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奇縁ロマンス(2)

「はーん、なるほどねぇ」

 西山からことの顛末を聞いたみさは納得する。その傍ら、澤野と南は自身の昼食をすっかりと平らげていた。

「まあ、西山さんが気にすることないんじゃないですか?最終的に決断して首突っ込んだのこいつなんだから」

 そう言って左手の親指で南を指す。その横で南は無言で頷く。

「は……はい……」

 同性から宥められたからだろうか、西山が幾分落ち着きを取り戻す。それを見て南と澤野は内心で軽く胸をなでおろす。

「ところで澤野さん……」

 そんな澤野にみさは切り出す。

「ああ、アバターと配信の件だね。それは後で相談しよう。今日は15時からは社務所の方にはいるから、そっちで面着で話してもいいし、オンラインでも良いよ」

 澤野はそう返すと、コーヒーに口をつける。

「アバター……?配信……?なんの話です?」

 二人が何の会話をしているのかいまいちわからず、南は首を傾げて尋ねる。そんな南の態度にみさはみさできょとんとした顔をする。そしてみさはそれから澤野の方を見る。

「澤野さん……司馬に、伝えてないんですか?」

 みさのことばに澤野が「あっ」と小さく漏らす。

「?」

 南は訳が分からず、再び首を傾げる。そんな南にみさはやれやれといった感じで小さくため息を漏らす。

「まあ、簡単にいうとあたしとあいねがあんたのサポートに入るのよ」

「サポート?」

 一体、みさとあいねが具体的に何をするのかが見当がつかず、南は思わずそのまま問い返す。

「そう、サポート。あんたが理解できているかどうかわからないけど、一応聞いてるでしょ。この間の戦いであたしたちのサポートがあったから勝てたってこと」

 そう言うとみさはスマートフォンを手にし、先日の宇宙野いるかの配信アーカイブを南に見せる。

「ああ、そういえば……」

 アーカイブを見ながら南は先日、遠渡星と福田から聞いた説明を思い出す。なんでも、神様は人々からの信仰・支持を集めると力を増すこと、そしてその信仰・支持をあつめるためにみさとあいねがライブ配信をしてくれたということらしい。

「じゃあ、先輩達が今後、俺が戦う度に応援配信してくれる……ということですか?」

 南の問いにみさは頷く。

「まあね。さらにそれだけじゃないわ。日頃からあんた達が支持を集めて回れるように普段から配信活動をするって福田さんが決めたの。あたしはその活動の企画なんかを手伝うことにしたの」

「へ?」

 途中から予想外の発言が出てきて、南は思わず間の抜けた声を上げる。

「配信活動をするって……俺もってことですか?」

 いきなり配信しろと言われても何をしたら良いのか微塵も見当がつかない南は困惑する。そんな南の問いにみさは首を横に振る。

「いや、流石にいきなりあんたにそんなことさせないわ。だって……ネットリテラシーとか壊滅的にダメだし……。なんかの拍子に身バレしたうえに炎上したりすると、今のところ唯一戦える人間がジモクに直接襲われることになりかねないでしょ」

「ああ、確かに」

 南は納得すると同時に、疑問が脳内に浮かぶ。

「じゃあ、誰が何の配信するんです?」

「まあこれ見た方が早いわね」

 そう言ってみさは再び自身のスマートフォンの動画を見せる。どうやら、いるかとの別の配信アーカイブらしい。

『どうも~!宇宙野いるか、緊急配信です!今日は重大発表があります!私達、宇宙野いるかのママが『アーク・エンターテイメント』を設立しました!今日から私はその、アーク・エンターテイメント所属の企業ストリーマーとして頑張っていきます!それじゃあ皆さん、今後ともよろしくお願いいたします!』

 そう言って、画面上のいるかは勢いく良く頭を下げる。

 その様子を見ながら南はみさに尋ねる。

「これってあいね先輩がこのキャラクターを演じてるんですよね?ママとかアーク•エンターテイメントというのは一体何です?」

 みさは一瞬『あ、マジでこいつ何も聞かされてないんだなー』という意図が籠った目で南を見ながら再生中の動画を一時停止した後に説明をする。

「いるか……つまりあいねがママって言ってるのはあたしのことね」

それを聞いた南はきょとんとした顔をする。

「え?みさ先輩って子持ちだったんですか?」

「んなわけあるかぁ!」

 みさは南の頭に手刀を叩き込む。

「いてっ」

 みさはため息を漏らすと、気を取り直して説明を再開する。

「バーチャルストリーマーはキャラクターのデザインをしてくれた人のことをママって呼ぶことがあるのよ。まあ、生みの親ってことでね」

「なるほど」

 南は納得したのちに気がつく。

「じゃあ、このキャラクターはみさ先輩がデザインしたんですか?」

「そうよ」

 こともなげにいうみさに南は感心する。

「こんな可愛らしいキャラ作れるなんて先輩凄いんですねえ」

 南は素直にみさのキャラクターデザインの手腕に感心する。そんな南にみさは感心とも呆れともつかない表情をする。

「あんた本当に素直ね……。まあ良いけど」

「で、先輩。アーク•エンターテイメント……というのは……会社ですか?」

 南はもう一つ気になった点をみさに尋ねる。そんな南の質問にみさは頷く。

「そうよ、あたしが設立した会社。主にバーチャルストリーマーによるコンテンツ配信を行うわ」

「え?ってことは先輩、社長……ってことですか!?」

 素直に驚く南にみさは胸を張る。

「そういうこと」

「はー、すごいですね……」

 あまりにも自身には想像つかない世界でもみさの活動に南はただ感心することしかできない。

「別に社長って言っても会社はあたしとあいねの二人よ。大したもんじゃないわ」

 学生起業という自身からは縁遠い出来事に南には大したものなのか、それともみさが言う通り本当に大したものじゃないのかもわからない。

「でまあ、ここからが本題なんだけども、実際に支持拡大のために配信をすることになるのはこの人なんだけど……」

 そう言ってみさは一時停止していた配信アーカイブの再生を再開する。南はその動画をよく見ると、どこかで見たことがあるような銀髪の青年の3Dモデルが宇宙野いるかと映っていることに気が付く。そして、一緒に映っているその銀髪の青年のキャラクターをいるかが紹介する。

『そして、アーク・エンターテイメントからは新たなバーチャルストリーマーがデビューします!これからは一緒に会社を盛り上げていけるよう頑張っていきたいと思うので、よろしくお願いします!それじゃあ、はい、ご挨拶してください』

 いるかは隣に立つ青年に促す。それを受けて、青年はゆったりと微笑むと、頭を下げる。

『どうも、遠渡星です。星降神社に祀られる神として、これからは皆様を楽しませていきたいと思っています。そして、その楽しさを糧に皆様がよりよい未来を築いていく様子を見守っていきたいと思います。よろしくお願いします』

 その挨拶をみて南は呆気にとられる。


「……え?」

 

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