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インパーフェクト(3)

「面白いって、そんな呑気なことを言っている場合じゃ……」

「大丈夫だ。とりあえず一度右に攻撃を避けるんだ」

「は……はいっ!」

 遠渡星の指示で、大量の触手が襲い掛かってきていることに気が付く。南は慌てて遠渡星の指示通りに右にステップする……が、その時に違和感に気が付く。

(あれ……思ったよりも早い?)

 想定よりも速いスピードで動けている。それどころか、勢いがつきすぎてしまい、別の触手にそのままぶつかりそうになる。

「うわわわわっ!?」

 慌てた南は咄嗟に腕で受けようと構える。さらに、防衛反応が働いたのか、腕から光線技を撃つ時の要領でエネルギーを放出している。

 直後、南の光る腕が相手の触手と衝突する。そして、腕と衝突したジモクの触手が一瞬で消し飛ぶ。

「え……?」

 想定外の事態に南は一瞬唖然となる。

「力が……上がってる?」

「ああ。彼女達の協力のおかげだ」

「?どういうことです?」

 遠渡星が言うことが出来ず、南は首を傾げる。

「それはあとで彼女たちに直接聞くと良い」

「は、はあ……。ってアレ?」

 突如、南のアバターが光り出す。そして、全身銀色だった身体に赤や青のラインが入り、彩りが出る。

「これって……!?」

「どうやら力があがったことで、本来の姿にアバターが近づいたらしい」

「それってどういう……」

 先ほどから理解が出来ない事態の連続に南は困惑する。だが、どうも状況は先ほどより良い方向に向かっているらしい。


 見た目が変わり急激に動きが良くなった南、もといスターゲイザーをPC画面で見て、みさはガッツポーズをとる。

「よーしよしよしよし!あたしの読み通り!」

 そんなみさの様子を見て、あいねはみさに軽くウィンクをする。みさのノートPCはディスプレイにつながれており、そこではバーチャルストリーマー宇宙野いるかの配信映像や、配信を制御するためのGUIが表示されている。GUI上のいるかはみさのウィングに反応し、同じくウィンクをする。その様子は当然配信されており、それを見たリスナー達が反応する。

『はぁー、かわよ……』

『天使……』

 福田は配信の様子を後ろから眺めながら感心のため息を漏らす。

「はー……まさか君達が個人勢の人気バーチャルストリーマーだったとはね……」

 福田はそう言いながら視線を配信用GUIへ向ける。そこには現在の同時視聴者数が出ているが、その数は5200人となっておりククライの配信よりもわずかに多い状態になっている。先ほど、視聴者が3000人を超えたあたりからスターゲイザーのアバターの色に変化が表れていた当たり、みさの目論見通りに事態は推移していると言える。

「元々、あたしが将来エンタメ関係の仕事とかしたくて、そのための練習台としてバーチャルストリーマーのプロデュースとかしてたんですよ」

 みさのことばに西山は一瞬反応する。

「で、まあそんなことしてたら当然身近に転がってる最高の素材に目をつけるじゃないですか?で、適当にガワ用意して歌とかゲームの配信をさせてみたんですが……そしたらその結果がこれですよ!あぁ……恐ろしい!私の才能、そしてなによりも才能・人格・容姿……すべてに恵まれたあの子が……!」

「なるほどなるほど」

 語りながらヒートアップし、勝手に得体の知れない高みへとテンションが一人でに上っていくみさに、福田は適当に相槌を打つ。しかし、ふと相槌を打っている内に生まれた疑問を何の気なしにみさにぶつける。

「別に妹さんプッシュしたいならバーチャルじゃなくても普通に配信者にしてもよかったんじゃないの?」

 その言葉にみさが般若のような形相で福田をにらみつける。

「何を言っているんですか……?下手にリアルに顔出しなんてしたら有象無象のカス男どもが言い寄ってきちゃうじゃないですか……!駄目です!あの天使は私達の手で大事に守らないといけないのです……!」

 それを聞いて福田は首を傾げる。

「妹さんをプッシュしたいのかしたくないのかどっちなんだい?」

「そんなもん!」

 そう前置いてみさは勢いづく。

「人類の至宝ともいうべき我が妹を人類に広めないのは罪!だが、存在を広めればカス共が集まってきてしまう……故の苦肉の策……!わかりますか、私の苦悩が……!」

「なるほどねぇ。そりゃ大変だ」

 据わった目で熱く語るみさを適当にいなしながら、福田は横目でスターゲイザーの戦いを眺める。

(……まさかこんな形であたりを引っ張ってこれるとは……世の中分からないもんだ……)

 スターゲイザーは今まさに、反撃に打って出ようとしていた。


 南は深呼吸し、右手に力を込める。すると、再び右手のブレスレットから光の刃が現れる。

「よし、それで良い」

 遠渡星にそう言われた南は、一度息を吐く。それから目線を上げる。その先では大量の触手が南、もといスターゲイザーを倒そうと襲い掛かっていた。


「いいぞ、やれやれー!やっちゃえー!」

 ククライは圧倒的なジモクがスターゲイザーに対して圧倒的な力を見せつけていたことに興奮し、盛り上がっていた。先ほど一瞬だけ不可思議な挙動をしていた気がするが、それでもジモクが優位な状態にあることには変わりない……そう認識していたククライはジモクの断罪に対して声援を送り続ける。そして、それにリスナー達も同調する。

『潰せ潰せー!』

『断罪だ断罪!』

 そして、ククライとコメントは互いにテンションを高め合い、過激化していく

「もうそんなやつ殺せ殺せー!」

『殺せ殺せ!』

『殺せ!』

『殺っちまえ!』

 実際には相手が死ぬことなどみじんも想像していない無責任な殺意。ククライと視聴者たちはそんなものを互いに育て合っていた。


 南は触手の群れを見上げが直後、多数の警告音と同時に回避プラン、そしてその後の反撃プランが視界に大量に現れる。南はその中の一つを選び、その反撃プランに従って身体を動かす。南が選んだ反撃は、敵の攻め手である触手を回避しながら片っ端から斬り落とすことであった。


「……え?」

『は?』

『嘘やろ』

 追いつめたと思っていたはずの相手から反撃を受け、ジモクの触手が目にもよらない速さで片っ端かっら斬り落とされる。その事実をにわかには受け入れることが出来ずククライとそのリスナー達は言葉を失った。

 

 


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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