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混沌は続く

 少佐の姿がドアの向こうに消えると、室内にいた殆どの人が息を吐いた。

「相変わらずだな」「仕事してねーのか、あいつ」「どうなんだろ」「会議で碌に発言しねぇし、そろそろ参加出来なくなるんじゃねぇの?」「その辺は支部長の匙加減で決まるだろ」

 ぼやくように言葉が次々と出て来る。良く思われていないのが一発で解った。アレで、少佐で、訓練学校のOG。

 もしかして、あの少佐が原因で自分は呼び出されたのか?

「星崎。南雲少佐は普段から『あの状態』だ。訓練学校に問題が発生していると思って呼び出した訳では無いから、気にしなくていい」

「代わりにとんでもない事が判明しましたね」

「ソウダネ」

 支部長からの気遣いの言葉は、松永大佐の手で一刀両断された。

「分かりましたが、私の教官達への対応に問題は在りましたか?」

 何を言えば良いのか分からず、了承をしてから『教えて欲しい』と口にしていた事を思い出したので尋ねた。

「教官達の自業自得の一言に尽きるので、不問とする。ただし、暴力は可能な限り控えるように」

「不問云々以前に、憲兵部から一度、教官達の事情聴取を行いたいぐらいですわ」

 支部長の不問の判断を肯定するように続いた、女性的な口調の野太い声の主を見ると、ストロベリーブロンドの筋骨隆々とした人物がいた。生物学的な性別は『男』で合っていると思う。化粧もしていないし。思い込みだが、同類が歌舞伎町に居そうだ。

「あ、自己紹介がまだだったわね。あたくしは神崎昴(かんざきすばる)。階級は少佐だけど日本支部憲兵部のトップよ」

 視線が合うと静かに立ち上がり、そう自己紹介した人物こと、神崎少佐はフレンドリーに片手を上げて、何故か『ばちこーん』と擬音が聞こえて来そうなウィンクを飛ばした。その姿を見た数名の男性陣が青い顔をして口元に手を当てた。見慣れた光景なのか、神崎少佐は知らん顔で椅子に座る。

 自分は過去の人生で見慣れている。それに、神崎少佐系は探せばどこにでも居そうな人種だ。故に、何も言わずに神崎少佐の制服格好を見て感想を口にする。

「スカートではなくスラックスなんですね」

 神崎少佐の言動を考えれば、スカートを穿いていそうだったのに、何故かスラックスを着用していた。

「待て! 他! 他に言う事が在るだろ!?」「うふふふ。肝の太い面白い子ね」「肝が太い云々以前だろ、コレ」「神崎を見てこの反応する奴は今までいなかったよな?」「ああ。さり気無くこいつが初めてじゃね?」「可哀想に。セクハラしかしない猿共のせいで、こんな反応しか出来なくなるなんて」「涙ぐむな。同じ男としてこっちも泣きたくなるぜ」「訓練学校の猿を全員しばきに行きたいわ」「まったくよ。時間を作って乗り込もうかしら」「それは止めなさい」

 感想を口にすると、突っ込みの言葉を皮切りに混乱が広がる。支部長から調査依頼を頼まれた女性に至っては、目元にハンカチを当てて涙ぐんでいる。支部長は訓練学校に突撃しそうな一部を止めた。

「神崎少佐は日本支部憲兵部のトップを任せている。それ故に、『性別の秩序』を乱す事は自粛して貰っている」

「乱れるのは『風紀』じゃないんですね……」

 支部長の解説に、思わず指摘の言葉が漏れる。

「星崎。気にする箇所がズレている」

「セクハラと痴漢行為を受け続けた結果でしょうね。そうそう、証拠になりそうなものを持っているのなら、試しに一つ提出してくれる?」

「録音データしか所持しておりませんが宜しいですか?」

「どうして持っているのか聞きたいけど、女子寮のスローガンを考えると持っていて当然そうね」

 それで良いと、神崎少佐から了承を得てボストンバックからノートパソコンを取り出して近くの机に置き、スマホを掴み今更になって、間宮教官に尋ねた内容を思い出して気づく。

