トラップトラップとRap
「なんて酷い」
「手紙?」
筋肉痛が治り、ようやくまともな祝杯をあげれた次の日、僕宛の手紙が届いていた。
僕に手紙を送る人なんて母さんしかいない。
前送った手紙にダンジョンレスキューを始めたことを書いたんだよな。
「そうよ、差出人は…ラニィって人からよ、もしかして彼女さん?」
「冗談よしてくださいよ!僕の母さんです!」
「なぁんだ、つまんないの」
「全く!」
女将さんから手紙をひったくるように取って部屋へ戻る。
女将さんの恋バナ好きには困ったものだ。
あの人、人の恋愛には首突っ込むくせに本人は自分はおばさんとか言って恋愛しようとしないもんな。
狙ってる人が無茶苦茶いるってこと伝えたほうがいいのかな。
まぁいいや、手紙読もう。
「なになに?」
(はぁーいトラン!元気してる?怪我してない?あなたの故郷カントからメイリルへあなたが寄越した手紙のお返事を送るわ!あなたが今しているダンジョンレスキューっていうお仕事、わたしは素晴らしいと思うわ!まあどちらかというと喜んでたのは父さんかしらね、あなたが冒険者を目指すのを最後まで嫌がってたものね!とりあえず、わたしはあなたの判断を正しいと信じて全力で応援するわ!寂しくなったらいつでも帰ってきて良いからね!あなたの愛すべき母より P.S.最近畑を荒らしていた熊を2頭仕留めました。)
「クマ2頭って、すごいなお前の母ちゃん」
「ウァオゥ!?!」
「すごい悲鳴ですね」
「な、何でここに?!いやそもそも人の手紙盗み見るとか趣味悪いですよ!」
「ごめんね、でも少し急ぎの用なんだ」
「急ぎ?」
「おう、取り敢えずダンジョンに行くぞ、事情は歩きながら説明する」
「は、はいっ!」
何だかいつもより真剣な雰囲気を感じる。
ダンジョンに向かう足取りもいつもより忙しない。
「お前、犯罪者を見たことあるか?」
「ラッキーなことに、無いです」
「そういう犯罪者ってどこに隠れると思う?」
「え?どこって……まさか」
「そうだ、今回は犯罪者探しだ」
「レスキューの仕事の範疇を超えてませんか?!」
「人を探すって点では一緒だろ」
「他の冒険者は協力しないんですか?」
「報酬目当てで参加するのもいるだろうが、期待はできない」
「どうして?」
「我々は安全を確保しながら人を探し救助することを目的としていますが、彼らはただ進むことだけを目的としてますから」
「実力のある冒険者は、犯罪者を捕まえて報酬を得るよりも、探索で稼いだ方が手っ取り早いから参加しないんだよ」
「お金を目的としない冒険者とかいないんですか?」
「そういう奴は基本的に自分の腕を試したいだけだから、野生生物がでる自然発生型のダンジョンにしか行かないんだよ、ここのダンジョンはせいぜい出ても鬱陶しいミニゴーレムぐらいだしな」
「金稼ぎ目的の冒険者しか来ないんですね」
「そういうこった。よしこっから気ぃ引き締めていくぞ」
「は、はい!」
ダンジョンを進んでいくのにもそこそこ慣れた。
むしろ、この暗さと通路のデザインは案外落ち着くかもしれない、ドンさんから聞いた周期によると今はダンジョンの状況がリセットされてから2日目、第1階層のトラップはほとんど解除されてるはず
「あれ?」
なのに誰かがトラップにかかっている。
「た、助かった!あんたら降ろしちゃくれないか、今日はもう人が来ないかと思ったぜ」
スキンヘッドの冒険者らしき男の体には大量のロープが絡みつき、身動きが取れないまま天井にぶら下がっている。
「古典的なロープトラップだな、だがおかしいな、ここのダンジョンのトラップは全て殺傷性のあるものなんだがな」
「と、とりあえず降ろしてくれないか」
「オーニシ、頼む。俺たちじゃ届かん」
スキンヘッドの冒険者に絡みついたロープをオーニシさんはまるで植物の蔓を千切るかのように軽々と引きちぎり、冒険者を抱きかかえ、優しくおろす。
「助かったぜ、まさかこんなとこにトラップがあったとはな」
スキンヘッドの彼はカバンから何やら大量の書き込みがされた地図を取り出し、ぽりぽりと頭を掻いている。
「っかしぃなぁ、ここにゃトラップはないはずなんだがなぁ」
「誰かが新しく設置したってことか?」
