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奇縁ロマンス(6)

 得体の知れない何かを自身がプロデュースする配信で使うのは避けたいと思ったのだろうか、みさは話題を転換する。

「と、とりあえずは直近作らないといけないのは、小型の人間サイズのアバターね」

「そうですね」

 みさの提案に南も頷く。それはもうすごい勢いで。ここ数日で南は何度もみさに感謝しているが、今ほど感謝した瞬間はないのではないか……?という勢いで首を上下に振りまくる。そんなことはつゆも知らないという感じであいねが所感を述べる。

「ジモクから人を助ける時、普通のサイズのアバターがあった方が便利だもんねえ」

「そういうこと」

 あいねの言葉にみさは頷く。

「あとは連携して動くマシンとか必要だろうねえ。ジモクと戦いながら相手から逃げ回ったりする必要あるだろうし、それなら被害者乗せて自動で安全なところ送ってくれたりする方が戦いやすいんじゃないかな」

 澤野の言葉に『たしかに』と南は頷く。

「まあ、どういうコンセプトにするかですよね。装備もそれに合わせる形にはなるけど、必要な機能としては、今上がったようなものが欲しいと……」

 みさは呟きながらノートPCでメモを取る。

「あと、敵の数が多いと思うんで、多対一でも戦いやすい装備が良いです」

 南が手を挙げて発言する。

「あー、そういうの大事だわ、そういうの」

 みさは頷きながらメモをとり続ける。

 そんなことをしていると、突如南達のいる部屋の襖が開く。南達が思わずそちらに目線を向けると、そこには福田や西山が立っていた。

「おー、やってるね」

 福田は片手を上げながら室内に足を踏み入れる。その後ろから西山がおずおずと続く。

「お疲れ様です」

 そう言って澤野や南が頭を下げる。

「どーも」

 みさはどこかつっけんどんな感じで挨拶をする。そんなみさとは対照的にあいねは笑顔で挨拶をする。

「福田さん、西山さん。こんにちは!」

 そして最後に遠渡星が二人に声をかける。

「二人ともお疲れ様。待ってたよ」

「どうも」

 挨拶をしながら福田は手にしていたビニール袋を部屋のちゃぶ台の上におく。

「福田さん、これは?」

 何も説明もなしに置かれたビニール袋が何を意味するのか分からず、澤野は福田に問いかける。そんな澤野の問いににやりと笑うと、福田はにやりと笑い、袋の口を広げて中に入っている物を見せる。

「ん?まあ折角だから決起会でもやったら良いんじゃないかと思ってね」

 ビニール袋の中に入っているのは大量の牛肉とちょっとの野菜、それに酒類や焼肉のタレ等だった。

「台所にホットプレートあったからね。若い子沢山いるし、ちょうどいいかと思ってね」

 そんな袋の中身を見て、みさは目を輝かせる。

「肉っ!!」

「良かったねぇ、みさちゃん」

 そんなみさの頭をあいねがよしよしと撫でる。

「ありがとうございます、福田さん。でも良かったんですか?これ、福田さんのポケットマネーですよね?」

 澤野が尋ねると、先ほどよりも少し邪悪な笑顔を浮かべながら答える。

「なあに、これから君達には色々と頑張ってもらわないといけないからね。そのための原資と思えば安いもんだよ」

 それを見た澤野、そしてそれを横で聞いていた西山は苦笑する。思ったよりも高い焼肉になるかもしれない。

 そんな周囲の様子に置いていかれ、感情の置きどころに困った南は周囲を見回す。すると、南はふと福田と目線が合う。そしてそんな南に福田は軽く笑う。

「まあ、楽しんだらいいんじゃない?」


 それから程なくして、社務所の客室にちゃぶ台やホットプレート、食材や飲み物を並べた一同は食卓を囲んでいた。

「それじゃ、始めようか」

 福田がそう言うと、みさがすごい勢いで頷き始める。しかし目線は肉にくぎ付けになったままである。

「……肉としてはスーパーに売ってる普通の徳用肉ね……」

 そのうえちゃっかり食材の程度まで値踏みしている。

「とりあえず、今後も色々あると思うが皆さんよろしく。乾杯」

「乾杯!」

 気の抜けるような福田の挨拶と共に乾杯をし、各々肉を焼き始めた。

 

 ――それから二時間後。福田が買ってきた肉のほとんどを平らげていた。

「だいたいねぇ!あんたは胡散臭すぎるんですよ、福田さん!!」

 テンションが上がり飲み過ぎてしまったのか、顔を真っ赤にしたみさが福田にうざがらみをしている。

(うーん、思ったより酒癖悪かったか……)

 福田は若干後悔しつつ、あいねの方を見る。あいねは顔色一つ変えずに淡々とビールを水のように飲んでいる。

「みさちゃん、最近二十歳になったばかりだからちょっとお酒のペース分からなくて。ごめんなさい、福田さん」

「あー、いいよいいよ」

 福田は気にしていないといった様子で手をひらひらさせる。その一方で澤野に助け舟を求めるように目線を送る。しかし、澤野は首を左右に振る。そのすぐ傍には真っ赤な顔をし、体育座りをしながらぶつぶつと何やら呪詛のような言葉を部屋の隅でつぶやき続ける西山の姿があった。これはどうしたものかと福田も思うが、現状ではどうしようもないらしい。だれも止めないみさのテンションはさらに高まっていく。

「いやあっ、良くないです!良くないのに司馬があんなんだから福田さんはずるいんですよ!って司馬!どこいった司馬ぁっ!」

 みさは周囲を見回すが、南の姿はなかった。



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