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奇縁ロマンス(3)

 想定外の事態に南はキョトンとした顔で無言のまま、みさの顔をガン見する。そんな南の様子にどうしたものかと澤野と西山は苦笑し、みさはため息を漏らす。

「あのねぇ……あたしだって正直どうかと思ったわよ!人間の常識の外にいるような人を配信者にするなんて!でも仕方ないじゃない!」

「そうなんですか?」

 事の経緯を知らない南は純粋にみさに尋ねる。そんなみさの様子を見かねたのか澤野が助け船を出す。

「まあ、この件は福田さんの発案だからなあ」

「福田さんの?」

 予想外の事物の名前が出たことに南は驚く。そんな南の反応に澤野は頷く。

「そう、福田さん。あの人が『信仰の力を集めたいなら神様本人に直接ファンが付くようにした方が良いだろう』って」

「なるほど……」

 南は福田の発案した理由に納得しつつも、どこか腑に落ちないことがある。それが何なのか分からず南は視線を周囲に泳がせる。そして、その途中でみさと目が合う。そしてその時、みさの顔がどうにも渋いことに気が付くと同時、自身の中で何が釈然としなかったのかを理解する。そしてそのままそれを口にする。

「みさ先輩、よく素直に福田さんの提案呑みましたね。嫌ってそうな福田さんからの依頼なんて嫌がりそうなのに。っていうかなんならこんな案件に首突っ込むところから嫌がりそうなのに」

 ドストレートな南の発言に、今度は澤野がため息を漏らす。

「司馬君、もうちょい言葉選ぼうよ……」

 南の発言に呆れつつも、みさはもはや何かを諦めたような遠くを見るような表情で南に事情を説明する。

「まあ私もあんたと同じような理由よ……」

「同じ?」

 みさの予想外の言葉に南は思わず首を傾げる。

「まあ、あたしは将来ゲームクリエイターになりたかったんだけどね……それに対してあのおっさんが……」

 そう切り出してみさが福田との過去の会話を振り返る。


『君、ゲームクリエイターになりたいの?それだったら自分で会社興してゲーム作った方が好きにゲーム作れない?え?そんなお金は無い?大丈夫大丈夫。草応大学の星降キャンパスは学生起業を支援する補助金制度とかがあるよ。あと、星降市の地域振興起業支援として、デジタルツインを使ったコンテンツ作成事業に対する補助金とかもあるんだよね。そこらへんはこう、もし、我々の意図をある程度組みながら支援活動してくれるなら、ちょちょいと通るように”支援”しておくけど』


「なんて言ったりするんだもん……。その上、朝起の関連事業になるから配信機材やら各種ソフトのライセンスも格安で提供できる……なんて言うもんだから、その誘惑にあたしもホイホイ乗っちまったんよ……。そしたらあの人の要求ある程度飲まざるを得ないじゃない……」

 そう語るみさの表情は、欲望に負けた過去の自分を呪うかのようである。よっぽど福田の提案に自分が乗ってしまったことが悔しかったのだろうか。

「本当に的確に人が必要としたもの用意して釣るのがうまいなあ、あの人は」

 みさから聞いた事の顛末にみなみは思わず感心のため息を漏らす。

「まったくね……」

 二人の話を聞いていた澤野もため息を漏らす。そんなみさの様子をみて脳内に浮かんださらなる疑問を、南はぶつける。

「ちなみにあいね先輩は何で釣られたんです?」

 その南の質問にみさは首を振る。

「あの子は特に何かの対価を提示されてないわ。福田のおっさんに誘われた時点で困った人を助けなきゃって二つ返事よ……。この間の一件とか見てればなんとなくわかると思うけど、あの子そう言うところあるのよ……」

 みさはため息を漏らす。

「ああ……」

 牧野の一件にしてもあいねの善性に南も精神的には救われたところはあるのだが、それを差し引いても危なっかしい印象を受ける。そして、そう言ったあいねの性格も見越していたのであろう福田の立ち回りに、南は言葉もない。そんな応答に詰まった南話題を澤野に振る。

「澤野さんも……俺達みたいに餌で釣られて福田さんに協力することになったんですか?」

「……ま、まあそういった話ではないんだけども……」

 ド直球な南の質問に澤野は何かを悟ったような目で遠くを見る。

「うちの教授と福田さんがどうも仲が良いみたいでね……。福田さんが話をしたら教授から手伝いをしろって命令されて仕方なく……ね」

「それは断りづらいですね……」

 まあ、自分達のことは置いておいて……と澤野は前置きをしたうえで話題を転換する。

「とりあえず、遠渡星様に配信をさせろ、という福田さんの要求を勝間さんは突っぱねられない……ってわけだ」

 澤野の説明に悔しそうな顔をしながらみさは無言で頷く。

「なるほどなあ」

 澤野の説明とみさの態度による実質的な無言の説明にとりあえず南は納得する。そして南は正直に思ったことを口にする。

「俺達みんな……いいように福田さんにされていますね……」

「本当にね……」

 みさや澤野と一緒に南は項垂れる。そんな二人をどうしたものかと西山はおたおたするが、どうにもならない。

「ま、まあ現状悪いことばかり起きてるわけじゃないしさ、ほら……」

 そう言って澤野は二人がこれ以上気落ちしない様にと気を遣う。

「とりあえず、15時から配信やら何やらで私達は打ち合わせをする予定なんだ。何も予定が無いなら、君も社務所の方に来ると良いよ」

「了解です。そしたらこの後、特に講義は無いはずだから星降神社のほうに向かおうと思います」

 南は澤野に頭を下げつつ、自身の予定を確認する。確かに15時以降であれば講義は入っていなかった。

「とりあえず、俺は次の担当している講義あるからそろそろ失礼するよ」

「あたしもちょっと用事あるからもう行くわね」

「わ、私もこの後、朝起の支社の方で福田さんに報告をしないといけないことがあるので失礼します……」

 南が予定を確認したことを皮切りに、三人も自身の予定を確認し、行動に移し始める。

「あ、それじゃあ自分は一足先に星降神社の方に行っておきます」

 そんな南の返答に三人は軽く頷く。それから四人は席を立ち、各々トレーを持ち、食器返却口へと向かう。そして、食器返却口にトレーを置くと、それぞれ挨拶をする。

「じゃあ、またあとで」

「じゃ、私も一旦ここで失礼しまーす」

「で、では失礼します……」

 そんな三人に南も挨拶で応じる。

「お疲れ様です。またあとでよろしくお願いします」

 そんなやり取りをすますと、四人はそれぞれ自分の次の目的地へと移動を始めた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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