 間宮教官が言っていた、五人の内の四人がここにいる。神崎少佐以外の三人は合っているけど、アレ暴言じゃなかったんだ。

 思い出す契機となったスマホを操作する振りして見ると、神崎少佐から疑問の声が上がる。

「あら? ボイスレコーダーは持っていないの?」

「私は支給品のスマホを、ボイスレコーダーの代わりに使っていました。容量がすぐに一杯になるので、三日に一度、録音データをパソコンに移しています」

「そうだったの」

 なるべく簡潔になるように答えると、神崎少佐はそれで納得してくれた。

「――それじゃあ、時々動きが止まるのは何故かしら?」

 けれども、続いた神崎少佐の言葉に動きをピタリと止める。気づいていたのかとちょっと感心した。疚しい事は何も無いので素直に回答する。

「訓練学校を出発する少し前に、軌道衛星基地で支部長と副支部長級の一条大将以外で、知っていた方が良い人の名前を、とある教官から教えて貰いました。その時に挙がった方と同姓を何度か聞きましたので、ご本人か少し考えていました。移動中に確認する用の録音データが在ります。再生しますか?」

「それも再生して欲しいけど、誰に聞いたの?」

「間宮教官です。最後に赴任された教官なので、三年前とは言え、最新の現場を知っていそうだと思って尋ねました」

「マジでっ!?」

 結果は外れだったけどね。心の中でそう付け足した。すると再生する前に、素っ頓狂な声が上がった。

 声の主を見ると、ベリーショートヘアーの『ザ・軍人』って感じの男性がいた。身を乗り出して驚愕している。

「星崎の言う間宮はこいつの元部下だ」

「元部下? と言う事は、間宮教官の元上官の方ですか?」

 解説の声が飛び、思わず確認を取った。何と言うか、よく見ると見た目のガラの悪さまでも似通っている。この部下にこの上司在りなのか?

「おう。そうだぜ。間宮の元上官、高橋だ」

 鷹揚な回答が来た。絶妙ないい加減さが間宮教官と被る。間宮教官の『あの発言』の信憑性が高まって来たな。

「間宮教官曰く、『元上官はいかがわしい雑誌を大人の男の心の養分で嗜みと言い、ベッドの下に百冊隠していた』と仰っていましたが、事実ですか?」

「んな訳ねぇだろぉぉおおおおおっ!?」

 思わず確認を取ったら、絶叫否定が来た。間宮教官の元上官の男性(高橋だっけ?)はテーブルを叩いてから立ち上がった。階級章を見ると大佐だった。

「証拠を出せ! しょ・う・こ・を! 相手がガキでも、名誉棄損で訴えるぞ!」

「では私が納得出来る証拠を出したらどうしますか?」

 一体誰を名誉棄損罪で訴えるのか、非常に気になった。仮に自分が訴えられても、証拠は手元に存在する。故に、自分の勝訴は確定だ。裁判沙汰は面倒なので、証拠を提示したら、どうするのかだけ尋ねよう。

「よーし。お前に言われた事を、何でも、一個だけ、やってやるぜ」

「では、防音の効いた部屋で憲兵部の方からセクハラを受けながらのお説教を二十四時間床正座で受けるか、飢えた熊と一晩相部屋のどちらかを選んで下さい」

「勘弁して下さい」

 何でもやると発言したから、咄嗟の思い付きを口にした。そしたら、高橋大佐は素早く動き、床の上で土下座らしき座礼をした。

「床に土下座する程に嫌なのか?」「佐藤大佐。アレは土下座ではなく、座礼です」「そんな事よりも、選択肢の酷さについて、誰か突っ込めよ」「突っ込む必要ねぇだろ」「そうだな。『何でも』って、自分の口で言ったんだし」「単純に、セクハラの受け過ぎで感覚が麻痺した結果だろ、コレ」『成程』

