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死神ヨーキー  作者: 新竹芳
第3話 よみがえり
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その4 魂

「あの子はそういったことがあった事、を理解しているのか?」

「いや、まったく生前の記憶がない。ただ、死にそうだった魂を私が救った。その代わり死神の仕事を手伝わせている。ただ、あの状態のレイは非常に不安定だ。状況如何では、刈り取った欠損した魂を吸収させて、何とか均衡を保っている状態ではある。」


 レイの落ちいった状況。

 理解はできた。

 チャチャまるが惨状という意味が、目に見える悲惨な現場、ではなく、その魂たちの想いを言っていると言事だと認識した。

 この考えがあっているかはわからない。

 何といっても死神の倫理観だ。間違っていても大して影響はないだろう。


「レイには名前がなかった。その魂の主体はその少女だが、両親の弱り切った魂が補完している。厳密には3人の魂の融合体、早い話が継ぎ接ぎだらけの魂、「半分だけ生きている状態」と言っていい。お主の他の魂を補完できる強力な魂と真逆といった意味だ。」

「そんなに簡単に、そ、何だ、魂の継ぎ接ぎってやつはできるのか?もしできるなら、チャチャまるの言う欠損した魂って奴も一つに出来るんじゃないか?」


 俺の言葉に可愛い顔したヨーキーの角度によっては碧く光る瞳が、悩ましげに揺れる。

 何かを考えているのだろうが、そんなこと、お構いなしに抱きしめた。


「お主は私が真剣に悩んでるのに何抱きしめに来てるんだ!」

「いやあ~、チャチャまるの可愛らしさについ。」

「わからんでもないが…、私もそれがあるからこのままでいるのだが…。まあいい。説明として適当か、ちょっと考えてたんだが、お主の前で変に考えても、このぷりちぃいな動物にすぐ理性がなくなるようだし。」


 そう言うと抱きしめている俺から、器用に抜け出し、汚れている床にトンという感じで降りた。


「にしても、汚いな、ここは。私用にケージを買って貰ったのはいいが、この状態では私が何処でうんこやしっこしても、わからんな。」

「どっかにしたのか、チャチャまる!」

「まだ、しとらん。ちゃんとペット用シーツの場所だけだ。いかん。本当に話がズレるな。お主、ニコイチ車というものを知っとるか?」

「ニコイチ車?車、だよな?どこかで聞いたような気がするが…。」

「簡単に言えば、壊れてる2つの車のいいところだけ、例えば、同じ車種の前と後ろをくっつけて、まるで何もなかったような1台の車として動かすっていう車。」

「あっ、なんかいい感じじゃないか。使えない車の再利用。」

「本当に知らんようだな。2台の車を1台にする。さっきの継ぎ接ぎの魂と一緒だが、このニコイチ車は車を1台作った時の剛性という奴がなくなっちまって、ちょっとした衝撃で、真ん中からパキッと壊れちまうんだ。」

「あっ、想像ついた。」

「に比べて、もともと1台の車の壊れた箇所を直す方が、車としての強度は高い。」

「ああ、なるほど。だからレイって子の魂は不安定だと。」

「お主に対する態度見てると、かなり安定そうに見えるがな。」

「まったくだ。で、今はあいつは何処にいるんだ?」


 今ここにいない暴力少女の行方をチャチャまるに聞いた。

 チャチャまるは後ろ足で耳を掻くような仕草を見せた。

 うん、可愛い。


「私の管轄の中を見回っているはずだが。たまに魂の疲れは当然出るから、どこかで休んでる可能性もある。」


 あの、俺に対する態度だけ見ていると、とてもさっきチャチャまるのいう過去があるようには見えない。

 何度なぐられたんだ、俺は。


 だが、あの面影から想起される思いはあった。

 米川稀色(よねかわれあ)

 中学の時の同級生。

 仲の良い女子からは「ヨネちゃん」と呼ばれていた女の子。

 それと転校した後の噂が俺の中で混じり合った。


 本人に記憶はないと言っている。

 確かめようがない。


 うむ、であれば後は、俺自身が勝手にやっても問題ないか。


 そんなことを考えていた時だった。


 何といえばいいのか、背筋に悪寒が走った。風邪ひいたか?


「人がいないところで、あんたたちは何の話をしているのかしら?」


 今、まさに話をしていた張本人が忽然と現れた。


 これが幽霊が出る時の悪寒というものか。


 変なところを感心してしまった。


「何言ってんの、この変態野郎が。私は幽霊じゃない。死神助手だと言っているだろう。」


 そう言って、それが死神助手の証しだというようにディスサイズの鎌の先を、俺の首元に突きつけてくる。


 この大鎌が物理的な影響を与えることを知っているので、俺の、というか大倉の弱い心臓を脅しにかかってきた。


「それで、ヨネちゃんは何しにここに来たの?変態の家には上がらないとか言っていなかったっけ?」


 俺の声に暴力少女だけでなく、ヨーキーの死神も変な顔で俺を見た。


「「ヨネちゃんって?」」


 二人の声がハモった。

 そう言えば、心の中で俺が勝手に決めたことだった。


 中学時代にもその米川稀色のことは「米川さん」と呼んでいたんだが、なんとなくレイという名を呼びたくなかった。

 何故かと問われると困るのだが、さっき自分の中で勝手に決めたことだ。

 この半透明の少女の呼び名。


「俺が何となくそう呼びたかったから。」

「えっ、なんとなくって……。」


 ヨネちゃんは明らかに戸惑っていた。

 だが、可愛い顔してチャチャまるが俺を見た。

 その瞳は、何かを俺に見ているようだ。


「まあ、お主がそう呼びたいならそれでいいんじゃないか。もともとレイには名前がなかった。3つの魂の複合体でもあるのだから、好きに呼べばいい。今は理由は聞かんよ。お主が何かを知ってるとしてもな。」


 意味深なこと言いやがって!

 そのチャチャまるの言葉に、ほら、この暴力少女の俺を見る目が変わっちまった。


「私のこと、何か知ってるの?もしかすると、以前私に凌辱の限りを…。」

「そんなわけあるかい!」


 この暴力少女は、とんでもないことを言いやがった。

 どこからそんな言葉が出てくるんだ!


「本当にお主はレイに嫌われてるんだな。」


 しみじみと言うんじゃない!


 ここまで言われたら、呼び名だけでも貫いてやる。


「という訳で、俺は君を「ヨネちゃん」と呼ぶ。チャチャまるに聞いたが、レイという名もチャチャまるがつけたんだろう?」

「さっきから殿下を気やすくチャチャま…る、って、えらく喜んでる!」


 チャチャまるという名も、ブリーダーの小野田さんがつけて、半年の間呼び続けた。

 さらに、トイレトレーニングに際し、よくできればワンコ用のおやつをもらっていたらしい。

 その結果、死神がどう思おうが、ワンコのチャチャまるは呼ばれると、反応する。

 今もちゃんとお座りをして、短い尻尾をブンブン降っている。


「そう言うことだよ、ヨネちゃん。チャチャまるは殿下なんて呼ばれるより、ちゃんと名前を呼んでもらったほうが嬉しいってことさ。」

「うーーーー。でも、それとこれとは違う!私はレイって名前が好きなの。ヨネちゃん、なんて……。何なの、この感覚…。でも、私はレイ!ヨネちゃんなんかじゃ……。」


 そこまで言うと、半透明の少女は空中に消えていった。


「どうもその名前は、レイの心を揺さぶっておるようだな。まあ、好きにしてくれ。それより、この部屋を片付けて、私を散歩に連れて行け。」


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