Hello, world!(4)
南達がバイトに勤しみ始めたころ、みさと澤野、西山は星降神社の社務所で互いに仕事に取り組んでいた。そんな三人を尻目に遠渡星はまたもゲームに勤しんでいる。
「そういえばこの間の配信、好評だったんだって?」
澤野は軽やかな手つきで次々とキーボードを叩きながらみさに声をかける。
「ああ、はいまあ。元々あいねの方の知名度利用したところはあるんですけど、その上で遠渡星様のキャラを理解してもらう掴みの企画としては結果は上々だったんじゃないですかね」
「そうみたいだね」
澤野が頷くと、西山はおずおずと疑問を投げかける。
「でも、良かったんでしょうか……?仮にも神様にクソゲーやらせるなんて……」
みさは西山の言葉にため息を漏らす。
「あたしもそうは思いましたけど……」
「いや、特には問題ない」
そう言って遠渡星はみさ達の方を向く。遠渡星はどうやらアクションゲームをプレイしているらしい。
「あはは、そうですね……」
みさは乾いた笑いを浮かべながら、もの言いたげな様子でテレビの画面に目線を向ける。そんなみさの態度が気になった澤野は遠渡星がプレイしているレトロゲームハードに刺さっているカセットに目線を向ける。そこには『サラマンダーレジデンス』というゲームのタイトルロゴと共に、バタ臭い画風の騎士が描かれている。澤野はブラウザを起動し、そのタイトルを検索しようとする。すると、タイトルを入力した時点で関連ワードに『クソゲー』と表示される。どうやら操作性の悪さや理不尽なゲームバランスが原因らしい。
「……」
しかし、当の遠渡星を見ていると、みさたちと会話すべく画面から目を離しながら操作を続けているにも関わらず、華麗にキャラクターを操作し、敵や障害を突破していく。
「ま、まあ、福田さん曰く神様はみんなから認知すらされなくなった時が一番力を失うし、それだったら敵意でも向けられてた方がマシとのことらしいなので、クソゲーでも俺たちが気にかけて渡すことはむしろプラスなのかもしれないよ」
理解不能な事態を目にした澤野はとりあえず会話を続ける。そんな澤野の言葉にみさは目を細める。
「それ、フォローになってます?」
「どうだろうね……」
みさに尋ねられるが、澤野は返答に窮する。
「いや、実際そういう側面はある。私が最も力を失うのも、やはり人々が私の存在を認知した人が減ることだ。まあ、なのでこのように福田からクソゲーを差し入れられるのも確かに私の力になるのだ」
遠渡星の言葉にその場にいた一同が真顔になる。
(なんてもん神様に差し入れしているんだ、あのおっさん!!)
ちなみに後に澤野に尋ねられた福田曰く、適当に近所の中古ゲームショップで買っただけらしい。
「ぶぇっくしょいっ!」
星降神社で繰り広げられている会話を知る由もなく、朝起電機の星降オフィスの中で福田は盛大にくしゃみをする。
「誰か噂してたかね?」
呑気にそんなことを言いながら、福田は自席の机の上のティッシュを手に取り鼻をかんだ。
そんな呑気なやり取りを一度切り上げ、澤野はみさに本来聞きたかったことを尋ねる。
「しかし、この後はどうするつもりなんだい?ゲーム配信者としてリスナーを集め続けるってどこまでやれるものなのかいまいちわからないんだけど、それでククライに対する対抗する力を維持、さらに言えば向上まで出来るものなの?」
「多分、そのままだと難しいかなとは思っています。特にゲーム配信は競合もたくさんいて飽きられる可能性も高いですし……」
「まあ、そうだよねえ」
今日日、アバターを用いながらゲーム配信をすることはかなり手軽にできるようになっている。競合も数多くいるレッドオーシャンの中で安定して継続的に視聴してくれるリスナーを獲得することがどこまでできるのか。
「特に遠渡星様は難しいんですよね……。どんなゲームも素直なリアクションしながらどんどんクリアしていっちゃうから……。なんていうか波が無いというか……飽きられやすいというか……」
「あー……クソゲー配信とかって求められるの、そのゲームに苦しめられるプレイヤーのリアクションだったりするもんねえ」
澤野の反応にみさは頷く。
「かといって普通にRPGとかやらせてもリアクション芸が面白いというタイプでもないですから……」
「か、神様相手に随分な物言いな気がするのですが……」
西山の言葉にみさは苦笑する。
「いや、私は構わんよ」
遠渡星は朗らかに笑う。
「変なリアクション芸とか強要しようとしなかっただけ、まだ尊敬があると思ってください」
「それもどうなんだろう……。とりあえず、癖の強い芸風とかを売りにしちゃうと、過激化とかしないといけなくなったりとかはあるからねえ……」
澤野はため息を漏らす。
「そういう意味ではククライの配信は”強い”んですよね。コンテンツ事態が元々過激ですから……」
「ああ……。過激化して失うイメージなんてない……ということか」
澤野の言葉にみさは頷く。
「なのでまあ、遠渡星様は違うブランドイメージ確立を目指していく方が良いと思っています。一応方向性も考えてはあるのですが……」
「……と、言いますと?」
西山は少し身を乗り出して尋ねる。どうやらそれなりに興味があるらしい。
「基本的に、地域の住人や観光客に愛されるシンボルになることを目指します。それで星降神社にもリアルで参拝に来てくれる人が来るようにするんです」
みさの言葉に澤野ははっとする。
「そうか……ククライには無い遠渡星様の強み……。元々この地域の神様だし、その信仰のよりどころになるような神社が実際に存在するということか……」
澤野の言葉にみさは頷く。
「でも、どうやってそういう方向にもっていくんだい?」
「そのためにこの地域の観光スポットや神話をデジタルツイン上で案内するサービスを構築するんです。実際にデジタルツイン上で交流が出来る配信者っていうことにして」
「なるほど……しかもジモクと戦うときにはヒーローだもんなあ。交流できて聖地がある気さくなバーチャルヒーロー系神様ストリーマーってわけか」
澤野の説明にみさは頷く。
「なるほど。しかし、属性が多いな」
遠渡星が素直な感想を述べる。
(それは元からですっ!!)
再びその場にいた一同が真顔になった。
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