「そうかもな。多分、このトラップを仕掛けた奴は他の奴らにダンジョンを進んで欲しくないわけだ。そんなことをする奴は、よほどの嫌がらせ好きの変態か、もしくは…」
「追われてる犯罪者、だろ?」
スキンヘッドは驚いた顔をした後、ニヤニヤと笑い始める。
「なぁんだ、あんたら俺と目的が一緒のようだな」
「そうだな」
「どうだい?ここは一つ協力といこうじゃないか」
「あぁ、そうしよう」
「よし、俺はパルチザール、気軽にパルチと呼んでくれや。よろしく」
(いいんですか、ドンさん。僕の勘ではこのハゲは怪しいですよ)
(確かに怪しいが、あいつが持っている地図、かなり正確だ。俺が把握していないトラップの場所も書いてあった)
ドンさんも、このパルチという男と行動を共にするのは本意ではないようだ。
警戒しておいたほうが良いかもしれない。
その後、僕たちは何事もなく第2階層に到達…というわけにもいかなかった。
本来作動しないはずのトラップが作動したり、パルチの地図に書かれていないはずのトラップもあった。
「その地図、本当に正しいんですか?」
「当たり前だ!この俺がそこそこな時間をかけて描き上げた最高の地図だぞ、書き漏らしなんて絶対に無い!多分」
「多分て」
「俺はこの地図で生計を立ててるんだ!不完全な地図作るくらいだったら、この商売やってねぇんだよ!」
「あんた、地図師なのか?」
「そうだよ」
「地図師って、地図を作る人なんているんですか?」
「あぁ、ダンジョンにはいろんな人間が商売目的でここにくるんだよ、俺みたいに地図を売るやつも珍しくねぇ。だが、俺の描く地図は他の奴らとは違う、トラップの場所、出現生物の分布域、宝箱の場所まだ書いてある!ちょいと高いがお得情報満載だぜ?買わないか?あんたらにはサービスで10万エニーてとこかな」
「それどうやって調べてるんです?」
「魔法都市マジク・マジカで高い金払って習得した隠密魔法があんのよ、トラップの体重感知にも引っかからない優れもんさ」
「それだけすごい魔法があるなら地図なんか売らなくても1人で十分稼げるんじゃないですか」
「あ、いやそれは、別に俺は稼ぎたいわけじゃなくて、人の役に立ちたくてだな」
「今気づいた、あんたの地図に書き込んである宝箱の場所、トラップルームじゃねぇか?」
「あら!ホントだ!いや失敬、人間誰しも間違いがあるもんさ」
「じゃあ、私たちからぼったくろうとしたのも間違いですか」
「な!?何の、ことかな?」
「10万エニーで売ると言ってましたけど、あれ本当は7万エニーで売ってるものでしょう。私の魔法でお見通しですよ」
エリフさんもハゲのパルチを怪しいと感じていたようで、魔法を仕掛けていたみたいだ。
相変わらずすごいなこの人、メンタリストになれるんじゃないか。
「大方、地図で初心者の冒険者を騙して、装備を奪い取ろうって魂胆だろ?大体、そんなすごい地図を売ってるってんなら、犯罪者なんか探さなくたって地図の稼ぎだけで暮らせるだろうしな」
「う、うぐぐ」
追い詰められたパルチは苦虫を噛み潰したような顔をして、大粒の汗を流している。
「く、くそっ!!」
パルチは弾かれたかのように駆け出す。
どうやら、隠密魔法を持っているというのは本当のようで、逃げる背中が次第に透明になって暗闇に溶け込んでいく。
「あ、待て!!」
「待てトラン、迂闊に追いかけてトラップにかかったら危ない」
「うぐぐ」
あのハゲが僕たちのいない場所で、あの腹立たしいにやけ顔をしていると思うと、はらわたが煮えくり返る。
見つけたらどうしてくれようか。
パァン
「ん?」
数メートル先から乾いた破裂音が聞こえる。
音の聞こえた方へ進むと、そこらじゅうに何かの破片が散らばっており、ついでにパルチが倒れていた。
「えっと、何が起こったんでしょうか?」
「わからんが、生きてはいるみたいだ」
「うーん…とりあえず縛っておこうか」
パルチをロープできつく縛る。
頭を叩いてみたが、起きる気配がない。
「どうします?」
「放置ってわけにもいかないでしょう」
「仕方ない、起きるまで待つか」
待っている間、周りの破片を集めてみた。
パルチが落とした物なのだろうか、それにしてはバラバラに散らばりすぎだよな。細かすぎて何が何だかわからないな……ん?