 松永大佐の指摘で、座礼で合っていたと安心した。他が言いたい放題言っている隙にノートパソコンを立ち上げて録音データを探す。

「納得するな! こんなの嫌に決まってんだろ! どっちを選んでも死ぬのが分からねぇのか!? つうか、ガキが強請るもんつったら、菓子とか別のを思い浮かべるだろ! こんな事で、人生を左右する究極の二択が出て来るとは思わねぇよ!」

 データを探しながら思った。

 熊は檻から出さなければ問題無いと思うが、幾らなんでもセクハラでは死なないでしょ。セクハラで死ぬってどんな状況なんだか。これで人生が左右される、究極の二択になるって事は、選択肢が『セクハラ撲滅活動をして欲しい』とか、『訓練学校のセクハラ教官一同の鍛え直しをして欲しい』だったらどうなるんだ?

 まぁ、訓練学校に向かい、間宮教官の元上司だとバレると大変な目に合うのは確定だろう。『エロ猿の上官を討ち取れ』と、女子生徒一同が金属バットと金属バール片手に集結しそうだ。共通の敵がいると結束力が高まるって、本当に嫌だね。

「流石に熊は檻の中だろ? 銃を持ち込んで頑張れよ」

「無理」

「根性の無い奴だな。裸一貫で挑む訳じゃあるまいし」

 誰の発言か判らないが、確かにその通りだと思う。『何でもやる』と宣言してからの『無理』は流石に駄目でしょ。発言には責任を持ってくれ。

「根性無しの誹りを受けるだけで助かるのなら甘んじて受け入れる」

「正に、口は禍の元、だな」

「別方向で潔いですね」

 松永大佐よ。これは潔いと言うよりも、ただの逃亡だと思う。

 そうこうしている内に、探していた録音データが見つかった。証拠の音声データを流す許可を得る為に声を上げると、高橋大佐が最後まで『待ってくれ』と往生際悪く騒いでこっちに向かって来たが、録音データの内容を聞きたい周囲の面々に取り押さえられた。

 離れたところにいる支部長にまで届くように、ノートパソコンのスピーカーの音量を上げて音声データを再生した。

『すまん。星崎。部屋の掃除手伝ってくれ』

『間宮教官。高等部の男子生徒と回し読みしている不要ないかがわしい紙雑誌を全て焼却処分すれば綺麗になりますよ』

『馬鹿野郎! 大人の男に必要な心の養分と嗜みを不要って言うんじゃねぇ! 俺の上官もベッドの下に百冊も隠してたし、そう言ってたんだぞ』

 早々に証拠となる発言が流れた。取り押さえられていた高橋大佐の目が死に抵抗の力も尽きた。

『上官の真偽は知りません。それよりも、大人を自称するのなら児童のように自室の掃除が出来ないと公言するのは止めるべきですね。あと、私は女なので、野郎呼びは止めて下さい』

