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モブキャラとして無難にやり過ごしたい~あの日、巻き込まれなかったら~  作者: 天原 重音
夏休み編

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ピンチな時にボスと戦闘

 佐藤大佐から支援を受けながら、戦闘に集中する。

 もう、何機撃墜したとか、そんな事を数える余裕は無い。

 ガーベラが出す速度に振り回される中で行う戦闘は、正直に言うとキツイ。

 食事直後だったら吐いていたかもしれないな。下手なジェットコースターよりも乗り心地が悪い。胃の中が動いているのを感じながら操縦するのは気持ちが悪い。吐き気を覚えないのが唯一の救いか。

 気持ち悪さを我慢しつつ、敵機を一機ずつ処理して行く。

 ……避けるな。さっさと沈め! 黒くてしぶといのは、ゴキブリだけで十分なんだよ!

 敵機と交戦した時に溜まる苛立ちの言葉を飲み込み、剣を敵機に突き刺した。敵機の腹を蹴り飛ばして剣を引き抜いた。蹴り飛ばされた敵機は貫いた先から爆発した。その爆発は連続し、最終的に敵機そのものが爆散した。

 敵機が爆散した様子を見届けてから、周辺を見回す。追加の敵機がいない事を確認してから、大きく息を吐いたら、思っていた以上に息が上がっていた事に気づく。

 周辺を警戒しながら息を整える。

 それにしても状況が状況だから敵機に集中したけど、よくよく考えると自分の現状って、大佐階級の偉い人に口答えして、戦場に残って好き勝手やっているんだよね。

 ヤバくない? 状況終了後に始末書とお説教が待っていそうだ。お説教は松永大佐と支部長からかな?

 戦闘終了後を思うと、思考が冷えて来る。悪態を吐いている場合じゃないな。

 それよりも、こんな受け身の襲撃がこれからも続くのか。人生計画とか無視して、雲隠れしたい。

 

 つーか、松永大佐は何時戻って来るのよ!? 

 燃料がそろそろヤバいんだけど!!

 

 はぁ~、と大きく息を吐いて吸った直後、警告音が鳴り響いた。

 何だと思い周辺を探索すると、左肘に丸い盾、両手に剣を装備した銀色の機体がこちらに向かっている!? これも敵機なの?

「うわぁ~……、燃料ヤバいのに」

 銀色の機体は佐藤大佐の牽制射撃を、蝶が舞うように避けている。

 よく回避が出来るなと感心しそうになるけど、……佐藤大佐には悪いが、狙いが正確過ぎて、逆に避け易いのかもしれない。何か在った気がするけど、アレは正面からの攻撃限定だったかな?

