Hello, world!(3)
「やあ、みんな。私の配信に来てくれてありがとう」
動画配信サイト『Smile Stream』のライブ配信画面では、遠渡星のアバターが右下に表示されている。
「今日は初めての配信ということで、宇宙野いるかが選んでくれたゲームをプレイするぞ」
遠渡星がそう言うと画面上には様々なコメントが表示される。
『いるか嬢、何を選んだんだ』
『まともなゲームなんだろうな』
先日の戦闘でそれなりに魅せたとは言え、どうやらまだ、遠渡星単体での知名度で人を集めるのは難しいのかもしれない。あくまでまだ、宇宙野いるかの仲間……としてお手並みを拝見されている状況らしい。そんな状況を知ってか知らずか、遠渡星はのんびりとした様子でゲームを開始しようとする。配信画面上にゲームプレイ画面がされ、タイトルが表示される。どうやら、8bit CPUを搭載したレトロゲームハードのゲームソフトらしい。古めかしいドットで描かれたタイトルが現れる。
『イニシエート・エスパー』
どうやらそれが遠渡星のプレイするゲームらしい。
「なんでも超能力を鍛えるゲームだそうだ。私もこれからの戦いに備えて神通力とか鍛えるべき!ということでいるか嬢から渡されたのだ。今日はこれをプレイしていくぞ」
そう言って遠渡星は笑顔でタイトルの『PUSH START』の表示に従ってSTARTボタンを押す。そんな様子に配信の視聴者たちがにわかに盛り上がりを見せ始める。
『クwwwwソwwwwwゲーwwwww』
『まさかのwwwwww』
『神様に進めていいゲームじゃねぇ!』
『新人ならぬ新神へのパワハラだろwwwww』
『おい!やめやめろ!』
しかし、そんな視聴者の反応を見て、遠渡星は穏やかに笑う。
「みんなが盛り上がってくれて私もうれしい」
そんなことを言っていると、ゲームが開始される。どうやら、イニシエート・エスパーは主に何種類かのミニゲームから構成されているらしい。
まずは透視能力を鍛えるというミニゲームであった。画面には裏返しにされているカードが5枚表示されている。そして、その上に三角や四角等の絵柄が記されたカードが表示される。裏返されているカードのうち、上に表示されているカードと同じ模様のカードがどれか選べ……という内容のミニゲームだ。
「なるほど」
遠渡星は納得すると、ゲームを操作し始める。それを見た視聴者達が次々にゲームの内容についてコメントをする。
『ただのランダム5択をするだけで、攻略法もへったくれもないクソゲーなのがひどいw』
『しかもどのミニゲームもにたようなのばっかだからな…』
そんなコメントを眺めながら、遠渡星は画面上のカードを一つ選択する。選択されたカードが裏返り、隠された絵柄が表示される。それは、画面上部に表示された四角と同じ絵柄が記されていた。
「うむ、正解だ」
遠渡星は満足げに頷きながら、新たに表示された絵柄である星と同じ絵柄が記されたカードを探し、選択する。
「また正解だ」
遠渡星が新たに選んだカードには星が記されていた。そして、即座に次の選択に映る。
「正解」
「うむ、正解」
「正解」
「正解だ」
「正解」
完全ランダムの運ゲー5択を淡々と制していく遠渡星に視聴者達が驚愕し始める。
『は?』
『嘘だろ……?』
『TASさんでも完全正解攻略は出来ないのに……?』
気が付けば遠渡星は全問正解、完全攻略によってゲームをクリアしていた。
『嘘だろ……』
『マジか!?』
『え?インチキ?』
その事実に配信のコメントがすさまじい盛り上がりを見せ始める。そんな中、大量に流れるコメントのうちのある一つを遠渡星は目にする。
『すげぇ……神かよ』
遠渡星はそのコメントを読み上げたうえで、首を傾げてから答えた。
「ああ、私は神だが」
コメント欄に草が咲き乱れることになった。
――などということがあった配信の一部始終を夢野がスマホで南に見せていた。
「……このなんていうかおだやかで天然なんだけどさわやかなこのキャラとガワ……。そしてこのクソゲーさえも軽々と乗り越えていく能力と神秘性……。これらに私は魅せられてしまったのよ……!わかる!?彼のこの魅力が……!」
夢野はそう言って大仰なリアクションを取りながら遠渡星の魅力を熱っぽく語る。
「は、はあ……」
南が『なんで遠渡星のイラストを描いたのか』と軽く聞いてみた結果がこれである。まさか配信アーカイブの視聴を強要され、彼女の熱いパッションもぶつけられると思っていなかった南はいささか困惑する。そんな南の横で『あちゃー』っといった感じであいねは苦笑している。
そんなやり取りをしていると、突如として店の自動ドアが開く。開いたドアから入ってきた人物を見て、夢野の熱っぽい語りが突如として止まる。
「?」
どうしたのだろうと、南が入り口の方へと目線を送ると、背の高い人物が立っていた。艶やかな長い髪を後ろで結び、フレームレスの眼鏡をかけている。顔立ちはぱっと見女性っぽく、整った顔立ちをしている。男なのか女なのかはぱっと見、体型を隠すようなユニセックスの服を着ているため分からないが、それでも背の高さや手足の長さが見て取れるほどにスタイルが良い。
(モデルとかそういう仕事の人だろうか?)
南がそんなことを考えながら眺めているとその人物は片手をあげて南達の方へと近づいてくる。
「やあ」
その美形が声をかけてくる。
(男の人か……)
声の低さを聞いて、ようやく相手が男であることを南は悟る。しかし、何故相手は自分たちに声をかけてきたのだろうか。そんなことを南が考えていると、夢野が返事をする。
「一ノ瀬先輩、お疲れ様です!」
夢野が勢いよく頭を下げる。先ほど遠渡星の魅力を語った時の熱が抜けていないのだろうか。そんな南の思考を他所に、一ノ瀬は頷く。
「今日はシフトだったんだね」
「は、はいっ!」
「そっか、それじゃ頑張ってね」
頭を下げた夢のに軽く微笑むと、店内の飲料や食料品が置いてあるコーナーへと足を運んでいった。
「今の人は?」
面識のない南は一ノ瀬が何者か尋ねる。
「うちの大学の一ノ瀬千秋先輩!めちゃくちゃ成績優秀で美形って学内じゃめちゃくちゃ有名なんだから!」
「へー、そうなんですか」
たしかにあの見た目や立ち振る舞いなら有名人にもなるか、と南は納得する。
「そんな人と知り合いなんですね」
南の言葉に夢野は頷く。
「同じゼミにいるからね」
「なるほど」
そんな二人の会話にあいねが割って入る。
「そんな先輩の前で仕事そっちのけでずっと話してると怒られちゃいそうだし、そろそろ真面目に仕事しようか」
その言葉に南と夢野は頷く。
「はーい」
「そうね」
南は勤務の準備のためにバックヤードへ、そして二人はそれぞれ自身の配置へと向かっていった。
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