『言葉の綾に突っ込みを入れるな! ホント、可愛げねぇな!』

『他の女子生徒曰く、私は芋女らしいので。そもそもセクハラをして来る相手に見せる可愛げとは何でしょうか?』

『お前はそんな風に言われていたのか。んー、……それは哲学だな』

『哲学は関係ありませんね。良く思っていない相手に可愛げを見せる必要はありません』

『その塩対応が可愛げねぇって言ってんだよ』

『そうですか。好かれたいと思った事は無いのでどうでも良いです』

『どうでも良いのか!?』

 間宮教官の絶叫に被せるように、遠くから騒々しい足音が近づいて来た。

『主任、こっちです』

『――まぁみやあああああ!』

『んげぇ!? 主任が鬼の形相!?』

『おんめぇはぁ、何やらかしとるんじゃぁ、ボケェ!! 星崎!』

『はーい』

『ヒッ、ギャァァアアアアアアア!?』

 悲鳴と共に生々しい音が響き、断末魔の叫び声が上がる。音の正体に気づいた男性陣の若干名の顔色が悪くなる。

『……星崎。背後から躊躇い無く、股間を蹴り上げろとは言っていないぞ』

『のおお、おおおお、おおおおおお――ほげぇっ!?』

『ふむ。床の上でのた打ち回りながらも、スカートを覗きの機会は見逃さないようですね。このまま喉仏を()っても良いですか?』

『それは待て。鳩尾に踵を落としたんだからそれで我慢しろ。喉を踏むな』

『……はーい』

 相手に聞こえるか聞こえないか程度の音量で舌打ちをしてから自分は引き下がる。

『主任! エロ猿を討伐する、絶好の機会なんですよ! それを、我慢しろって言うんですか!?』

 しかし、そこで居合わせた女子生徒が不服の声を上げた。一人が不服の声を上げれば、他の女子生徒もあとに続いて、不服の声を上げる。

『そこは我慢しろ。流石に殺人は駄目だ』

『ちっ』

『気持ちは解るが、不服の舌打ちは聞こえないようにやれよ。そこの間宮(発情期の猿)はこっちで回収して行く』

『お願いします』『分かりました。ちっ』

『だから、舌打ちは聞こえないようにやれ。はぁ~、よいせっ、と』

 学年主任はその掛け声を最後に足音を立てて遠ざかって行く。

 生徒の本音を知るいい機会だからこのまま流そう。主任の足音が完全に聞こえなくなると、地団駄を踏む音が響いた。

「ん? 続くのか?」

 地団駄を踏む音が響き、停止していない事に気づいた誰かが声を上げた。女性陣が前かがみになって耳を澄ませる。

『あー、もう、ムカつくー。折角、エロ猿の討伐が出来ると思ったのに』

『こうなったら、先輩達の卒業後に行う、間宮教官のエロ猿渾名を広める運動に参加するしかないわね』

「「「「「「何その運動!?」」」」」」

 一部の男性陣が驚愕の声を上げた。復活した高橋大佐も混じっていた。

『本当ね。何なのよ、あの猿! 猿の元上官は、絶対に爛れた野郎だから、あの猿を野放しにしていたに違いないわっ』

「俺は無実だ!」

 高橋大佐の冤罪を訴える声はどこにも届かない。だって相手がここにいないから。ここにいない女子生徒の代わりに女性陣から冷ややかな視線を頂戴して、高橋大佐は縮こまる。

『もうっ、百害あって一利なしの存在でも、教官が出来るってどうなっているのよ』

「本当ね」『うん』

 女性陣の誰かが頷けば、皆で同意する声が上がった。

『まぁまぁ。落ち着けよ。流石に主任が徹底的に絞ってくれるって』

『でも、先輩』

『殺人は不味いけど、アレ以上やると今度は暴行罪になる』

『でも、うー、うぅー』

『唸るなって』

『星崎は大丈夫だったか?』

 男子生徒が唸る女子生徒を宥める。他の男子生徒は、自分に声を掛ける。

『パイロットスーツを着る時に着用する、支給のインナーを着ているので見られても大丈夫ですよ』

『そうじゃない』『……それで何時も着替えが早かったのね』

 呆れた二つの声が響く。その隙に別の女子生徒が気炎を吐く。

『こうなったら女子寮で語り継がれて来た、般若を召喚して教官を威圧した伝説の先輩のようになるしかないわね』

『般若を召喚してどうするんだ?』『そんな女子の先輩いたのかよ!?』

『女子寮に口伝で伝わる、武藤流護身術を齎した偉大な先輩よ。確か、武藤鈴って名前だったわ』

『般若の召喚方法って残っているの?』『ひぇぇぇ』

 自分の突っ込みと男子生徒の悲鳴を最後に、やり取りは完全に終わった。再生を停止させて、支部長を見た。

