インパーフェクト(5)
「もー!!また失敗した!なんなのよあいつー!!」
ククライは断罪が失敗したことに腹を立て、配信中にまたも腹を立てる。そんな様子を見ていたリスナー達は急激に牧野に対しての興味・関心を失っていく。
『なんかもー飽きたわ』
『まあ、出し物としては面白かったわ』
そんなリスナーの反応にもククライは吹き上がるが、気が付けばリスナー達はどんどんと配信の視聴を切り上げていく。気が付けば同時視聴者数は100人前後になっていた。
「なんなのよ!こんなの認めない!認めない!」
しかし、視聴者の退出もお構いなしに、感情任せにククライは駄々をこね続けた。
時を同じくして、南はへたり込んでいた牧野の方へ近づこうとする。
「あれ……?」
直後、牧野の身体が青白く発光し、小さな粒子となって消えていく。
「どうやら、皆が興味をなくしたおかげで、このデジタルツイン上から解放されたようだな。そして、役目を終えた我々もそれは同じようだ」
「そっか、良かった……」
南は胸をなでおろす。前回は戦い開始時点で気を失った彼女は、現実の世界では気を失っていた。今回のケースでは現世ではどうなるのだろう……などと考えていると、どこからともなくガイダンス音声が聞こえる。
『お疲れ様でした。緊急事態コード4Sへの対処、これにて完了です』
再び、前回の戦いで聞いたガイダンス音声と同様の内容のものだ。
「どうやら、我々の役目もここまでのようなだ」
遠渡星がそう言うや否や、スターゲイザーの身体も先ほどの牧野と同様に青白い粒子状になり、そのまま分解されて消失していく。
気が付けば、南の視界は切り替わっていた。アクロス越しに見えるのは星降神社の社務所だ。そして、周囲にいる者達が南の様子を伺っている。
「あ……皆さん。お疲れ様です」
どういったものか悩んだ南は、開口一番気が抜けたような言葉を発する。しかし、それを聞いたみさやあいね、澤野は安堵のため息を漏らす。
「お疲れ様じゃないわよ!まったく心配かけて……!」
みさがあきれた様子でため息を漏らす。
「す、すみません……」
「まあ、無事に帰ってきただけ許してあげる。昨日みたいにぶっ倒れるんじゃないわよ?」
「はい……」
みさの言葉に、南は昨日のことを思い出しつつ、現在の身体の状態を確認する。昨日の戦った直後のような虚脱感は今のところ感じられない。
「南君、おつかれさま。牧野さん助けてくれて、ありがとう」
今度はあいねが南を労う。
「ああ、いえ……。でも、なんで牧野さんを助けたことを先輩がお礼を言うんです?」
南は不思議そうに首を傾げる。しかし、そんな南の質問自体があいねにとっては不思議だったらしく、彼女は首を傾げる。
「だって、私の職場の仲間を助けてくれたじゃない。お礼を言うのは当然でしょ?」
「そういう……もんですか」
南の質問にあいねは笑顔で返す。
「そういうもんです」
「そう……ですか」
南はふわふわした感じで頷く。理解できないけど、悪い気はしない。そんな不思議な感覚に囚われていた。
そんな南達のやり取りを澤野は笑顔で、かつ無言で頷きながら見ていた。
「さて、司馬君。今回の件、お疲れ様」
そんな南に今度は福田が声をかける。
「福田さん」
南は福田の方へと目線を向ける。
「君は期待以上によくやってくれた」
「いえ、そんな……」
南としては正直、無我夢中で戦っておりその時の記憶はあやふやだ。そして、戦う理由も自身のためであった。そういったことに後ろめたさを感じ、南は素直に福田の賞賛の言葉を受け取れないでいた。
「とりあえず、今後ともよろしく頼むよ」
そんな南の内心を知ってか知らずか、そう言って福田は右手を差し出す。
「ああ、はい……」
南は返事をしつつ右手を差し出し、握手する。
そして、握手をした瞬間にふとした疑問が脳裏を過る。
(今後ともよろしく……?)
そして、南は脳に浮かんだ疑問をそのまま福田にぶつける。
「福田さん。今後ともよろしくって……」
南の疑問に福田が今度は首を傾げる。
「ん……どういう意味だい?」
福田は南の疑問の意味が分からず首を傾げる。
「え……そりゃ、今回牧野さん助けたら、それで終わりってわけじゃ……」
そんな南の反応に福田は納得する。
「ああ、そういうこと?何言ってんの。これ一回で終わりなわけないじゃない。だってジモクは何度だって発生するんだからさ」
「じゃ、じゃあ牧野さん助けたら終わり……ってわけじゃなく……?」
「そらそうよ」
それを聞いた南は盛大に叫ぶ。
「ええええええええええ!?」
そんな南の様子にみさは盛大にため息を漏らす。
「あんた、何事も契約するときは、これからは条件をちゃんと見なさいよ……?」
「うううううう……はい……」
南はため息を漏らして項垂れた。そんな南の背後にいつの間にか現れた遠渡星が、彼の肩を叩く。
「まあこれから共に頑張っていこうじゃないか、司馬南」
「は……はい……」
南は肩をがっくりとさせながら遠渡星に返事をした。
「まあ、とりあえず事態への対処の目途が立つまで……立たないようなら、それこそ卒業するまで位は君に見頑張ってもらわないといけない」
南に追い打ちをかけるような発言を淡々と福田は口にする。
「そういうわけで、改めて頼むよ。司馬南君」
「はい……」
南はがっくりと項垂れつつ、福田に回答した。
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