「なんだこれ?」
薄いゴムのようなものが落ちている。
うえぇ、何だこれ、ねちょねちょしてる。
なんだろうなコレ、もしかして何かの生き物なのかな、ポケカンが反応したりするかな?
・・・解析中・・・
(ハレツムシの破裂袋)
「ハレツムシ?」
(ハレツムシ 森の岩の下などに隠れて暮らす虫。雑食であり、食べたものを体内で発酵させ発生したガスを破裂袋に溜め込む。危険を感じると体内のガスと魔力を反応させ、尻から破裂による衝撃波を出す。尚、破裂は体内のガスを全て消費するため連続使用はできない。破裂の威力は溜め込んだガスの量によって様々だが、最低でも人の指の骨を折るほどの威力がある。ハレツムシは背中に破裂袋があるため、踏み潰されると中のガスがハレツムシの体内に放出され、魔力と反応を起こし体内から破裂する。この際の衝撃波は全体に発散するため尻から出るものよりかは威力が落ちるが、人を軽く気絶させるほどの力はあるため場合によってはより被害が深刻なものとなる。破片により失明した事例もあり、森を歩く際には岩を踏まないように気をつけなければならない。生息地域によって溜め込むガスや魔力の種類が変わるため、爆裂するものや冷気を噴出するものなどバリエーションが存在し、模様も変化するため、コレクターが存在する)
なるほど、パルチはこれをたまたま踏んだんだな。 じゃあこの破片全部ハレツムシなのか、そう思うとだいぶ悲惨だな、お互い。
「しかし起きませんね」
「仕方ない、エリフ」
「わかりました」
エリフさんが軽く手を振ると、パルチの瞼が一瞬光る。
「むぎゃーー!!」
「なんて酷い…」
「て、てめー!気絶してるやつになんてことを!」
「あなた、とっくのとうに起きて紐抜けしようとしてたでしょう。そして、思ったより硬く結ばれていて、どう解いたもんかと考えていたでしょう」
「…………」
「図星って顔してますね」
「うるせぇ!」
「あんた、なんであんなとこで倒れてたんだ?」
「知らねぇよ、なんか踏んだと思ったら急に吹っ飛んだんだよ」
「それ、ハレツムシってやつのせいらしいですよ。ほら」
図鑑と破片を差し出す。
「ふーん、ハレツムシねぇ。しかしおかしいな、ハレツムシはこんな地下には出ないはずなんだが」
「じゃあ、これも犯罪者の仕業なんですかね?」
「多分な。でもここまでくるとただの嫌がらせに思えてくるな」
「一刻も早く捕まえないといけませんね」
「うん、じゃあ行こうか」
「ま、待てよ!俺はどうなるんだよ!ま、まさか置いてくつもりじゃないだろうな!」
「その通り」
「か、勘弁してくれ!もうあんたたちを騙さないから許してくれよ!な!な!?」
「などと申しておりますが、ドンさん」
「よろしい、連れて行こう」
「えぇ〜?」
「ほ、ホントか!?」
「でもこのハゲの地図はあてになりませんよ?」
「いや、こいつの地図のトラップの場所はほとんど合ってるはずなんだ。地図に書かれていないトラップは全てロープトラップで、しかも、ダンジョンのトラップを避けたすぐ後にそのトラップがあった。つまり、犯人が意図的に既存のトラップのすぐ近くにトラップを仕掛けている可能性がある。そうなると、こいつの地図は役に立つ」
「なるほど」
「いやぁ、話のわかるお方だ!」
「でも信用はできないから、お前に思考盗聴の魔法をかける」
「え?」
「えい」
パルチの頭に青い光の粒が振りかけられる。
「これで思考盗聴ができるんですか?」
「よいしょ」
「え?」
僕にも青い光の粒がかけられる。
「何を?」
「これで相手の思考がわかります。何か考えてみてください」
"こんなんで本当に思考が盗聴できるのかよ?"
