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奇縁ロマンス(4)

 みさや澤野達と別れてから数十分後、南は一足先に星降神社にたどり着いていた。

「さて……」

 南は一人つぶやくと、石段を登り、そして社務所へと向かう。社務所の入り口には顔認証システムが設置されており、システムが南の顔を認証すると、自動でドアが開いた。

(来客識別してドアを開ける神社って、ぱっ見だとファンタジーだよなあ)

 そんなことを考えながら南は社務所の中に入る。社務所の玄関では、女性ものと思しき靴が脱がれている。

(……これ、あいね先輩のか?)

 先ほど学食で会話した三人はこの場にまだ来ていないはずである……という前提から南は類推する。

「わっ、遠渡星様、すごーい!!」

 南が靴の持ち主について考えると、その答え合わせと言わんばかりに社務所内の一室からあいねの声が聞こえてきた。

(……何してるんだろう?)

 気になった南はそのまま部屋に足を踏み入れる。すると、そこにはTVゲームに興じている遠渡星と、その横で観戦をしているあいねの姿があった。

(……この状況は一体……?)

 何故、神様が女子大生と楽しそうにゲームをしているのか理解できず、南は困惑する。しかし、そんな南の困惑もそっちのけであいねは朗らかな笑顔で、そして遠渡星は穏やかな笑顔で声をかけてくる。

「司馬君、おっすー!」

「やあ、よく来てくれたね」

「ど、どうも……」

 南は困惑しつつも何とか挨拶を返す。そして、正直に思ったことを口にする。

「あの……ところで、お二人はここで何を?っていうか遠渡星様、なんでゲームを?」

 そんな南の疑問にあいねは首を傾げる。

「あれ?司馬君聞いてないの?遠渡星様がバーチャルストリーマーとして配信を始めるって」

「あ、いや……それは聞いたんですけど……それで何故ゲームを?」

 南の疑問を聞いてあいねは何かに気が付いたように『あっ』と声を上げる。

「そっか、南君よく知らないと思うけどさ、バーチャルストリーマーってゲーム配信とかすることが多いんだよ。だから遠渡星様にちょっと実際に配信する前にゲームも触ってみてもらった方が良いかなってことになって、一緒に遊んでたの」

「なるほど……?」

 神様が今時のゲーム機で遊ぶということは想像だにしていなかったが、バーチャルストリーマーとして配信をすることに比べればまだ理解の範疇かもしれない……と、南はなんとか納得する。そして、それからTVの画面を改めて確認する。どうやら今プレイしているのは国民的に人気な2Dアクションシリーズの最新作らしいことは、ゲームに疎い南にも理解できた。

「それでね、遠渡星様がすごいのよ」

「すごい……と、いうと?」

 南は首を傾げる。

「初見で全然ミスしないで全クリしちゃったの!」

「いや、たいしたことではないよ」

 遠渡星は穏やかな笑顔のまま謙遜する。一方で、それを聞いた南は首を傾げる。

「よくわからないんですけど、それってすごいんですか?自分ゲームをプレイしたことないもんで……」

 そんな南の反応に、多少なりとも南の事情を何となく察しているあいねは一瞬”しまった”という表情を浮かべるが、すぐさま笑顔になる。それからゲームのコントローラー南の眼前に突き出す。

「それじゃあさ、司馬君……遊んでみない、一緒に?」

「一緒に……遊ぶ?」

 南がつぶやくとあいねはうんうんと頷く。

「ああ、それは良い。やったことが無いというのなら、君も体験してみると良い」

 遠渡星もそんなあいねに同調する。

 そんな二人の提案に南は胸が高鳴る。普通の人であれば誰もが経験したことがあるはずであろうもの。それを、自分も経験することが許されるというのであろうか。そんなことを考えていた南は、気が付けば少しぎこちない動きでコントローラーを受け取っていた。そんな南を見て、二人はうんうんと頷くのであった。


 ――南達がゲームを始めてから1時間ほど経った頃、みさと澤野の二人は星降神社の石段を登っていた。

「澤野さんとほぼほぼ同じタイミングで着くとは思っていませんでした」

 みさの言葉に澤野は苦笑する。

「ちょっと学部生達の質問に答えていたら向こう出るの遅くなっちゃったからね……。まあ、なんにせよ君との打ち合わせ時間には間に合って良かったよ」

 そう言いながら社務所にたどり着いた二人は入り口を開けて中に入る。中に入ると、あいねと南と思しき話声が聞こえてきた。


「ほら……そこはもっと優しく押さないと……。君が思ってるより敏感なんだから……」

「こう……ですか?」

「うん、そう。いい調子……。そう、そうやってもっと奥まで進んで……ぎこちないけどさっきより良くなってきてるよ……」

「は、はい!」

 

 そんな二人の会話にみさと澤野は顔を見合わせる。それからみさは瞬く間に般若のような形相に変わると靴を脱ぎ、ずかずかと声のする部屋へと向かい、勢いよく襖を開け、そして怒声を上げる。

「くぉらぁああああああ!司馬あっ!お前うちのあいねに何してくれとんじゃあっ!ごるぁぁぁっ!」

 そしてみさは部屋の中にいる南を睨みつける。南はコントローラーを握ったまま、突然怒鳴り込んできたあいねに驚き、きょとんとした顔をしている。一方、あいねはそんなことには慣れっこなのか朗らかな笑顔でみさを迎え入れる。

「あっ、みさちゃん。お疲れ様~」

 そして、そんなみさ達を遠渡星は穏やかに、そしてにこやかに眺めている。そんな様子に毒気を一瞬で抜かれたみさは正直な疑問を口から漏らす。

「あんた……何してたの?」

「ゲーム……です。あいね先輩に教えてもらいながら」

 直後、背後のテレビ画面では操作をされていなかった主人公が残機0の状態で敵とぶつかり死んでしまう。そして、画面にはGAME OVERの文字が表示されるのであった。

 

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