その11 事故、そして
第1話、この回にて終了です。
引き続き、主人公、死神ヨーキー、そして死神助手ヨネちゃん(レイ)の3人?の仕事が書かれていくことになります。
次話以降も、よろしくお願いします。
また寝不足になってしまった。
昨日借りたマニュアルを丁寧に揃え、鞄に入れる。
昨日食べっぱなしだったコンビニ弁当を熱く濃い目のコーヒーで流し込んだ。
これ、まさかとは思うんだけど。
とりあえずは取り込んだデーターをメディアに移行。
そのメディアを流しの下に隠したスポーツバッグに放り込んだ。
鞄を持ちアパートを出る。
鍵はしっかりと掛け、小走りに会社に向かうための歩道橋、そうあの死神コンビにあった場所を駆け抜けた。
そう、監視されていた。
それは後から知った。
この時にまさか既に対象にされているとは思わなかった。
だが、あのマニュアルの謎を知るべきではなかったのだ。
そうすれば裏社会の一端に触れることなく、大貫綾さんと楽しいデートをして、恋人になって、結婚して……。
そんなごく普通の幸せを手に出来たのかもしれない。
だが、この時点では手遅れだった。
駅に向かう交差点。
赤信号で止まる。
心がはやる。
青信号になった瞬間、俺は横断歩道を駆け抜けようとした。
「危ない‼」
その絶叫のような警告が俺の耳に届くと同時に、身体に衝撃が走った。
俺の身体が宙に舞った。
「思ったより早かったな、清元雅弘。」
「あんたか。」
意識をなくしていた俺は瞼を開けた。
身体中に激痛が走りすぎて、痛みを伝える神経の接続が切れたらしい。
微かな意識が上空しか見えない光景に向かって視界にある二つの宙に浮くものに焦点を当てる。
「お主に張り付かせていたレイから連絡があってな。大急ぎで来た次第だ。」
「お前は実体だって威張ってなかったか?どうして宙にいる?」
「こんな時間に飼い犬が出て来れるわけないだろう?精神体だけこの場に来たんだ。だから犬の姿が歪んだりして大変なんだよ。」
「ああ、納得だわ。その姿、この前の犬にしてはやけに骨が見える。死神だもんな。そりゃあそうか。」
俺は宙空から俺を見下ろす二人に、皮肉な表情を向けようとした。
だが、身体はピクリとも動かない。
周囲ではかなりの人が騒いでるようだが、全く声が聞こえない。
だが、どうも偶然の事故ではないらしい。
「そうか、お嬢さんはずっと俺のそばにいたのか。道理であんたたちに会ったことが夢だと思うとこの頬が痛むわけだ。あんた、その度にその大鎌でこの傷口突いてたんだろう?」
下からはピンクの下着が丸見えだが、どうやら気づいていないようだ。
この状態から俺を救いたいのが二人から伝わってくる。
なんか癪だからこのまま死んだろうか。
「お前さん、本当にいいのか?我々に対する意地悪だけで死んでも。」
また人の心を読んでやがる。
だが、少女の方が何も動かないという事は下着が丸見えというのも気づかないという事か。
「まあ、そういうことだ。このレイは助手になってから10年近いが、こういう酷い状態には慣れないようでな。いつもは完全に死んだ後にその場に張り付いてる魂を刈り取るのが仕事だから仕方ないんだが。今回はお主に死なれるとちょっと都合が悪いので、こうやって連れてきている。というか、監視させたんだからお前さんが車にひき逃げに会う瞬間も、しっかりと見ておるわ。」
「轢き、逃げ?」
「そうじゃよ、お主を狙ってな。」
「笑えねえな、その冗談。」
「冗談でお主の死を演出なんかしない。」
「誰がこんな陰キャの命を狙うんだよ。まさか、大貫さんって、やばい奴がバックにいたのか?」
「それは知らんが…。で、どうする?今なら魂を別の身体に入れることが出来るが、この前説明した通り。」
「そう言うのって、死ぬ人みんなに聞いてたりする?」
「そんなことしてたら、死神全員過労死しちまうよ。お主の能力ゆえだ。と言ってもお主が死を望むなら、無理強いは出来ん。」
「分かってる。あんたたちのお陰で準備は出来ている。本音を言えば、大貫先輩とあの夜一緒の部屋に行ってDTだけは卒業したかったな。」
本音を言った時だった。
「この変態‼」
固まっていたはずの半透明の少女の足が俺の顔を思いっきり踏んづけた。
痛みはないが、顔が崩れた感覚がある。
この俺を見ている野次馬にこの少女は見えないんだろうけど、突然俺の顔が潰れたらビビるだろうな。
「ピンク色、ありがとうございます!」
そう少女に言い放つと、最初は何のことか分からなかったらしい。
急に顔を真っ赤にして、フワフワのスカートを抑えた。
「この……、変態、スケベ、強姦魔‼」
いや、強姦はしてませんが?
「レイ、この状態だ。下着が見られるのはしょうがないだろう。こいつの魂は強力だが、身体を損傷すると魂も死ぬぞ。」
「死んじゃえばいいのよ、こんな変態男‼」
「そうもいかんことは分かってんだろう、レイ。で、お主はどうする?」
「ああ、生きたい。まだ死にたくない。」
「では、魂の転移を行う。失敗しても文句は言うなよ。もし失敗すれば、それがお主の運命ってやつだ。」
「分かったから、早くやってくれ。なんかだんだんだるくなってきた。」
俺の言葉に急に死神が焦ったようだ。
ぶんむくれの半透明の少女も、その意味が解ってるらしい。
今度はその持っているディスサイズを振りかぶり、俺の身体を薙いだ。
意識が切れる。
この回にて、第1話発端、終了です。
次話からも読んで頂けると嬉しいです。
もし、この作品を気に入っていただけましたら、ブックマークをお願いします。作者の書いていこうという気持ちを高めるのに、非常に効果的です。よろしくお願いします。
またいい点、悪い点を感じたところがあれば、是非是非感想をお願いします。
この作品が、少しでも皆様の心に残ることを、切に希望していおります。
よろしければ、次回も呼んでいただけると嬉しいです。