こいつ直接脳内に…!
「すごい、聞こえますよ、ハゲの考えていることが」
「あの、こっちもこのチビが考えてることが聞こえるんだが?」
「え?!」
「じゃあ成功ですね」
「ちょ!?」
嫌だ、女性とならともかくこんなハゲに考えをよまれたくない。
"言っとくけど、全部聞こえてるからな"
黙っててください
"あんたが黙れ"
だいたいあんたが隠密魔法で逃げなきゃよかったんですよ!消えるのは毛根だけにしてください!
"うるせぇ!この魔法、髪だけは消えねぇんだよ!"
え!?
「ほら、次の階層行くぞ」
その後、ハゲの地図によって第2階層は難なく突破した。
そして初めての第3階層に到達した。
「ドンさんの読み通り、トラップのすぐ近くにロープトラップがありましたね」
「あぁ、ただ、ハレツムシは厄介だったな」
「あちこちに転がってましたね。まぁ、全部踏んだのはパルチでしたけど」
「あの、大丈夫?」
「ぜってぇ…!ぶっ殺してやる……!」
うわぁ
"うわぁとか言うな!!"
「本当、どこまで降りてるんですかね」
「第2階層のロープトラップの作りが雑になっていた。もうすぐのはずだ」
僕には違いがわからなかったな。
"素人め"
パルチは分かるんですか?
"そりゃそうよ、罠の種類もわからないで地図師なんてやってられるかってんだ。"
教えてくれませんか?
"やだね"
「エリフさん、このハゲにまたさっきの魔法を」
「待て待て待て待て!?分かった、教えるよ!」
「おっ、どうした?」
「いや、パルチに罠のことを教えてもらおうかと」
「なるほどそりゃいいや、教えてやってくれよ」
「チッ、仕方ねぇ。トラップってのは元々動物に使ってたものだ、それを人間用に転用したものがダンジョン内でのトラップだな。頭の良い人間を引っ掛けるんだ、生物用と違って人間用は種類が様々だ。人を妨害するもの、状態異常にするもの、そして殺すもの。だが、発動形式は大きく分けて3つ、スイッチや糸によって動くカラクリ式、魔法感知によって動く魔法式、そして、俺が引っ掛かった生物の生態を生かした生物式だ。この3つはそれぞれ気をつけるポイントがある。カラクリ式は必ずスイッチや糸がある、人の死角に仕掛けられてはいるが他の種類と比べてわかりやすいものだ。解除方法も形式に沿った道具があるから、このドワーフみたいに罠の扱いに長けたやつがいるといい。魔法式は魔法でできた糸のようなものが張ってある、そこを歩いた人のほんの些細な魔力に反応して発動する。普通の人の目には見えないが、魔力探知ができるものには見える、だから、魔法使いがいれば気づくことができるってわけだ。魔力の糸に遠くから魔力を流せば対処もできる。そして生物式、これは厄介だぞ。生物の部位をトラップとして利用したもの、そのまま生物を設置したもの、使う生物も大量に存在するからいちいち覚えてられない。ただ、生き物である以上、呼吸音とか脈動音とかほんのわずかな音がある。それに気づくか、音を探知する魔道具か魔法を使うかだな。解除するより無視したほうがいいな。とまぁ、こんなもんだな」
「なるほど、じゃあ見つけ方はあるんですか?」
「匂いさ」
何言ってんだコイツ
「うるせぇ!そういう匂いがあるんだよ、トラップを仕掛けるようなやつはだいたい卑怯だ、だから俺にはわかるんだよ、卑怯な匂いってやつが」
「なるほど」