「以上です」

「うん。高橋大佐の沙汰は明日言い渡せば良いとして、続きとして、出発前に間宮教官から聞いた内容も再生して貰うか」

「しぶちょおおお!?」

 高橋大佐が絶叫を上げ、取り押さえられたまま、ジタバタと暴れ始める。高橋大佐を取り押さえている面々から、速く再生しろと催促された。

「俺に! 優しさ! 誰か優しさをくれぇえええ!」

「気にせず再生しろ」

「……分かりました」

 スマホを操作し、いざ再生しようとしたところで高橋大佐の悪足掻きの声が上がる。

「あっ!? 待て! 待ってくれ! 星崎! 間宮の言葉を聞いた感想は何だ!?」

 何故か感想を求められた。にしても、感想か。言う事は一つしかないな。

「完全な暴言を聞かされました」

「ぎぃやぁぁあああああっ!?」

 高橋大佐の断末魔の叫びを無視して、目一杯音量を上げて再生させる。

『んな事を聞いてどうするんだ? つか、何で俺なんだよ?』

『訓練学校には日本支部の、現場の情報が余り入って来ないからです。間宮教官を選んだのは、間宮教官以降に新しく来た人がいないからです。三年近く前でも、そこそこに新しい現場の情報を持っている人が他に思い付かなかっただけです。紹介して下さるのならそちらに行きます』

『あ~、それを考えると、俺は一人で来たから他にいないのか。んじゃ、しょうがねぇなぁ。一回しか言わねぇから良く聞けよ』

 間を取るように、椅子が軋む音が小さく響いた。

『なよっとしたヘタレもやしな工藤中将は、うん、将官階級の奴には会わないだろうから』

「誰が、なよっとしたヘタレもやしだぁああっ! もう会ってんぞ! 高橋! てんめぇ、どう責任を取るんだ、ごるらぁっ!」

「俺の責任じゃねぇっ、つか、まだ最初だろ!」

 音声が聞こえない程の音量で、怒声が上がった。そのまま言い合いに発展する。怒声が上がった時点で再生を停止させて正解だった。

 ギャース、ギャースと始まった罵り合いは、そのまま複数人を巻き込んだ大喧嘩に発展した。支部長はおろか、誰も仲裁に入らない。ガス抜きが終わるまで続けさせる気か?

 少し眺めてから、近くにいる松永大佐に問い掛けた。

「停止させましたが、どうしますか?」

「終わる気配が見えん。私が代表して聞こう」

 そう言って、松永大佐は手を出した。音量を下げてからスマホを手渡す。松永大佐は再生の操作をしてから、スピーカー部分に耳を当てて音声データを聞く。

「あ」『ひぃっ』

 音声データを聞き終えた松永大佐は、手にしていた自分のスマホを握り潰した。スマホの破壊音と、複数の小さな悲鳴が上がった事で、罵り合いをしていた面子も流石に異変に気づいた模様。恐る恐る、スマホを握り潰している松永大佐を見て、青い顔で小さく悲鳴を上げた。

 会議室に気まずい沈黙が下りた。罵り合いをしていた面子は、音を立てないように静かに席に戻る。自分以外の全員が着席すると、角刈り頭の男性が口を開いた。

「松永。スマホ(通信機)を握り潰す程の内容だったのか?」

「はい。最後の一人は合っていますが、星崎の感想通りの暴言でした。高橋大佐を拷問して、普段我々をどう思っているのか吐かせた方が良いですね。今後の為に」

「拷問じゃなくて尋問だ。そしてお前は、絶対に、参加するな。んで、どんな暴言だったんだ?」

「聞いたら一名、ここで暴れ出します。それも、警棒を持って」

「……そうか。んじゃ、ここで言うな。あとで教えろ。星崎は内容を口外するな」

「? 分かりました」

 会話の意味は解らないが、ここは了承した方が良さげな空気だったので、了承の応答を返す。

 そんな事よりも、スマホが壊れてしまったんだが、どうしよう。データは全部メモリーカードに保存しているから問題は無い。けれども、目覚まし時計の代わりに使っているスマホが壊れた。支給品だけど、再支給してくれるのかな?

 自分の思考が顔に出ていたのか、支部長が口を開いた。

「星崎。各隊ごとに通信機の予備が幾つか在る。修理が終わるまではそれを貸し出す」

「分かりました」

 もう何をどう返せば良いのか分からない状況で、これしか返せない。

 スマホは貸し出してくれるみたいだからそれで良しとしよう。


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