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あなたはどっち?原初派VS統合派

「ん…」

 不思議な感覚がして目が覚めた。温かなエネルギーが体に満ち、居ても立っても居られなくなって体を起こす。まだ外は薄暗い。といってもここはいつでも薄暗いと思う。

 目をしばしばさせ、頭を掻きながら頭を見回す。体を大きく広げて眠るオーニシさんと、死んでるように静かなエリフさん、あと…

「あれ…?」

 ドンさんがいない。それにソウルさんも。

「トイレかな…」

 いやでもソウルさんはトイレ行かないよな。寝起きで頭がうまく動いてくれない。

 このまま二度寝しようかと考えていると、ドンさんが戻ってきた。

「トラン、もう起きたのか」

「まぁ、はい…たまたま。そっちは?」

「出発の準備をしてたんだ。俺は心配性だからいつもこうやって早いうちに準備をしておくんだよ」

「そうなんですか…」

 いつもギリギリまで寝ている自分が恥ずかしいな。今度から早起きを心がけよう。まあ多分心がけるだけで、できないんだろうけど。

「そういえば…ソウルさんは?」

「寝室にいる。さっきまでフージオまでの生き方を聞いてたんだ」

「へぇ…」

「そういやお前に話したいことがあるって言ってたな」

「へ?」

「どうせ今寝たらギリギリまで起きないだろ?今のうちに聞いといたらどうだ?」

「そうですね…」

 まだエンジンのかかりきってない体を無理矢理動かし、寝室へと向かう。寝室には窓の外をぼやけた目で見つめるソウルさんが佇んでいた。

「あの…ソウルさん?」

「うん?もう起きたのか」

「まぁ、はい。なにか話したいことがあるって…」

「そうだな。君にマナの使い方を教えようかと思って」

「使い方…魔法とは違うんですか?」

「まぁあまり違いはないが…一応な」

 そう言うとソウルさんは自分の腕を外す。

「な、何を…?」

「持ってみてくれ」

 渡された腕を持つと、不思議な感覚がする。さっきまでマナが通っていたせいか、人肌のような暖かさを感じる。

「感覚的にはそうだな…魔力は熱を伝える感覚で、マナは熱そのものになる感覚だ」

「う、ん?」

 わかるようでわからないような例えだ。でも実際、マナを使っている時は自分の手が溶けているように感じた。あれが熱そのものになった感覚なのかな…

 感覚を思い出しながら手に力を込める。次第に感覚が溶けていく。すると、だらりと垂れていた腕がピクリと動く。

「うわ!?」

「いい調子だ。腕にマナが通り始めている。そのまま自分の腕を動かすイメージをしてみるんだ」

 腕を握りしめたまま、自分の手を開くイメージをする。すると、人形の手がゆっくりと開く。

「お、おぉ…!すごい!」

「上出来だ。それだけ使えれば大丈夫だろう。腕を返してくれ」

 ソウルさんは腕をはめた後、窓の外を見る。

「そろそろ出発の時間だ。頼んだよ、トラン」

「は、はい」

 ソウルさんの案内を受けながら森の外へ出る。森の外には御者のいない馬車があった。

「馬にはフージオを目指すよう命令してある。15分もすれば着くだろう」

「これもマナでやってんのか?」

「そうだ、御者がいると錯覚させてる」

 さっきマナの使い方を学んだばかりだけど、この人みたいに扱える自信がない。

「よし、出発するか」

「あぁ、良い結果を期待しているよ」

 僕達全員が乗ると、馬は走り出し始めた。御者がいない馬車に乗るというのは、どうにも不安になる。他の3人も不安そうな顔をしているのがわかる。

 無言のまま10分が過ぎた。すると、遠くからフージオが見え始めた。

「あれがフージオ…」

 側から見ればのどかな町並みで、とても手紙に書かれていたような不穏さは見えない。

「ん?」

 しばらく眺めていると、ポケットが何やら暖かく感じる。温度の正体は、ソウルさんから貰った翡翠色の石だった。

「どうしたの?トラン君」

「いや、なんか石が…」

「あー、あー聞こえるか」

 突如、石から今朝別れたはずの人の声が聞こえる。

「そ、ソウルさん?」

「あぁ、聞こえるな。良かった」

「えぇ…なんなんですかこの石」

「魔導石ってやつですよ。魔力のこもった石で、石炭の魔力バージョンみたいなもんです」

「よく分かんないですけど、とりあえずこれがあればソウルさんと喋れるんですね」

「そうだ」

「そんなことなら最初っからついて来いよ…」

 まぁ確かに。

「私がいたら目立つだろう」

 まぁ確かに。

 あれこれ喋っている間にフージオへと到着した。馬車から降りて町の中は入る。

「馬はどうするの?」

「適当なところに隠しておく」

 なんで隠す必要があるんだろう。

「にしてもこの町…」

「ローブの人が多いですね…」

 全員が白色のローブを被り、顔から足まで隠している。まるで怪しい儀式をやっている宗教みたいだ。

「町の至る所に張り紙が貼ってあるな。え〜っとなになに…ミクシュ教、あなたも一つになりませんか…だとよ」

 ほんとに怪しい宗教だった。

「混ぜるってこのことなんですかね」

「じゃない?」

「とりあえず本部とかに行けばわかるんじゃないか?」

「じゃあ行ってみますか」

 そう言って振り向くと、いつのまにか人が立っていた。その人物は背が低く、ローブを被っていることからミクシュ教の人物であるということが分かる。

「あなた達!ミクシュ教に興味がおありですか!?」

 こちらが口を開くよりも先に喋りかけられる。

「え!?」

 チラリとドンさん達を見ると、頷けと言わんばかりの視線を送ってくる。

「えぇ、まぁ、はい…」

「素晴らしい!ではこちらに!」

 教徒に脱臼せんばかりの勢いで手を引っ張られる。連れられた先は教室のような場所だった。

「ではこちらに座って、アンケートにお答えください!」

 そう言われると教徒から紙とペンを渡される。紙には30ほどの質問が書かれており、生き物が好きかどうか、現状に不満を持っているかどうかなど、一見普通の心理調査のようにも思える。

「書き終わりました」

「はーい、回収しまーす」

 回収された4枚の紙を教徒は見比べる。

「えーっと、そこのドンさんとエリフさんはしばらくここで待っていてください。そちらのトランさんとオーニシさん、私についてきてください」

「あっ、はい」

「はい」

 教徒の案内に従って部屋を出る。出る際にドンさんからアイコンタクトを受ける。気をつけろよ、と目で語っていた。

「あの、僕達はどこに…?」

「統合派の本部です」

「と、統合派?」

「統合派と原初派、2つの派閥がミクシュ教にはあるんです。そもそも、ミクシュ教は全ての生物が一つになり、争いをなくすことを目的としています。ただ目的は同じでも、目指す形が違うんです」

「どんな風に?」

「統合派は今存在する生物はおろか、滅んだ生物の特徴全てを備えた存在になることを目的としています。それに対して原初派は全ての生物が分岐する前の、一つの塊になることを目指しています」

「へ、へぇ〜」

 やばい、頭痛くなってきた。

「ここが本部です。あと数分すれば教義が始まるので少々お待ちください」

 そう言って案内されたのは、綺麗な教会だった。しかし、中は外の綺麗さに比べて暗く。怪しい匂いを漂わせていた。怪しい気配がひしめき合い、今すぐこの場から逃げ出したくなるような感覚、ここはまさしくダンジョンと言って差し支えがないような場所だった。

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