 さて、現実逃避もそこそこにしないと。銀色の敵機がこちらに迫っている。

 ……こんな事になるのなら、松永大佐と一緒に無理をしてでも、ツクヨミに戻れば良かったな。

 状況的に無理だろうけど、先に立たなかった後悔をする。

 通信機経由で佐藤大佐の叫び声が聞こえるけど、軽く息を吐いてから、意識を戦闘に切り替えた。

 こいつをどうにかしないと、ツクヨミに戻れないだろうな。

 その確信を得てから、自分もまたガーベラに剣を構えさせた。

 現時点で、ガーベラの活動可能時間は――残り二十分程度だ。

 ただ動かすだけなら二十分は可能だが、戦闘を行うとなると、その活動時間は半減する。その為、活動時間は実質十分程度だ。

 この計算は、『ガーベラが三十年前に開発された機体である』事を考えての活動時間だ。これが松永大佐が乗っているナスタチウムだったら、十五分以上は活動出来ただろう。

 残りの活動時間が少ない状況下で取れる戦法は、『カウンター系』しかないな。

 細長く息を吐いてから、魔法で知覚を強化した。

 その状態で、目を皿のようにして銀色の機体の動きを観察する。


 ロボット系に乗っている時に、知覚強化系の魔法や、未来を視る魔法を使うと、戦闘終了後の説明が大変なのだ。

 直感でどうにかなりました。もしくは、よく解らないが出来ました。

 この言い訳が通じないのよ。信じてくれる人はいないし、真面目に回答しろと、怒られる。怒られるだけなら良いけど、始末書を書けとか言われたらね、アウトだわ。

 今はそんな贅沢が言える状況下じゃないから使うけどね。使わないとマジでヤバいわ。


 知覚強化の魔法を使った事により、銀色の敵機の動きがコマ送りのようにゆっくりと見える。

 相手の動きに合わせて慎重にガーベラを動かし、銀色の敵機の剣を叩き落とす。即座に攻勢に移ろうとしたが、素早い動きで銀色の敵機は離れた。

 ……今の動きで、こっちの動きが読まれたのか? 距離を取ったまま動かないし。

 そうだとしたら厳しいが、この銀色の敵機には、遠距離武装が搭載されているようには見えない。

 遠距離武装が搭載されていないからと言って、勝機が有るのかと言われたら、答えは『否』しかない。それだけで勝てたら苦労しない。

 ガーベラには遠距離攻撃手段が存在するが、現状況で使用は不可能だ。一度でも使用したら、多分チャージしただけで燃料が尽きる。そうなったら終わりだ。

 さて、互いに動かないままになったけど、この場にいるのは自分一人ではない。

 佐藤大佐が乗るナスタチウムの狙撃が、銀色の敵機の足元に襲い掛かる。銀色の敵機は狙撃を舞うように回避した。通信機から佐藤大佐の悪態が聞こえた。

 ここで、活動時間が残り僅かなガーベラを動かす訳にはいかない。

 下手に動かして、敵機の標的にされたら詰む。だって、こいつが向かって来たら応戦しない訳にはいかない。

 てかさ、佐藤大佐以外の援軍は来ないのか? 