「ちなみに今もしてるぜ、その匂いが」
「え?」
「だが、地図にはトラップが書かれてないぞ?」
「どうせ、トラップの近くにトラップが仕掛けてあることを見抜かれたもんだから、趣向を変えたとかだろ」
「そ、そこまで言わなくていいだろメーン!」
曲がり角からサングラスをかけたロン毛の男が飛び出してきた。
「こいつか?」
「そうですね、手配書の特徴と合致してます」
「Yo!俺はトップ!辿り着くぜ頂上!気分は上場!このまま上昇!常に常勝!」
常に常勝て、頭痛が痛いみたいだな。
「なんだコイツ」
「ラップですかね」
「それはわかるけど、今言ってる状況じゃないだろ」
「俺のトラップトラップでお前らあっぷあっぷ!担いだナップサック!その中にトラップバグ!」
「トラップトラップって何かな?」
「トラップの近くに仕掛けたトラップのことじゃないか?」
「トラップバグって?」
「ハレツムシのことでは?」
「仕掛けるぜトラップ!始めるぜトゥックアップ!」
「なんかラップが下手ですね」
「は、はぁ!?」
「トラップトラップとか、トラップバグとか、無理矢理語呂合わせするための造語だし、韻も上手く踏めてないし」
「うるせぇメーン!そんだけ言うんだったらお前がやってみろメーン!」
「嫌ですよ、なんであなたの土俵に立たないといけないんですか。恥ずかしくないんですか?」
「黙れメーン!」
「そのメーンてやつ、親の前でできます?」
「う…」
「そもそも、親に顔向けできませんよ?人困らせて、下手くそなラップを言うとか」
「そ、そんな言わなくたって…そもそもお前は親に応援されてんのかよ!」
「されてますよ、人助けだから、この仕事」
「ちくしょー!」
今だ
「よいしょ!」
「うあっ!」
ハゲがラップ男にしがみつく。
「な!卑怯だぞ!」
「お互いにな!!」
「オーニシ!カバー!」
「よいしょお!」
オーニシさんが2人を抱え込み、持ち上げる。
「く、離せ!おろせー!」
「俺抱えたままにする必要あるか!?」
オーニシさんに犯罪者とパルチを抱えたもらったまま、僕たちは地上に出た。
ラップ男はずっと叫び続けていたため、エリフさんの魔法によって黙らせられた。
ちなみに、犯罪者の引き渡し先は協会だった。
犯罪者もダンジョンの均衡を崩すものとして協会が対処するものらしい。
「今回はD級犯罪者ですので、報酬は40万エニーです」
「チッ、こんだけやってそれだけかよ」
「おいパルチ」
「ん?」
「6割でいいぞ、お前の取り分」
「なに!?ホントか!?」
「あぁ、今回はお前の地図に助けられたからな」
「うっひょお!ありがてぇ!今度会ったらサービスするぜ!」
パルチは小躍りしながら去っていった。
やっぱり信用できないな、あいつ。
「よかったんですか?あいつにそんなにあげて」
「ああいうのは思ったより義理堅いものなんだよ」
「うん、僕もそう思うよ」
「まぁ、とりあえず打ち上げ行きますか。」
「やったぁ!」
一仕事終えて、仲間と飲みにいく、この仕事も少しは板についてきたって感じだ。僕も一歩間違えていたら、あいつみたいに親を悲しませていたのかな。
コップの底に映る自分の歪んだ顔を見つめる。
少しだけ、故郷が恋しくなった。
エリフさんがパルチやラップ男に使った魔法は、強い光を発生させる閃光魔法。エリフさんの場合、相手の瞼にだけ閃光が走るそうです。