高潮に達していた。
「やっほー!今日もみんな元気かなー?みんなのAIバーチャルストリーマー、ククライちゃんだよー!」
ククライはそう言って勢いよく右手を振る。配信画面上には『今日のゲリラライブは最高だった』『やっほー!』などといった視聴者のコメントが次々と流れている。
「それじゃあ、今日も元気に~断罪断罪~!」
断罪を告げるククライの発言に、コメントが盛り上がる。
「今日の断罪は~?こちらっ!」
ククライがそう言って両手の人差し指で何かを指すポーズをとる。その指先には、夢野こと春サクラが書いたイラストが表示される。
「なんと~、とあるバーチャルストリーマーの生誕一周年記念に、トレパク絵を送った不届きな絵師がいるんだってさ!」
ククライの問いかけにコメント欄が活気づく。『最悪』『そこまでして目立ちたいのかよ』『筆折れ』等のコメントが次々と流れていく。
「そんな人が一生懸命描いた絵をパクって、自分が推しに認めてもらおうなんて狡っからいよね~」
画面上のククライはやれやれといった感じで肩を竦める。
「そんなことされたら推されてるバーチャルストリーマーの方だって迷惑!って感じだよね~?」
ククライは今度は画面上で手を交差させる。その背後では『NO!』の文字が大量に浮かんでいる。
「そしたら案の定、絵師は大・炎・上!特定班の手で調べ上げた個人情報までバラまかれちゃったんだって、こわ~い」
ククライはわざとらしい怯えるようなポーズをとる。その背後では炎のエフェクトが吹き上がっている。その様子にコメントでは『自業自得』『そりゃ燃えるわ』『死ねばいいのに』と言ったコメントが溢れかえる。
そんな中、ククライはカメラに目いっぱい顔を寄せる。そして、リスナー達に囁きかける。
「そんなやつは~ダ・ン・ザ・イ!されるべきだよね~?」
ククライの煽りを受けて、動画のコメント欄が一気に『断罪』という言葉で溢れかえる。その様子をみて、ククライは一度カメラから離れると、楽しそうに手を叩きながらコールする。
「だーんざい!だーんざい!ほらだーんざい!だーんざい!」
そんなククライのコールに呼応し、動画のコメント欄に断罪の文字列がさらに溢れかえる。
直後、ククライのいる場所の風景がガラリと変わる。そこは、どこかのステージの上のような場所だった。そして、ククライの背後に十字架に磔にされたような罪袋を被せられた女性型アバターが現れる。そしてその周りに黒い人型がわらわらと現れ始めた。
――この残酷な祭りはまだ、始まったばかりだ。
宇宙野いるかの配信は穏やかに、明るい感じで始まった。
「みんなーこんにちはー!今日も私、宇宙野いるかのライブ配信に来てくれてありがとー!今日は告知通り、この星降市で暴れる怪物をスターゲイザーさんが倒していくのを、みんなで応援してくよ!」
いるかがそう挨拶をすると、配信画面上に『今回も期待している』『応援はまかせろ~(バリバリ』『こんにちは~』などと言った視聴者の返礼のコメントが溢れかえる。
「というわけで今日は、星振市を守る神様、遠渡星様にゲストで来ていただきました。どうぞ!」
そういうと、配信画面上に遠渡星のアバターも現れる。
「どうも、遠渡星だ。よろしく頼む」
遠渡星が挨拶をすると、コメント欄がさらに活気づく。『出た、ゲーマー神』『TAS神様や』『よろしく!』などと言ったコメントが流れ始める。そんなコメントを眺めながら遠渡星は首を傾げる。
「ふむ。このまま皆にゲームの神と信仰されたら、そう言った神威も本当に私に身につくのかもしれないな」
遠渡星のその言葉に、コメント欄がさらに盛り上がる。『生み出すか……?俺達のゲーマー神を……』などというコメントが流れ、それを宇宙野いるかが苦笑しながら眺める。
「まあ、そういうのもいいかもね!でも、それもまずは街の怪物を倒してから!張り切っていきましょう!」
そんないるかのコメントに、歓声のコメントが配信画面で画面が埋め尽くされた。
そんな両方の配信を確認しつつ、みさは南に指示を出す。
「司馬!ここからはあんたの出番よ、行きなさい!」
「はいっ!」
南は応じると、アクロスを手に取る。
「掛けまくも畏き遠渡星命 星降の電脳の双界に 諸諸の禍事罪穢有らむをば 祓へ給ひ清め給へと白す事を聞こし召せと 恐み恐みも白す!」
そう言うと南はアクロスを装着する。
「うむ、そろそろ戦いが始まる。私も一旦失礼しよう。皆、応援を頼む」
南がアバター・ライドを始める気配を感じて遠渡星は一度配信から離脱する。
「アバター・ライド!」
そう叫んだ直後、南はまたも気を失ってソファに倒れこんだ。
デジタルツインの上空に、鳥居のようなゲートが現れる。そして、そこからスターゲイザーが現れる。スターゲイザーはそのまま地面に着地をする。そのままデータの大地が大きく揺れる。
『司馬、デジタルツイン上に来ました!……でも、ジモク……どこに居ます?』
それから南は立ち上がり、周囲を見回す。見渡した限りでは、ジモクらしき姿は見当たらない。
『司馬君、おそらくだけど……ククライのライブ配信から見るに、ジモクと夢野さんの霊体があるのは星降市民会館の地下講堂だ!』
『え……?地下……?』
澤野の回答に南は困惑する。
『……』
南は一度無言で、星降市民会館をじっと見る。この図体ではどうやっても入ることが出来そうにない。
『福田さん』
南は通信で福田に呼びかける。
『この星降市民会館の建物ごとぶち壊してしまう……というのは……』
『ダメ』
福田は即答した。
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