 敵機が来た。相手の動きに合わせて攻撃を防ぎ、カウンターを放つが、寸前で回避された。

 直後、警告音が鳴り響いた。この警告音は燃料が底を突きかけている事を知らせるもので、残りの活動時間が五分を切った時に、この警告音が鳴る。

 もうどうにでもなれとしか言えないな。

「燃料早くプリー……ズ」

 警告音が煩く鳴り響く中、変な事を小声で口走ってしまう。それぐらい、切羽詰まっている。

 銀色の敵機が再度こちらに向かって来た。仮に次の攻撃を凌いでも、活動時間の限界を迎えて、ガーベラは停止する。

 人生終ったかもね。

 撃墜される覚悟を決めて、操縦桿を握り直すと同時に、二機のナスタチウムが割り込んで来た。遅れて十機以上で構成されたキンレンカの部隊が出現した。

「にゃにごと?」

 予想だにしなかった割り込みに、思わず噛んだ。

 通信機から微かなノイズを挟んで、聞き知った大声が響いた。

『ガーベラ聞こえるか!! 佐々木だ! 井上と一緒に時間を稼ぐ! 補給を受けに行け!』

「……え? 今、バーニアを吹かしたら、一瞬で止まるんですけど」

 通信機から漏れた指示に、うっかり素面で返してしまった。通信機から返って来る沈黙が痛い。

『待て! 俺が運ぶ! 佐々木! 井上! 少しの間、根性を見せろ!』

『分かりました!』『頼みますよ、佐藤大佐』

 二機のナスタチウムを先頭に味方の部隊が銀色の敵機に突撃した。

 迂闊に動かせないガーベラに乗る自分は、見送る事しか出来ない。猛スピードでやって来た佐藤大佐が操縦するナスタチウムに掴まれて、ガーベラと一緒に運ばれる。

 猛スピードで景色が流れて行き、正面からやって来たナスタチウムと合流した。新たなナスタチウムに誰が乗っているのかと思えば、松永大佐だった。

 佐藤大佐が乗るナスタチウムは、掴んでいたガーベラを離すと、すぐに方向を転換して戻った。

 燃料の補給作業を行うんだが、流石に三十年前のもののやり方は分からず、松永大佐の指示通りに操作した。


 そして、十分程度待ち、補給が終わった。


 生きた心地がしない戦場に戻る事になるんだが、今はしょうがない。

 松永大佐と一緒に戦場へ向かった。



 戦場に向かったが、その道中、両腕や肩を切り落とされて戦闘不能となった味方機と何度もすれ違った。

 ガーベラに搭載されている望遠カメラを使って戦場を見ると、味方機は三機のナスタチウム以外残っていなかった。十機以上のキンレンカの部隊は全滅か。

 支援の佐藤大佐はともかく、良く生き残っているな、あの中佐コンビ。マジで凄いわ。

 肩の砲は使わない。零距離から放つなら当たる可能性は高いだろう。それ以前に、あのスピードを誇る相手に零距離砲撃姿勢に持って行くのは――至難の業になる。

 遂に敵機と未だに交戦しているナスタチウム三機を見つけた。

 宇宙空間を漂う味方機の残骸の一つを敵機に向かって蹴り飛ばしてから割って入り、松永大佐と一緒に加勢した。



 敵機と鍔迫り合った状態で、剣の押し合いに持ち込み、全開にしていたガーベラのバーニアを停止させた。直後、物凄い勢いで機体ごと後ろに押された。すぐにバーニアの右側だけを再び全開にしてから敵機を巻き込むように機体を横に回転させて、敵機の体勢を崩しに掛かる。

 機体が横に回転する直前、敵機は勢い余った事に気づいたのか。自分の目論見通りに、敵機は慌てて速度を落とした。そのまま敵機は、横回転の勢いを利用して近接状態からの離脱を計った。

 敵機を追う事はしない。あの速度では追い付けない。敵機を追わない代わりに、離脱直前の敵機の左手首の関節部を切り付けた。

 一撃で左手首を切り落とすには至らないが、ダメージは確実に入った。

 現在こんな感じで、隙あらば、敵機の両手首と右肘の関節部を切り付けている。根気よく続けているので、そろそろ効果が出るかもしれない。

 なお、左肘だけ狙っていないのは、単純に盾が邪魔なだけだ。

 攻撃の合間に佐藤大佐の狙撃が敵機を狙うも、ひらりと回避された。狙いが正確なのは良い事なのに、当たらなければ意味は無い。

 絶対、狙撃の位置が読まれているんだろうなぁ。

 そう思った直後、妙案が浮かんだ。通信機に向かって叫ぶ。

「佐藤大佐! 狙撃位置のリクエストって出来ますか!」

『狙撃位置のリクエスト!? 何を考えている?』

「アレに狙撃を回避させた先で待ち伏せする、ええと、待ち伏せ戦法と言いますが……」

『訳が分からん!』

 佐藤大佐の返答通り、『待ち伏せ戦法』と言っても解らないだろう。けれども、松永大佐はこれだけで理解したのか、佐藤大佐に向かって指示が飛ぶ。

『! 佐藤大佐! 私の指示通りに狙撃を行って下さい』

『松永まで!? ええい、どうなろうが知らんぞ!!』

 佐藤大佐のヤケクソ気味の声が響いたが、同意は得られた。松永大佐の指示通りに佐藤大佐が狙撃を行い始めたが、『注文が細か過ぎるわっ!!』と、何度もキレた。

 キレつつも、佐藤大佐は松永大佐の指示に完璧に応えた。

 佐藤大佐の狙撃を回避させ、回避先で待ち伏せたガーベラで攻撃を繰り出し続けた。仮に攻撃が回避されても、中佐コンビの連携で隙を突いて敵機に攻撃を与えている。

 そして、執拗に関節部分を狙い続けた結果、その効果が表れた。


 敵機の右肘の関節部分の切断に成功した。


 蹴り飛ばして、切断先を回収出来ないようにするが、敵機が盾を構えて突撃して来た。

 両手の剣を×字に構えて盾を受け流すようにして、タックルだけはどうにかした。

「げっ!?」

 タックルはどうにかなった。けれど、代わりに使用していた剣が二振り同時に折れてしまった。ここで反転したら、敵機を前にして、無防備な状態で振り返る事になる。

 咄嗟の判断で、ついさっき蹴り飛ばした敵機の右腕を――厳密には、敵機が持っていた剣を、全速力で追い掛けた。遠くへ強く蹴り飛ばさなくて良かった。

 すぐに剣に追い付いたが、通信機経由で『敵機がガーベラを追い掛けている』と連絡を受ける。

 剣を拾い、反転して向き合う時間は無いと判断した。体への負担は大きいが、機体の向きを変えつつ右手を中心に縦にUターンした。胃の中身が動いた気がしたけど、まだ我慢だ。

 追い掛けて来た敵機に対して、掴んだ剣を突き出す形で向き合った。

 一拍の間を置いてから、敵機と再び激突した。

 

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